AMDから夏前に発売となったA8-7670K。倍率ロックフリーのAPUでありながら、価格を控えめにしつつA10よりひとつしたのA8という面白い立ち位置の製品なんですが、こいつがどうにも気になってました。
気になって気になって仕方なかったので、AMDに無理を承知で貸与をお願いし、手持ちのA10-7800との性能差などについて検証してみたのが今回の記事となります。
※読む時間がない人向け
まず読む時間がない人向けに結論から先に。
A8-7670KはA10-7800に迫るミドルレンジ製品である。
(凌駕はしないが、肉薄している)
APUの特性・特徴・弱点を踏まえた上で購入し、その性能を楽しむ人には最良の選択肢となるだろう。
ただし最上級の性能にこだわる人にはお勧めしない。
上記が今回の記事の結論となります。
まずはベンチマークを見てみましょう。
どちらも同一環境(APUを除くメモリやマザーが全て同一)でとったベンチマークです。
(後で構成は記述します)
一世代前のフラグシップはA10-7850Kですが、倍率変更の出来ないモデルとはいえ、そのすぐ下のA10-7800に割と肉薄する数値をたたき出しています。
また、DDR3-2133メモリを普通に扱えるのもポイントで、たまに特価で出る割安なDDR3-2133メモリを有効活用出来るのも結構ポイントです。
(今回のベンチマークもDDR3-2133メモリを使用しています)
それではもうひとつのベンチマークとしてPCMark8の結果を。
A8の場合
A10の場合
こちらは同一環境ということもありほぼ同じような数値となりました。CPUの性能等考えると相当肉薄してるイメージです。
A8という1ランク下のはずのAPUが一世代前の上位機種に肉薄しているのは面白いところ。
2015/10/25日現在の話ですが。
A8-7670Kは税込14000円前後。
A10-7800は税込17000円前後。
A10-7870Kは税込み18000円前後
この差をどう見るかですが、個人的には結構面白いなと。
A8がもう1000円、2000円下がってくれればかなり買いなAPUのひとつだと思います。
むしろ上位機種との性能数値の差がちょうど3000円分ぐらいな気もするので、今でもいい立ち位置かも。
特にA10-7870Kだとちょっと高いなぁと思ってる人にはぐっとくるかもしれません。
性能もなかなかにいい感じですし。
まぁそれもそのはずで、型番としてはA8なんですが、中身はというと現行最上位A10-7870Kの弟分。
A10のちょい下ぐらいを狙って投入されたのがA8-7670Kなので、一世代前の上位機種と性能が匹敵しても別段おかしくないかなぁという感じです。
・新型コアGodavariというもの
兄弟機種の証なのかA10-7870KとA8-7670Kは同じGodavariという新型コアを搭載しています。
このGodavari、以前とどこがどう変わったか非常にわかりづらく、一世代前のKaveri(A10-7800はこの世代)との差はあまりないと言われていたりします。
Kaveri Refreshなんていう人もいますし、実際そんな感じです(笑)
A10-7870KのCPU部分はそのままに多少クロックを落とし、GPU部分も多少なのと性能低くしたもの。それがA8-7670Kだとイメージするとわかりやすいかと思います。
なので価格差を考えると3000円の余裕があればA10-7800の方が...と思ったり思わなかったりする人もいるかもしれません。
とはいえ。
今回は定格での数値を重視していますが、「K」型番は伊達ではなく、OCすることでA8-7670Kの価値はあがります。(多少コツがいりますが)
PCwacthの記事の見てみましょう。(本分をクリックで該当記事にジャンプします)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/review/20150908_719904.html
A10-7870KやA10-7850Kと比較するのは酷ですが、今回対抗馬のA10-7800あたりと比較するとA8-7670Kの魅力はOCで結構変わってきます。
そこそこ回るという情報もあるので、こうした遊びをする人にはいけるなぁという感想。ただ借り物のAPUを壊すわけにはいかないんで、今回は常用重視の数字で比較しています。
遊んでよし定格でもそこそこという立ち位置は結構面白いなと思いました。
あと地味に定格だと発熱少なかったです。温度書くほどのものではないですが、常用つけっぱなし運用だとA10-7800よりは多少なりと。
さてここでAMDからの資料を見つつA8-7670Kの素性を見てみましょう。
4コア+6GPUという構成は上位機種ゆずり。統合されているGPUも同様のR7。
一世代前のフラグシップA10-7800系の系譜に連なる製品なので当たり前といえば当たり前なんですが(^^;
違いはというとCPU部分はクロックの調整、GPU部分はクロックをあげつつSP数を多少削っている部分。
これにより性能の差別化を図っていると。
SP数はA10-7800が512個、A10-7670Kが384個と2/3ぐらいに減らされているのに、上記ベンチマークを見ると結構肉薄しているのは上昇したGPUクロックが効いているんでしょうね。
資料を見ると比較対象がi3となっています。
正確にはCore-i3 4160がターゲット機種のよう。
A10-7850KやA10-7870Kの時はi5をターゲット機種としていたので、割と順当かもしれないなぁと。
(価格的にもCore-i3 4160とA8-7670Kは拮抗しているし)
新しいi3としてSkylake世代の製品と比べると少し話が違って来ますが...
