INTELのGPUは言うほど貧弱だったろうか(3)...VISTA、そしてブルーレイ

 前回の続きになりますが、INTELの内蔵GPUが大きく変ったのは915G世代から。

 この915Gというチップセット、実は中身も相当世代が変ったもので...前世代の865から比べると一皮向けたすごいやつでした。

 内蔵GPU無しの915Pですら「今でも通用する」チップセットなんじゃないかな、と私は思ってます。

 大きな特徴はDDR/DDR2対応。そしてPCI Expressへの対応。この二つあればこそ(やや対応メモリが狭いとはいえ)、現在でもペンティアム4と共に使っている人がいて、修理依頼が来てもどうにかなるという。(945チップセットの存在もありますが、割愛)。過度期ならではのさまざまな部分での対応の広さが魅力でした。

 その915チップセットに、GMA900という名前で「INTEL初のGPU」が搭載されました。

 それが915Gチップセット。
 IGTと言われていたINTELの内蔵GPUが一気に進化し、今日GMAと呼ばれるモノに変化した記念すべき製品でした。
 私も個人的にいじりまくった製品で、その性能に「えっ!?INTEL製だよなこれ!?」と思った記憶があります。そのぐらい865Gとは性能が違っていました。


 なにせ865Gから比べれば雲泥の差。当時「Geforce2MX程度の能力」と言われて登場して来ましたが、まぁ、その宣伝に比べればちょっとばかり性能は足りませんでしたが(実際はだいぶ足りない)...機能としては一通りのものを積んで来ていました。まずそれが驚きで。

 DirectXにまともに対応しよう...とINTELが動いたことがまずびっくり。今ではあまり聞きませんが、当時はハードウェアT&Lに対応してるかどうかとか、細かい部分で機能が「ある/ない」というのが重要だったんですが...最低限必要な機能は搭載してきていました。

 Wikiにもありましたが、始めてGPUと呼べるものになったのが、このGMA900だったという。


 実際に当時私が使ってみた感想は「最近流行ってるラグナロクオンライン...エフェクトがバグるけど遊べる」という実に俗っぽいもの。ですが、これがまた重要で。つまり、今後のメーカー製PCはその程度の3D能力を有してくれる...と期待出来たわけですから。

 この数年言われる「ライトなネットゲームなら動く」という評価の礎はここ。このチップセットだと思います。私自身かなり愛用し、かつ他人にも勧めています。なんでかって...DDRでペンティアム4を運用するには、これかVIAのチップセットしかなかったから(笑)

 まだDDR2メモリが高かったんですよ、この当時...今では信じてもらえないんですが...

 もっとも、GMA900をちゃんと使いたいならDDR2の方がよかったんですけれどね(^^;

 また、この頃になると動画再生支援についても業界全体が特に変化していなかった(わけではないんですが、OSレベルでもアプリケーションレベルでもハードレベルでも大きく動いてはいないと思います)ので、GMA900はDVDの再生やPC内部の動画再生においても十分な性能を発揮していたかと思います。

 確か2画面同時再生とかやってましたしね、デモで。...ペンティアム4のパワーならCPUだけでもある程度やってしまいそうですけれど(笑)

 HDDが大容量化、低価格化していくなかでパソコンで動画を見るというのがごくごく当たり前になっていきました。
 忘れられがちですが、INTELのGPUは810からいわゆる動画再生支援と呼ばれる機能には対応していました。
 ただこの動画再生支援機能というものが非常に曖昧な表現で。動画再生のどの部分をGPUが補ってくれるのか...という定義が非常にあいまいだったかな、と。
 この時代最低でもフレーム間予測と呼ばれる機能がついてれば「動画再生支援機能つき」と言えちゃってたので...そういう意味では搭載したのは810からかなーと。
 で、前回の記事のタイトルになっていた動画再生への要求。これはこのGMA900世代で時代にマッチした性能にはなっていたかと思います。

 実際、DxVA対応ハードというカテゴリーでいうなら初代の810から対応してるわけですから。対応してるレベルであるならば...

