ＧＷを利用して自分のＰＣをフルにリニューアルしようと自宅で悪戦苦闘する午後（ＯＳが入ってもその後の環境構築で、いい機会だからと環境改善をするとこんなことになる）。
その一本の電話はやってきました。相手は...引っ越し屋さんで営業職に従事する友人。
飛び出したのはびっくりする一言。
「なんでマックなんて面倒なもん仕事に使ってんだよ、この世からなくなればいいのに」
なんでそんな電話になったかといいますと。
引っ越し屋さんですから当然商売は引っ越し。とりわけ彼は事務所移転を得意とする営業で、もっぱら事務所移転の見積もりに出向きます。難易度が高い移転であれば現場にも顔を出すやり手の人。
事務所移転にはＰＣやサーバーの移設が必要なわけで、以前からわりと相談に乗ってたりしました。まぁあんまりすごいものになっちゃうと、もう専門業者しか運べなくなっちゃうんですが（スパコンとか何百とあるブレードサーバーの移設とか）。
で、先日・・・こじんまりした事務所の移転をやったそうで。デザイン事務所の移転ですから、比較的少人数だけど荷物に多い...まぁ、そんなパターンだろうなとは思ってましたが、やはりそうだったと。少ない人数で出来ますし、ＰＣの台数も少ないから面倒がない。彼の得意のパターンで、お安く見積もりってお客様にも喜ばれたと。
で、実際に実行された引っ越しで...まぁ事故なのかどうなのかわかりませんが、ＰＣが一台動かなくなってしまったと。落としたという報告もないし、外傷もない。輸送の際には梱包材でくるんで段ボールにいれて運んだとのことで、距離も都内から都内でまぁ近いは近い。
普通に聞いていて壊れる要因がありません。
まぁ、冷蔵庫にしろＴＶにしろＰＣにしろ、普段移動しないものを移動させるといきなり壊れたりしますから、そういったこともあるだろうと。
「で、いつものごとくだけど見に来てくれない？」
「あー...悪い、今自分のＰＣと格闘中でそんな余裕ないんだ」
というわけで電話で症状を聞くことに。
「電源を入れると、瞬間的に電源ランプはつくんだけど、すぐふぅって消えちゃうんだ」
...電源ユニットがいかれたのかな？電圧不足みたいな症状だし、新しい事務所の電源に問題はないか訪ねましたが、おかしいのはその一台だけとのこと。
「うーん...わからんけど、電源ユニットか基盤の故障じゃないか？修理に出したらどうだ。経費だろ？」
「ふむ...あんた修理出来ない？」
「その後のサポートが難しいから企業相手はな。特殊な事情があるか、アフターサポートなしなら考えるが。そもそも金取れない事情があるの知ってるだろうが。...どこのＰＣ？ 修理をぐずってるってことは面倒なところで...ＳＯＮＹ辺り？」
「いや...マックって書いてある。（しばらくお客さんと話してる雰囲気があってから）Ｇ4MACだって」
アップルかよ！
「...ちょっと古いのだと、修理が難しいかもなぁ。ＭＡＣは詳しくないんで...アップルがやってるアップルストアに行くか、ネットで中古ＭＡＣを修理してくれそうなところ探したらどうだ」
「（ごそごそと動く雰囲気。お客様のところから離れた様子）うーん...面倒だなぁ...ＸＸＸさんとこで出来ないかなぁ」
ＸＸＸさんとこは、電話とLAN配線は得意でもＰＣの修理なんてやってません。そもそもＰＣ販売してないです。代理店ですらありません。
「普通修理の受付はメーカーだよ、今時は。代理店通すと高いけど、その辺りをやってくれるから大企業は代理店通すなりなんなりするんだが...アップルの製品なんだからアップルで修理すればいいじゃないか。あるいはＧ4MACは今安くなってるから、中古で購入してあげるとか」
「.....................あんたで治せないの？ お客さんが商売上のデータがあるから代替え品はダメだって言うんだよ。ＰＣ詳しいんだし、なんとかさぁ」
「MACは専門外。まぁホビーで使う人は自分でパーツ入手して修理してるだろうけど、仕事用で使ってるもんなんだから正規に修理してもらえ。お客さんにも時間がかかって申し訳ないって言って。最悪、データを吸い出して外付けハードディスクに待避をしてくれる業者ぐらいは手配手伝うよ」
「うちの会社のパソコンで出来るかな？ やっぱりそっちでやってよ」
「ｗｉｎｄｏｗｓでか？ ...知識とツールと経験があればまぁ、不可能とはいわないが...別のMACでやってもらった方がいいだろうなぁ。俺はMACは今もってないし。そもそもＰＣに詳しいってもMACは別物だ。独自の文化だしＧ４の頃なら独自のパーツ満載だ。正直手に負えないね。車に詳しければＦ１やドラッグレースの車が直せるのか？ 無理だろ？ そういうこと」