Haswell Refresh世代のi3とだといい感じの勝負になるが、Skylake世代のi3とではやや分が悪い。
とはいえ、Skylake世代はマザーボードの価格がやや高めなのとDDR4メモリを買う必要があったりするので価格を重視するとまた評価が変わってくる。
(特に既存環境のリプレースをリーズナブルにやりたい人には悩ましいところ)
Core-i3 4160との比較ではCPU性能では拮抗、GPUではばっちり勝てる。
他のモデルでもそういうポジションをAMDはずっと訴求しているわけだが、最近正しいアプローチだなぁと感じてます。
正直CPUパワーはある程度あれば不満がなかったりするし(実際CeleronのノートPCとかを使ってて不満ない人も多かったりする)。
それよりもGPUパワーがあれば動画再生を始め様々な場面で役に立つ。
(ちょっとした3Dゲームも出来るし)
なので、日常使う分にはAPUの性能は結構ばっちりだったりする。
PCmark8は冒頭でも数値を出したけど、正直Core-i3 4160との差はそれほどないし、A10-7800と比較しても大差ないと言ってもいい。
通常の使い方であればどれを買っても似たりよったりと言っていいだろう。
ただし、エンコード等を行うのであればちょっと事情が変わってくる。
国内有名エンコーダーなどはINTELに特化していると言ってしまってよく、正直AMDの製品ではパフォーマンスが出ない。
フリーのエンコーダー等を使うのであればそう差がなかったりするのだが、使用環境によっては考慮すべきだろうな...ここがAMDのCPU系列の弱いところ。
逆にエクセル等で複雑に入り組んだ計算式のお化けみたいなシートを作った場合は物理4コアが結構効いてきたりもする。
LibreofficeのcalcあたりもA8-7670Kの方がやや早い結果を出している。
OpenCLが効いているという話だが、そんなものは知識としてなくとも「あ、結構早くなるんだラッキー」ぐらいに覚えておくといいかも。
ベンチマークとかではなく私の主観なので信用するかどうかは読んだ人にお任せするが、自宅でエクセルばりばり使うぜーという人にはちょっとうれしいところ。
何十個ものシートやブックから数値を引っ張って自動計算とかやってる環境だと地味にこれが効いてくる。
最もこれは関数主体の話なのでVBAとかだと結果が変わってくるかも。
ベンチマークでは見えづらい部分の話として頭の片隅に入れておくといいかもしれない。
資料ではAdobe製品が早くなるのをうたってるので、持ってる人にはうれしいところだろう。
上記資料はゲーム用途での資料だが、正直「重いゲームには向いていない」。
カジュアルゲームを比較的低解像度で遊ぶ分にはしっかり遊べたりするので、そういう用途用のAPUだと思った方がいい...というのが下馬評で、実際そんな感じである。
(そのわりには結構しっかり動くけれど)。
特筆すべきはWindows10環境でのDirectX12への正式対応がうたわれていることと、フルHDぐらいの解像度であればそこそこゲームが遊べる程度の性能はあるという点。
特にWindows10への正式対応は大きいかな。安心して使えるし。
ドラクエ10ぐらいならこのA8で十分遊べると個人的には思う。
私個人は艦これメインなので、相当快適にプレイ出来た。
上記資料はWindows10発売前の資料だけれど、発売後に触っててもそこそこ安定していてそこそこパフォーマンスが出ているので安心して使えるなぁという感想を抱いている。
動画再生、ブラウザの高速化(Edgeを使用した場合)など恩恵は多々ありWindows8.1で使うぐらいなら10で使った方がいいと思う。
あと地味にリモートデスクトップが早い。標準のリモートデスクトップもそうだが、splashtop2なんかもGPUの機能を使ってるのかいい感じに早い。
ベンチマークではわからない部分でのAPUの良さとしてこのあたりはあげておきたい。
・動画再生支援「Fluid Motion」について
声を大きくして言いたいが、APU最大のメリットであると言っていいこの機能。当然のように対応してるし問題なく動作する。
私個人の環境でいえば、PowerDVDでもBluesky Frame Rate Converter(1.3.3)rでも問題なく動作しているのを確認した。
アニメのぬるぬる再生を楽しみたい人にはお手軽な製品のひとつと言っていい。
というか、フリーウェアで使えるライブラリなりSDKなり提供すればいいものを、やれないAMDのリソースの無さが辛いところだ。
現在新CPU(APU含む)の開発とRadeon新コアの開発、様々な製品の開発にリソースが取られまくりでただでさえ辛いソフトウェアリソースが逼迫してると風の噂に。なかなか難しいのかも。
でもWindowsとLINUX用にそうした環境を提供したら、またいろいろ可能性が出てくるかもしれないので今後に期待したい。
・OCについて
