AMDの新製品の実力は(3)...A10-6800Kは買いなのか?期待される中継ぎ製品の実力を見た

 先日AMDの勉強会でいただいたA10-6800Kとマザーボード。さっそく持ち帰りまして、検証を行いました。じっくりと1週間ほど常用した感想やベンチマークの数字、A10-5800Kとの差などをまとめた記事になります。
 いつも記事が長いと言われますので最初のちょっとだけ読んで帰りたい人のためにまず結論を書いてしまいます。

 これから買うなら「かなりアリ」な製品。i3やi5との天秤にかける価値が大いにあり。
 A10-5800Kからの買い換えなら意味がない。むしろ高速メモリを導入すべき。


 というのが私の結論です。
 ではなんでそう思ったかというのと私自身が抱いた考えを含めてつらつらと書いていきます。


1.A10-6800Kを改めて見つめる

 まずAPUの話からすべきでしょうが、簡単にいえば高性能なGPUを内蔵したCPUです。その中でも最高の性能を持ちOC向けにクロック変更が可能な設定になっているのがA10-6800Kになります。
 CPU部分の性能を列挙してみましょう。

CPUコア        ...4コア
動作クロック    ...4.1G(ターボモード時4.4G)
L2キャッシュ    ...2Mx2
TDP        ...100W
CPUコア        ...Piledriver
 
 では先代のA10-5800Kはどうだったかというと。

CPUコア        ...4コア
動作クロック    ...3.8G(ターボモード時4.2G)
L2キャッシュ    ...2Mx2
TDP        ...100W
CPUコア        ...Piledriver

 こんな感じ。ぶっちゃけ数字だけ見るとクロックが順当に上がっただけです。
 では他の部分ではどこが変わったかというと、対応メモリにDDR3-2133が正式に加わったこととGPU部分の強化が主になります。
 ソケット形状もFM2ソケットですので、BIOSだけ上げてやればマザーはそのままで対応出来るものがほとんど。順当な後継機種と言っていいでしょう。
 年中マザーのソケットを変更するINTELと違ってAMDは1つのソケット形状でねばる傾向がありますのでこれは素直に評価したい。FM1は本当にすいませんでしたとAMDの方も詫びたぐらいですしね。
(それいったらLGA1156なんかどーしたらいいんだよ状態ですが)

 では今度はGPU部分の性能について。

GPUコア   ...Radeon8670D
シェーダ    ...5.0世代
DirectX     ...11をサポート
テクスチャ  ...24機
コアクロック...844Mhz

 次にA10-5800Kは。


GPUコア    ...Radeon7660D
シェーダ     ...5.0世代
DirectX      ...11をサポート
テクスチャ  ...24機
コアクロック...800Mhz


 こんな感じ。A10-6800KはRadeonとしては番号が景気よく8xxx台になってますが、ぶっちゃけどっちもRadeon6xxx世代のGPUです。まぁマーケティング的に景気いい方がいいってことで目をつぶってください。
 GPUコアとしては基本は同じだと思っていいでしょう。コアクロックが上がっているのがうれしいところ。

 このように数字だけ並べるとA10-5800Kのマイナーチェンジの印象が強いですが性能的にも実際そのような感じです。そもそものA10-5800Kの性能があの値段では驚異的なので後継機種としてはこんな感じで十分とも思えます。
 円高時代の5800Kと円安時代の6800Kでは販売価格に差が出ますが、5800Kが今後終息していく中で順当に性能をあげているのはかなりの高評価をしています。
 私は安くて高性能というのが大好きなので(ハイエンドもいいですがミドルレンジのおいしい製品が大好き)このAPUという商品をものすごく評価しています。
 Haswell世代のiシリーズもいいんですが、あえて選ぶ価値が出てきたライバルとして今回評価を強くしました。


2.A10-6800K VS A10-5800K...高速メモリを搭載してのガチンコ対決

 今回は最初から本気で遊ぶつもりでDDR3-2133のメモリを用意しました。
 A10-5800Kは正式対応していませんが、そこは自作ならでは。マザーの設定で対応して同条件でのガチンコ対決をしてみました。

 検証機材は下記の通り。

マザー ...ASUS F2A85 M-PRO
MEM  ...ADATA XPG DDR3-2133
SSD   ...INTEL 320 120G
電源   ...Abee ZU-700W-KA
FAN   ...SCKBT-2000
OS   ...Windows7(64bit)