 で、話を3Dに戻すと915GのGMA900は実際にDirectX9に対応していたわけで、性能はやや低いながらもこいつは...と思える商品でした。時に2004年。ようやく市場が求めるものに近づいて行きます。とはいえ...外部GPUはGeforceなら6XXXの時代。性能差は開くばかり。

 ゲームで言うと前の記事でもちょっと触れましたが、日本ではリネージュ2が話題になってました。


 思い返せば...なぜかこの頃から、

 外部搭載型の廉価版ぐらいの性能は内蔵GPUに欲しい!

 ...という声が強まって行きます。下手すると「そのぐらいは搭載して当然」ぐらいの勢いで。

 
 その要因は...nvidiaが売り出したnforceや、進化を続けたRADEON IGPだったかな、とも思うのですが。INTELのCPUとこれらチップセットを組み合わせるだけで、915なんか目じゃないぜ!という性能になったわけですから(実際性能差は結構あったかと)。しかも安価。(サウスチップに問題あるの多かった気もしますが、今回は割愛)


 でもメーカーは安くてもサポートの問題等(あるいは大量購入による割引もあって)INTELのチップセットを中心にラインナップを構成します。それは後継の945Gで決定的に。
 ここで今言われる「INTELの内蔵GPUは...」とか「重いゲームをやらなければ」という声が決定的になっていったかな、と。声自体は865Gの時からあったんですが...
 また、この頃AMD向きにはnforce6100の登場があり(後にINTEL用も出ると期待されれば)ますます「性能が」ということに。この当時はまだnvidiaとAMDは蜜月とは言わないまでもナイスなパートナーでした。

 でも915Gは「お、これからINTELは変るのかな」と思わせる製品で。

 当時の記事がWEBに見つかりました

 内容を読めばわかりますが、本当に野心的な...というか「INTELらしくない」機能の増強ぶり。

 大画面も対応。デュアルディスプレイも対応。3Dゲーム(まだちょっと以上に性能が足りないまでも)へも対応開始。と、内蔵GPUとしては破格の進歩ぶり。よほど弱点が我慢できなかったのか、段階的な進歩ではなく一足飛びの進歩をしてみせました。

 まぁ、今から見るとかなりしょぼいんですけれど、当時(INTELが出したGPUとしては)びっくりするほどの進歩をしていたと思います。 

 

 その後、INTELはGMAのバージョンアップを繰り返します。
 2005年ごろ登場した945Gは実際「必要にして十分」を地で行くもので、915Gから比べればそれなりの性能アップをしていました。メモリはDDRを切り捨ててDDR2のみに。

 ...実はこの頃水面下でいろいろなものが動いていた時期。

 そう、後に発売されるWindowsVISTA(当時はまだコードネームLonghorn)が水面下で動いている時期。

 後に正式に発売されたWindowsVISTAはグラフィックに対して厳しい要件を持つOS(ぶっちゃけ内蔵GPUだときびしいレベル)でしたが、この945Gは対応チップセットとして名前があがっていました(多分に政治的な臭いのする話が絡みますが、結果として対応チップセットだったのは間違いないかと)。
 

 915GでなぜGMAに一足飛びに進歩したのか。年代、時期を考えると「OSの求める性能」を保持したかったからではないかと。INTELは「必要にして十分」程度の能力をGPUに持たせています。ただ、そのOSが求める必要にして十分のラインが大きく跳ね上がるのがわかっていたため、対処していたのではいなかと。私はそう想像しています。

 たぶんLonghornの事前情報からだいたいこのぐらいだろう...という性能は割り出していたかと。

 OSの発売時には対応ハードがある程度そろっていないととても困ることになります。ましてかなりのPCに搭載されている内蔵GPUは動かないと困る。逆にINTELやAMDなどは自社の商品が新OSで初期から対応してるかしていないかは大きなビジネスチャンスの違いになるわけで。

 事前情報は飛び交っていたはずなんですが...