まぁ、実際には中古なり分解したパーツなりがあればある程度は修理出来ますし、データのリカバリーもＨＤＤが損傷してなければ出来るのですが、相手は企業のＰＣ。申し訳ないけれどそのリスクは私には負えません。お断りさせてもらいました。例えは間違ってるんですが、どうにも押しつけようという態度が見え見えなので強い口調にするために、あえてMACをＦ１やドラッグカーに例えてみたり。
「...面倒だなぁ。なんで仕事にMACなんて使うんだよ」
面倒も何も、普通に修理に出せよ...とも思ったのですが、なにかそうも行かない事情があるようで。どうもお客様の声が少し聞こえていたのですが、今すぐなんとかしろ、早くなんとかしろ、仕事に差し支えがあるだろ、損害を弁償しろ！とキーキー背後で叫んでるのが聞こえまして。なるほど、修理に出してる間が長いとまずいのか。
「いつもはいろいろやってくれるじゃないか」
「ｗｉｎｄｏｗｓやＤＯＳならな。ＯＳ／２だってやってみせるが...MACは専門外ってことだ」
「なんでマックなんて面倒なもん仕事に使ってんだよ、この世からなくなればいいのに」
おいおい...お客さんに聞こえてたら激怒ものだぞ、それ。ＭＡＣ使ってる人は、愛着もひとしお、愛すら感じるぐらい好きなＰＣにしてる人多いんだから。
「デザイナーならフォトショップ含めてMACのが都合のいいソフトそろってるしな」
「フォトショップならうちにもあるよ（彼のはエレメンツだけど違いを説明しても理解出来ない）。ｗｉｎｄｏｗｓで仕事しろよってんだ」
「...実際には別物って感じだけどな。擁護するわけじゃないが、機能と使いやすさと...いろいろ考えたらアドビの製品はMACのが使い勝手いいのは事実だ」
実際、細かいところでMACのが使い勝手いいかな、とは思ってたので。連携させるツールにしても何にしても。あとＯＳの違いからくる安定度が（苦笑）
「アドビ？ アドビってアップルからいらねーって言われてたろ、確か。ニュースで見たぞ」
「...あれはｉｐｈｏｎｅにＦｌａｓｈが搭載されない理由だ」
「なんかアップルの偉い人の言葉とか言うのみたけど、アドビ自体いらないって話にしか見えなかった」
「...だいぶ違うんだが、まぁスマートフォンっていうか携帯電話の世界ではそうかもな」
「面倒だよ、本当に。両方なくなればすっくりするぜ。滅びろよマックとかアドビとか」
...いや、それだと君の好きなアイコラ画像も、ｙｏｕｔｕｂｅも危険なんだが。動画はＨＴＭＬ５で置き換えるにしても、開発環境としてアドビは結構欠かせない気が...アドビはｗｉｎｄｏｗｓ市場でも堂々とした企業だぞ。PDFだってアドビの商品からスタートしたんだって。なくなると私がとっても困る。開発環境的にも、いろいろと。
「もう全員ｗｉｎｄｏｗｓとオフィスだけ使ってろってんだ」
マイクロソフトが聞いたら喜びそうな話だな。純正大好きな彼らしい意見ではある。...がだいぶなんというか、いろいろとアレだなぁ。
「...まぁエクセルで絵を描く動画見せたのは私だけど、あれが一般的だと思うな、頼むから。あと、マイクロソフト純正しかしかない世界はごめん被るわ。まぁいいからお客さんには土下座でもなんでもして詫びいれて修理期間の見積もりとってこい」
お客さんに罵倒されまくってストレスが有頂天マックスになってしまったのか。途中からMACとアドビの不要を叫び始めたうえに声が大きかったので、無理矢理会話を中断して電話を切りました。
彼の立場であれば、みんなが使ってるＯＳがあればそれで十分で、仕事で使うならそういうの使えよ、ということなんでしょう。実際先々月まではｉｐｏｄは知っててもMACの存在すらしらなかったぐらいですし。アドビのツールに何があるかも、ほとんど知らないという現実。奥様が買ったタブレット（奥様は...隠れ腐女子です）についてきたフォトショップエレメンツを見て、すげぇすげぇと騒いでいたぐらい。ＰＣについての知識はもともとかなり低いんですが...それにしても。
ホビーで使うものと仕事で使うものでいえば、前者にはMACを、後者にはｗｉｎｄｏｗｓのＰＣを他人には勧めますが、別に仕事にMACを使っちゃいけないってわけでもなく。実際、デザイナー系の人はほぼMACだった時代もあります（今でもかなり多い）。