 電源だけはちょいと古いですが、まぁ検証用に余ってるのがこれしかなかったのでご勘弁を。一応80PLUSのブロンズですし今まで問題は出ていないので。
 CPUファンは安定のKABUTO2。この価格帯ではそこそこ冷えてそこそこ使い勝手のいいバリューな製品です。冷却性能も高価格帯のものには負けますがOCがっつりやるとかじゃなきゃ結構いけます。
 OSをWindows7にしたのはたぶん一番普及しつつありこれから使われるであろうOSだから。Windows8だと興味なくしちゃう人がいそうなのであえて7をいれてベンチをとりました。

 それではベンチマーク対決。

1.まずOS付属のツール(windows7)

A10-6800K
6800k2.jpg


A10-5800K
5800K.jpg

 互角!!
 まぁなんとなく納得。
 しかしこの数字がGPU増設なしというのが...メモリの数値は納得の高アベレージ。


2.3DMark

A10-6800K
6800K3DMARK.jpg
 
A10-5800K

5800K3DMARK.jpg

 5800Kの方は保存ファイルから引っ張ったのでちょっと白い(苦笑)
 一応最新のベンチマークですので、こいつを重視して見ましょう。
 少し前の世代のゲームであればIce Stormの数字が参考になるかと。
 DirectX9世代ならこの数字である程度の参考値に出来ます。6800Kや5800K...どちらも実際のベンチマーク中もこのテストはぬるぬるサクサク。数字に差が出ている通り6800Kの方がさすがに優勢。まぁDirectX9と10の混在テストですので、ちょっと古いゲームであればA10で十分に遊べそうな感じです。
 少し前のミドルレンジに負けてないですな...

 Cloud GateはDirectX10のテストですが、ここでも差が出ています。見ていて6800Kの方がややぬるっと動く感じ。今遊べるゲームの参考値にするならこのテスト。6000超えは立派なもの。RadeonのHD6570辺りを使うのと同等以上の体感を得られるというのは驚きかと。
 ミドルレンジのGPUまでカバーしているというのは嘘ではないようで。

 Fire StrikeはDirectX11のテストですが、そもそもクソ重いテストですんで内蔵GPUでは荷が重い。
 描画もカクついてますしかろうじてどんな動きがわかるかな...というところ。さすがにこのクラスになるとGPUの増設を検討しろってことでしょうか。
 ただ、そこまで重いゲームを遊ぶなら最初からA10-6800Kをターゲットにしていないでしょうしあくまで参考として見るべきかと。
 
 両者ガチンコでやってみましたが順当にスペック差が出ています。
 5800Kを高速メモリでドーピングしてなお届かない性能差が見えてきて面白い。
 BIOSがちょっと前の時はFirestrikeなんて1000超えなかったんですが...最適化が進んできたというところでしょうか。

 今回のテストでは5800Kは高速メモリでドーピングしていますので、本来のターゲットメモリであるDDR3-1600で動かすと5400程度まで落ち込みます。
 参考ですが、A10-5800Kを遅いメモリで動作させてみたデータが残っていました。

A10-5800K(DDR3-1333)
遅いメモリ.png
 あっはっはっは、性能差出すぎですな(笑)

 
 実際のところAPUを使う際には何よりもメモリが重要だということです。
 ケチって遅いメモリを積むと性能が何ランクも下がってしまう。

 数千円のコストでこれだけ差があるなら絶対に早いメモリで使用すべきです。

 今回はそうした部分も含めて5800Kにも高速メモリを適用してテストしています。
 最新ベンチマークでは差が出るものの高速メモリを使えば5800Kも結構肉薄出来るところまでこれるのがわかりました。

3.3DmarkVantage

A10-6800K
6800KVANTAGE.jpg

A10-5800K
5800KVANTAGE.jpg

 ちょっと都合で3Dmark11の5800K側を取り忘れてしまったのでVantageでご勘弁を。
 6800Kの数字が光っています。6600台が出ていればかなり上等。RadeonHD5770辺りと戦ってる感じの数字でしょうか。Geforceだとどうだろう。GTS450辺りなんだろうか?最近のグラボからはとんと離れてしまってうといんですが、HD6670辺りとくらべてやや届かないかぁぁぁぁぁぁぁという感じです。
 実売6000円のカードに今一歩届かなかった...のは残念ですが内蔵GPUでこんだけの数字をたたき出していれば立派過ぎます。
 5800Kも高速メモリを使えばこの通り。相当頑張ってます。一世代前のミドルレンジとガチで戦える性能を引き出せてますね。高速メモリの恩恵ありまくりです。
 低速メモリでベンチをとると目もあてられないことになります。
 ガチで3Dゲームを考えている人には勧められませんが、普段ゲームをしない人が「あ、ちょっと面白そうだし遊んでみようかな」と思った時にある程度の解像度ならサクサクと遊べそうな感じ。