今回の記事ではOCについては触れていない。
後で記載しているがマザーボードでいろいろと問題にぶちあたりまくったせいで検証期間が思ったより取れなかったというのもあるし、遊んでたらきりがなくなってしまったからだ。
借りた個体を破損してはまずいので、あまり回せなかったというのもある。
というかAmazonの悪魔ではA10-6800Kをマザーごとぶち壊した前科があるため(しかも2枚)、OCは控え目にしようと思っている。
まさかマザーが耐えられずAPUを巻き沿いに昇天するとは...(汗)
・今回のレビューが長引いた最大の理由はマザーボード
今回レビューを掲載するにあたり、本当は9月の頭ぐらいでの掲載を考えていたのだけれど、思わぬトラブルによりかなりの期間苦しむことになった。
どうしてもA8-7670Kのパフォーマンスが出なかったのである。
なんというか、あまりにひどいスコアで、「馬鹿な...」という状態に。
当時の計測ではCPUのスコアは正常値を示しており「まさかA10-7850Kに続いてGPU部分の初期不良なのだろうか...」とものすごく悩むことに。
AMD広報さんにも問い合わせたのだが、原因がつかめず検証は難航。
(同じ環境でA10-7800を使用した場合の数値がこれなので、マザーを疑っていなかった)
9月中は公私共に多忙で、無理を言って貸出期間を延長してもらっていろいろな要因を探してみた。
手持ちの他のマザーで検証しても限りどうしてもパフォーマンスが出ないため、もしやとマザーボードのページで対応するAPUを確認したところ...
検証していたマザーが「非対応」なのがわかった。
今回メインで使用していたのが、以前AMD様よりいただいたA68HM-P33というマザーなんですが...これ、リビジョンアップモデルが出てまして、正式にはそっちから対応ということらしく。
正常に起動してふつーに動くんだけどパフォーマンスが全く出ないという有様で。
確かに以前からBIOSの作りこみでAMDのチップはパフォーマンスが結構左右されるなぁとは思っていたけれど、ここまでとは思わなかったのが実情。
そこでもう少し貸してください! と無理を言って、新規にマザーを調達することにした。
ちょうどSATAの数がそこそこあるM-ATXマザーが欲しかったというのもある。
このPCの最終慣性系は「艦これ」および「ファイルサーバー」と定めていたのとA10-7800に惚れこんだというのもあり、ふさわしいマザーが欲しかったのだ。
購入したのはこれ。
A88XM-PlusというASUSのマザーボードで、なかなか凝ったマザー。
SATAも8つとまずまず今回の用途に合う感じ。全部6.0G対応というのもなかなか。
ただし並列に並んだポートは意外に使いづらいので、この辺り好みが出るかも。
最新BIOSで販売されていたので、公式にA8-7670Kに対応してるがうれしかったり。
フラグシップに近い性能があり地力もなかなかに強めという印象のマザー。
デザインには賛否両論ありそうだけど...まぁ金のヒートシンクもなかなか格好良いということで...(苦笑)
無念なのがDP搭載でないこと。HDMIがあるから通常使用なら問題ないかもだけど、ちょっと惜しいとこはそこかな。
GPUをライトにOCしてくれるスイッチがあったり遊び心も満載。
このマザーを導入したところパフォーマンスがきっちり出るようになり、安定して動作するようになりました。
あまり世代差はあまりないなぁと思ってましたが、マザーの対応で問題が出るようだと地味にいろいろ改定されているのかも。
購入する時は手持ちのマザーが対応しているか確認してから購入するのが大事だなぁとしみじみ思ったり。
A0-7800はばっちり動いていただけに、見落としてました。
※それとAMD系チップセット全般にいえますが、SATAのパフォーマンスがAMD純正ドライバーだとあまりよくないです。
Windows標準ドライバーにすることをAmazonの悪魔ではおすすめします。
あと、今回は手持ちのDDR3-2133メモリ(A-DATA)を使用しましたが、やはり高速メモリでこそAPUは光るなぁと。
とはいえDDR3-1600でも3Dゲーム等への影響以外は体感であんまりなかったのを記しておきます。数値ほど体感で差は感じなかったというか。
まぁBattleFieldあたりを遊んでると高解像度にしない限りは結構サクサク動いてましたということで。
◎まとめ
実は今回のベンチマークを取るのに、どうしてもWindows10上で、ある程度安定したドライバーでやりたいというのがあったので、検証がぎりぎりまで遅くなってしまいました。
またプライベートでは母親が倒れるなどありAMD様には相当無理を言ってしまったことをお詫びします。ながらくAPUを貸していただいてありがとうございました。
冒頭に書いたようにA8-7670KはA10-7800と置き換えても遜色ないAPUだと思います。
価格的にもう少し下がれば魅力はぐっと増すのですが...