 ただ、思っていたよりその要求は高いもので、915GのGMA900では結局足りなくなった。...あるいは最初の予定よりGMA900の性能が伸びなかったか。

 結局、945Gの登場により、DDR2専用となったメモリ帯域とGMA950が搭載されることで性能が底上げされます。

 この945Gの性能は当時すでに「軽いゲームなら」と言われるまでになっていたかと。ただ、それでもVISTA登場直前にはごたごたしていて...下手すればこれでも「VISTAだと性能たんない!」という事態になりかねなかった可能性が。

 おそらく945GはWindowsVISTAが具体的に見えるものになってきた(あるいは必要とする性能が想定出来るか)ため

、INTELとして「この程度の性能があれば」と思って945Gを投入したんだろうな...と。

 そのはずなんですが、予想以上にVISTAでの性能が必要になり...でもVISTA対応として出荷しちゃってるんだし今更...とかいろいろとあって...なんとか必要要件に入れこんだ商品だったんじゃないかと思ってたりします。当時のゴタゴタ加減を見ると、特に。

(ただ、Windows7でもAeroが有効になるということは、言うほど悪いもんではないかな、と。ちょっと遅いかもしれませんが...当時マイクロソフトがどのぐらいの性能を想定してVISTAを作ったのか、ちょっと調べてみたくなる部分です)

 下手すると915Gでいけるかなー・・・だめかなー。じゃあ945Gで大丈夫だろう...まだ足りないのか!?みたいな流れになってたんじゃないかな、とも思うのですが、当時の開発者達の言葉とか調べるとその辺り結構微妙。ちょっと深読みしすぎなのかもしれません(笑)

  でもそんな想像してると結構面白い流れなんですよね、この辺りのOSとハードの関係と開発って。

 この945Gチップセット、実は相当に長生きなチップセットです。のちにその低価格性から一気にブレイクしたネットブックですが、そのネットブックの初期のチップセットがこの945Gの系譜。

 ネットブックの普及期に「GMA950は動画再生支援に対応していない」という言葉を目にしたんですが、ブルーレイ等の再生支援には確かに対応してないけどごくごく普通の機能は積んでます(苦笑)と私は周りに答えてました。DVDの再生支援ぐらいなら問題なしよ、と。

 レベルの差はあれど、一応必要にして十分な機能は相変わらず搭載してたかなと。ただ、必要というのがどのレベルで見るかで評価は変るんですけれど。

 少し時代が飛びますが、このブルーレイへの対応がやや遅れたことで、さらに「動画にも弱い」というイメージがつきまとってしまいます。
 時代をDVDとブルーレイに分ければ、DVD時代にはなんとか対応してたんだけど(CPUパワーもありましたしね)、ブルーレイ時代はやや遅めの対応になったかな...というのが個人の感想。ただ、市場は待ってくれない。

 ブルーレイは宣伝ほどには普及早くなかったので、INTELの対応は決して遅くなかったかな、とは思うんですが...ただ、INTEL(あるいはAMD)が内蔵GPUで対応するのとしないのとではブルーレイの普及スピードも違うよ!という話になるとこれはもう卵か先か鶏が先なのか。
 

 まぁ、DVDと比べると最新鋭の高速CPUでも無い限りはかなりCPUパワーを食うのがブルーレイの再生だったので、この辺りは微妙な感じもしますけれど...再生支援なしでは成り立たない、それがブルーレイかな...と。

 実際の話。PCではまだ普及してるとは言いがたいと思ってます。ドライブが5000-7000円で書き込み出来るドライブが普及したらまた話が違うのですが...まぁ、それはもう少し先の話でしょう。今は大体その倍ぐらい(ソフトがついてるとはいえ)してますし。DVDに比べると普及には時間がかかりそうです。

 とはいえ。PCメーカーとしては付加価値をつけてPCの値段をある程度維持しなければならず。高級機にはブルーレイ搭載...というう流れが少しずつ出始めます。

 そしてこれは日本の特殊事情もあるんですが、ブルーレイレコーダーが結構急速に立ち上がっていました。そうなると、海外よりも早く需要が出てきます。他社との違いを打ち出すのにも結構いい感じで。