4.PCmark7
A10-6800K
6800KPCMARK7.jpg

A10-5800K
5800KPCMARK7.jpg

 PCMark7の結果です。
 まぁなんというかそれほど差が出ていません。これはGPUでの対決ではなくCPU性能に寄ったテストでの対決だからで、コアが同じPiledriverなのでしょうがないかなーと。クロック差が多少出ているってところでしょうか。
 ざっとスコアを見た限り...

 i3より早くi5の上には叶わない。

 というポジションであるかなと。
 物理4コアであることを考えると少々辛いところですが、その分をGPUでカバーして余りある魅力がある!というのがAMDの言い分でしょうし私もそう思います。
 少なくともIvy世代のi3やi5下位とはやり合えるのは確か。
 ただ現行のHaswell世代のi5の上位機種相手ではCPU部分のスペック差は結構ある印象。
 Haswell世代でもi3ならまだいけますが、下位i5でもCPU部分では少々辛い。
 これはまぁCPU側にその力を振ったINTELとの設計思想の差と製造プロセスの差が露骨に出たところでしょうか。
 でもこれだけのスコアが出ていると実際普段使う分にはまったく不満が出ないだろうな...とも思います。
 むしろ製造プロセスの不利やCPUコアの刷新がままならないAMDがよくぞここまで練り上げたな...という印象も。買う側からしたら値段部分から入るのでそんなことは見ないんですけれど、まぁPCマニア系の人からしたら「頑張ったなー」という感想が聞けるかも。

4.テストを振り返って

 とりあえずメジャーな3D系テストなど使用しつつ遊んでみた訳ですが、感想しては...最初の結論通り。
 かなりいける製品に仕上がっていると思います。
 注意点としては価格がA10-5800Kの時よりあがっていることが難点。
 秋葉原で見てみましたが17000円という価格はちょっと辛い。(6/8日調べ)
 まぁマザーとのセット販売がさかんですので、-2000円ぐらいは割引きが期待出来るとしても15000円。これはちょいと高い。もう2000円下がってくれれば...と思うところ。
 対して5800Kが在庫処分の大特価となっていてマザーとのセットで9800円なんてのが飛び出していると今現在でのコストパフォーマンスではA10-5800Kを選択して高速メモリでブーストした方がトータルでは安くてお得になるでしょう。
 とはいえこれは出たばかりというのもあるかと。
 新製品投入や時間の経過でこの辺りはこなれると思います。
 マザーがそのまま前世代のものを使えるというのは大きくて、価格がこなれた安価な製品と最新APUで組めるというのは結構自作的に面白いなぁ...と。
 何より高速メモリの恩恵がここまでダイレクトに出る製品も珍しく。早いメモリでがっつり遊んでやるぜ!という人にもおすすめ。
 それと今回は意図的にOC(オーバークロック)を封印してのテストにしています。

 このAPUという製品。ターゲット的には「自作で遊ぶ人のセカンドPC」や「価格を抑えて性能をある程度保持したい人のメインPC」だと思うのです。だとすると後者の人の参考になって欲しいな...という思いがありまして。
 PCに金をかけるというのはまぁ結構大変なことで、いくら自作で好きなパーツが選べるといってもハイエンドだらけではとんでもない価格になります。
 となると限られた予算のリソースをどう割り振るか。そこの選択肢としてAPUはかなり面白いものになってきた。だからこそ実際に買った場合どんな感じになるのかを知りたいなと。

 それと...これは現在だけの事情かもしれませんが、円安が進んだおかげて超低価格の特売メモリが一掃されました。となるとショップは付加価値の高い高速メモリを特価にして客にアピールしてくるわけです。PC3-1600辺りのメモリが値頃感を出していますが、PC3-2133のメモリも最近は特売になりがち。
 私が購入したADATAのメモリは特売で6980になっていましたが誰も見向きもしていませんで。夜行って先着20名様の特売を楽々ゲットする始末。

 でも今回の記事を見ればわかるように早いメモリにもきちっとメリットがあり。そのメリットを生かし切るにはAPUが面白い。勉強会でAMDの人も言ってましたが早いメモリを使って欲しい!とアピールしたいところ。

 それとあえてWindows7でのベンチマークにして実際に購入した場合どんな感じなのか?というのをテストしたかったので今回の構成でテストしました。結果、かなり実用的だな...と実感。