ｉｎｔｅｌのＣＰＵを使うようになってから、私にとってもMACはずいぶん近い存在になり。ＯＳ Ｘが搭載されてからは、かなり使いやすくなってるのにびっくりしたり（私がかつて持っていたMACは...すごく古い時代のもので。LC630とか、Power Macintosh 6100とか。漢字TALK７はなかなか面白かった。モデムつないでパソコン通信の頃だなぁ）。
確かに修理等を考えると汎用パーツで構成されたＰＣはある程度楽だし融通が利きます。けれど、どの道具を選ぶかはお客さまの自由なわけで。それを否定するのはちょっと。煩いお客様の追求で切羽詰まってるんでじょうけれど。
いろいろ聞いてみた限りでは、どうも引っ越し前から調子悪かった本体っぽいので、引っ越しが原因といわれると微妙な気がしますが...ものすごく怒り狂ってるっぽいお客様にそれを言うのはちょっと難しかったかも。
同情はしますが、彼の認識不足・知識不足かつ「手近で問題解決をすまそう」とする思考が気に入らない面もあったので、今回は手助けしませんでした。まいどまいど無償で人のサポートをしまくってる訳ではないので。
知らない人にとっては、それは排除してもいい、なくなってもいいなんて言えちゃうもので。事業仕分けなんかも見てて思いましたが、何かを判断する時にある程度の知識は学んでおいて、それから対応しないと「それはいらないでしょう」なんて簡単に言えちゃう...言っちゃいけないことを平気で言ってしまえるので。
引っ越しの営業さんも、これからはある程度ＰＣの知識を身につけた方がいいと思いますけれど。講習会でもやろうかなぁ...ＰＣの基本知識や、運搬の注意点。ノートＰＣの加圧への意外な弱さとか、いろいろ。ちゃんとMAC系の知識もつけさせて。いざという時はどこに修理を依頼したらいいのかも。
そうでないと、引っ越し屋さんの責任でないことまで、全部引っ越しのせいにしちゃえるので。もとから壊れてても、引っ越しのせいで壊れた！と言ってしまえばそれまでですから...まぁ、外傷がない場合はサポートしませんってのが一般的みたいですけれどね（＾＾； 今回も外傷がないので、もしかしたら彼はサポート対象外としてしまうのかもしれませんが...
そうすると悪評につながっていくわけで。さっきの代理店の話ではないですが、引っ越し屋さんがＰＣ修理の代理店を兼ねても面白いかもしれません。自社の責任ではないけれど、お手伝いはします。修理代金はお客様負担ですが、手配はします...みたいな。そうすると、引っ越しを機会に捨てようと思っていたものも、修理して...引っ越し先に届けてもらおうなんて需要も出てくるかな、と。ゴミを減らす効果もありますし。
ＰＣだと難しい部分もあるんですが、家電ならあるいは。どっかすでにやってるか。後で調べてみよう...
過激な発言がたくさんありましたが、まぁ知らない人間の言動とはえてしてそんなもの。科学技術の研究者に「それなんの役に立つんですか」とか聞いちゃう人もいるわけで（基礎研究や何十年もかかる研究に即効性のある効果を求めるのはナンセンス。でも知らなきゃ平気で言えちゃう）。
もう少しMACに対する啓蒙活動をしないといけないかも。せっかくのアップルストアも知名度が低いともったいない。わずかな負担で手厚いサポートはアップルの強みだと思ってますし、なによりアップルストアは店員の質が高かった（最近はわからないですが銀座に出来た当時いった限りはかなりのものでした）ので、詳しくない人にこそ利用して欲しいお店。
まぁ、信者のように勧めまくってくる人達もいるので、そういう人達はちょっとご勘弁願うとして。もう少し普及してもいいんじゃないかな...なんて思ってます。
今年は無理なので、来年か再来年あたりｉＭＡＣをひとつ購入してみようかな。いろいろ人に語るのにも、まず持ってないといけないし。
しかし、普通にちょっとものを知ってる人が聞いたらびっくりするような話ですけれど...案外、世の中ってこんな程度の話で成り立ってるのかもしれませんね。
※実話を元にしたフィクションということにしておきます。あらゆる引っ越し屋さんや、そこに従事する営業職の方を卑下するものではありません。特定企業、あるいはそこで引っ越しをしたお客様に対する誹謗・中傷ではないことを明記しておきます。限りなく実話っぽい何かということで。まぁでも、実際に電話されて頭痛を覚えた張本人が書いてるので、めでたしに限りなく近い何かというか、そんな感じで。