 そうして市場の動画への要望が「ブルーレイの再生」へうつると...後は言わずもがな。

 ただ、最初にも書きましたが「その時点では十分」なものを投入しているのがINTELだと思うと、ちょっとかわいそうな気もします。また、全世界で一気に需要が出てきたのならともかく、あの時点では日本ぐらいでしたからね...盛り上がり見せてたの。米国とかはその後だったし。

 また、コストや熱を考えるとチップセットにそれだけの機能をもたせるのも酷な話。「安くて早くて多機能で」というのはなかなか難しいものです。

 GMA X4500以降(チップセットとしてはG45以降)で末尾にMHDとついているGPUであればブルーレイにも対応しています。これはおととしの製品なんで、最近のブルーレイの盛り上がりを見るとちょうどいい頃に間に合ってるかな、とは思うんですが...話題はいつも普及する前に盛り上がるものなので、仕方ないのかもしれません。

 まして、マーケティングの関係でいつも廉価版や普及価格帯のものにはこの手の機能が搭載されないので、なかなか評価されずらいんじゃないかな...と。

 安価に...と言われる製品にはコスト削減のために余分な機能は搭載しないもの。やや高めの製品には搭載するとして...メーカーはぎりぎりのコストの中で部品調達をしますから、どうしても安価なチップセット等を優先して導入する。


 INTELは「安価な製品ではその時のWindowsが普通に使える」レベルの製品を投入してるので、それなりに悪くないものを投入してるとは思いますが、半年か1年後になると毎度「ちょっと足りない」という状態になるのがお約束として確立してますね(^^;

 市場が求める「このぐらいは欲しい」という性能。そして「他社はこのぐらいやってるのに」という視線。この2つが加味されて、INTELのGPUは...とさらに言われるというおもしろい状態。

 そして、 

 

外部搭載型の廉価版ぐらいの性能は内蔵GPUに欲しい

 

 というさっきも出てきた欲求がこのVISTA以降さらに強まって続いて行くことになります。これは次の記事で書いている、無邪気な願望のひとつ。

 VISTA自体相当派手でカラフルな外見を持つOSです。アイコン、画面、AEROの動作。普通に使ってれば「3Dゲームも動くだろう」と思わせるもの。

 でも、ゲームはOSが求める昨日以上に高い性能を求めています。まして、VISTAの発売後ATiを買収していたAMDは690Gチップセットなどで内蔵GPUの性能を高めてきます。トータル性能としてCPUだけでなくチップセットまで含めたソリューションで勝負してきたわけです。

 このAMDの内蔵GPU、INTELと比べると...正直かなり上位の性能を持っています。とはいえ、内蔵GPUですから限界はあるのですが...早い段階で性能アップを繰り返し、内蔵GPUでブルーレイへの対応等もそれなりに早く、結構野心的な商品を出し続けています。

 INTELはどうもこの辺り保守的というか、やや遅めに行く傾向があるので(どうもソフト開発にも難儀な部分があるようで、965Gのハードから遅れること数年で約束していたドライバーが登場したりしてますし)、ますます「INTELの内蔵GPUは...」と言われる要因に。 

 Core2Duoの時代が訪れ、ブルーレイの時代が来て。

 ネットブックが登場し。
 このネットブックで、INTELのGPUの性能は貧弱だ...という現在の評判が決定的となり。

 今回書いている記事の根幹にも関わる部分なんですが...

 なんで内蔵GPUにそれほどの性能が求められるのか。後付でノート用のGPU積めばいいんじゃないの?というけれど、そうはいかない事情。

 さまざまな「なぜ?」があります。

 そのうえで、なぜこんなにも内蔵GPUの性能への渇望がうまれるのか。

 それは次の記事「INTELのGPUは言うほど貧弱だったろうか(4)...求めたのはOS。待ち受けるのは無邪気な願望」で書こうと思います。

 

 ※今回のシリーズは私見の塊ですので、不快になった方をおられましたらすいません。

 わかりやすくするためにいろいろ省いてますし、結構一方的な見方をしてるのは確かなので...