 実はWindows8で使った方がその性能が発揮出来るんですが、それは最後の余談で。

 A10-6800Kという製品は順当に仕上がった「中継ぎ」です。実際のところ年末には大本命のAPUが計画され(遅れる可能性も出てきましたが)ており...それまでの間なんとしても戦うための武器としてAMDが送り出してきた商品です。
 A10-5800Kと比べて発熱も押さえられていますしドライバーレベルでの熟成が進んでいろいろな付加価値が出てきました。

 正直なところ「早いCPUがどれだけ必要だろうか」と考えた時にこのクラスの性能がある意味で「いい感じ」かなと。i5下位の性能にミドルなGPUというのは売れ筋のPCっぽいところです。
 それと物理4コアの力を見せつけてくれるのはなんと「Excel」だったというオチをひとつ。
 どの会社のオフィスにも自宅のPCにもOfficeは入ってるような時代で、メールにExcelの添付ファイルが...なんてのも日常の風景です。
 でもそれがOffice2003だとCPUのポテンシャルを殺しまくってくれます。設計が古いためマルチコアに対応しきれていないのです。
 Office2010以降のExcelはマルチコアへの最適化が進んだ結果...コア数が多いと普通に早くなります。
 複雑な関数を大量に組み込んだ大規模なエクセル。再計算でいらっとくる。そんなファイルがA10-6800Kで運用した時にさくさくと動作する。これはなんというかオフィスの革命にもなるかなーと。
 まぁ実際のところ同じファイルIvy世代のi7で実行されるとCPUの性能差を見せつけられたりするんですが、それでもかなり早く動作してくれました。
 こうした細かい差が職場での効率を落としているんだな...と考えるとXP+2003の環境はPCをデチューンして使っているようなものかなーと。旧世代とはいえCore2QuadのCPUにWindows7をいれてOffice2010を導入したらXp+2003の時よりもサクサクと使えるようになったという実例があったりもします(感想には個人差もあります)。
 これからPCを買い換える時。OSやOfficeも買い換えないといけない。PCのパーツもなんとか予算を抑えたい。そうした時にAPUは魅力的な製品として選択肢に入ってくるのではないでしょうか。
 予算があるなら高速なINTEL製品にRadeonやGeforceの組み合わせもいいでしょうが...私も含めてみんなそんなにお小遣い...ないよね?(苦笑)
 
余談

Windows8を導入してタブレットで遠隔操作した時APUの魅力が爆発する!?

 AMD勉強会でもやってましたが、Splashtopというソフトがありまして。PCの画面をタブレットから操れるようにしたものなんですが...これがまたAPUとバツグンに相性がいい。
 自宅内で使用していると遅延がほとんどなくて...iPadやNEXUS10が「Windows8タブレットになったようだ」なんて錯覚するほど。正直これだけ使えるならあえてWindows8タブレットを買わなくても自宅ならこれでいいかなと思ってしまいました。
 特にWindows8で使用すると...タッチ操作に本格的に対応したOSな訳で...これがなんというか「吸い付くように」動かせるんですよ。こればっかりはきっちり使ってみて始めてわかる魅力だと思います。
 リモートデスクトップ系アプリをiPadでいろいろ試した結果Splashtopに行き着いていたんですが...今回Widows8とAPUとセット使って始めて「ああ...私が欲しかったのはこれだったか...」と思った次第。
 もしこの製品を手に入れてタブレットをもっているなら...是非Windows8で試してみて欲しいところです。

 個人手にはiPadの方が使い勝手がよかったんですが、解像度の面もあってNEXUS10でやった時の感動もひとしお。これはマジで楽しかった...
 テストのためにWindows7にしていたPCですが、この記事を書いたらすぐにWindows8にしてしまいます(笑)
 実はテストも兼ねて1週間ほどメインPC代わりにしていたんですが、まったく不満なく使えました。
 どっかにオフィス借りて自前のPCもってけというならこのPCでいいやと思えるほど。
 最小構成に近いので騒音も少なく...快適な環境でした。これに2TのHDDかなんかつければ普段使いはばっちりかな。
 いろいろ言われるWindows8。APUとの相性がばっちりでもいまいち導入に踏み切れない。なら7でこれだけのパフォーマンスが出ますよ!というのが今回の記事の裏テーマ。
 そして8を使ってる人ならタブレットと合わせて使うことで「なんてわかりづらい魅力なんだ...これはやってみないとわからない」というAPUの魅力を再確認出来ると思います(^^)