秋葉原辺りですとA10系列とマザーとのセット割が強く、お買い得感が強いのはA10です。
とはいえ九十九辺りがAMDのマザーボードとのセット割引とかをやる時があるので、それを活用すれば1000円から2000円程度の割引の恩恵にあずかることも。
そうなるとかなりお買い得なAPUだなぁというのが私の感想です。
ただ、マザーボードが対応していないと恩恵も何もないので、そういう場合は一世代前のA10-7800などが有力な選択肢となるでしょう。Windows10環境でどちらもしっかり力を見せてくれていますし。
これから買うWindowsはといえば10だし、ゲームとか遊ぶ時どんな感じなんだろうと思ってる人の参考になれば幸いです。
予想は冒頭のベンチマーク通りだったので、結構満足。
もし一式買いかえるという人ならDDR4メモリも4Gx2のセットで安いものなどが出回り始めたので、Skylakeのi5辺りをおすすめはするでしょう。
逆にDDR3-1600のメモリが余ってるなんて人には面白い製品ではないかと思っていたり。
特に動画再生を中心にサブマシンを欲しいな...なんて思ってる人には相当お勧め。
私のようにOCメモリが余ってるという特殊な人はおいといて。
後日DDR3-2400+A10-7850Kを同一環境にぶちこんでテストしてみたいと思うので、そうしたら追記か別記事をあげます。
ハイエンドPCなんてのは金さえ積めばある程度の性能がある意味誰でも手に入る世の中です。
事前情報なんてなくたって、その時の最高峰のパーツなんてのはすぐに店頭でだって知ることが出来る。
でもミドルレンジはそうはいかない。
限られた予算の中で、自分にとってのベストパフォーマンスを示してくれるパーツは何か。
予算というリソースをどううまく配分したら満足出来るか。
それこそ事前にがっちり情報を調べてから購入に臨みたくなるのがミドルレンジです。
数千円の差が後に致命ともいえる性能差になることもあります。
ドライバーアップデートで劇的に変わったり、最新環境に適用出来たりする比較的世代の新しい製品をいかに安く買うかとか。
あるいは旧世代でもコアは今の世代と変わってないしこのメーカーならきっと対応してくれるはず...!とか。
それがミドルレンジであり、一番面白く...そしてユーザー層の多い領域ではないかと思っています。
そこにAMDが送り込んだ刺客はどんなものだろうか。
そしてそれは一世代前の上位機種にどれほど迫れているのか。
今回の記事のコンセプトはそれでした。
結果は個人的には満足いくもので。
マザーを買い替えるなど出費はありましたが、いずれ買おうと思っていたマザーなので満足といえば満足。
気づけばデスクトップPCは3台ともAMDのCPUとなり。
分解整備中の4台目が稼働しないとINTELのCPUが搭載されているのはノートやサーバー、タブレットだけという状態に。
3台のうち2つがAPUというのがまた。
通常使用するシーンで、この程度の性能がこの価格で手に入るならと惚れ込んで。
A10-5800Kからずっと愛用しているAPUという製品。
いつもA10しか買わないんですが、借用したA8もなかなかのもの。
使える予算というリソースをどう配分するのか。
ミドルレンジの群雄割拠の製品群の中でどれを選んだらいいのか。
特にサブマシンを持つような人はサブマシンにAPUという選択肢はありだと強く思います。
というか私はメインもサブもAPUになっちゃってるので、どんだけ好きなんだよというのもありますが。
何かの参考になれば幸いです。