デビルマンが好きだ。それも、漫画版ではなくアニメ版のデビルマンが。
デビルマンというと、どうしても永井豪の漫画版デビルマンの方がファンが多い。
壮大なスケールで人間とデーモン、そして神との戦いを描く漫画版デビルマンはその展開、迫力、どれを取ってもさすがの一言で、根強いファンも多い。
けれど、私はどちらかといえばアニメ版デビルマンの方が好きだ。
漫画版では、不動明が飛鳥了に誘われてサバトに参加、そこでデーモン(悪魔)との合体を経て悪魔の力(アモンの力)を身につけて「デビルマン」となる。
戦い傷つき、あらゆるものを失いながら、ついには悪魔と神との決戦へと話は進んでいく。これはもう一度読んでもらった方が早い一大サーガになっていて、悲しくも迫力ある展開、そして救いの少ない話運びなどもうなんていうか、確かにすごい漫画だと思う。
一方アニメは「悪魔がヒーロー」という基本ベースと登場人物の名前は同じだが、同じ原典を使用した別物になっている。
アニメ版では最初からデビルマンはデビルマンと呼ばれていて、雪山で不動親子を殺害、不動明の姿を乗っ取ったデビルマンが戦っていくストーリーである。
漫画では、悪魔の力を得た人間。アニメでは人間の姿(と立場)を手に入れた悪魔。真逆である。
アモンがデビルマンとイコールであるなら、アモンが乗っ取られたのが漫画で、アモンが不動明を乗っ取ったのがアニメ版である。
冒頭にアニメ第一話のリンクを貼ったけれど、1話は脚本の辻さんの筆が冴え渡っていて、明快にしてわかりやすい展開、そして見ている視聴者が「ああデビルマンとはそうなんだな」と1話でわかる構成、展開になっている。
漫画版と違って、深いテーマとか残酷な展開とかを主軸に据えるのではなく。
デーモン族として人間界を混乱させなきゃいけないはずのデビルマンが、牧村美樹という一人の女を好きになってしまい、ただ一人の女を守るためにデーモン族と戦って行く。それが主軸になっている。
明快でわかりやすい。
1話の中で、
デビルマンの出自と目的(デーモン族の勇者として人間と敵対)→そのはずが結局一人の女に惚れちゃって人間と敵対していない→デーモン族が何してんだよと現れる→裏切った覚えはないけど戦うなら戦うぜ!
という流れるような展開があり、その中でも「必殺技」をきちんと全部盛り込んで、かつ人間の時に受けたダメージはそのまま引き継がれることや、巨大化は割と任意で大きさが変えられることなど小ネタもわかりやすく盛り込んである。
さすがだなぁと思うし、今見てても面白い。
単純であるというのは悪いことではなく、それだけわかりやすいし、理屈少なく楽しめるということだと思う。
そして、なんで牧村美樹に惚れたのかはデビルマン自身にもよくわかっていない。
本人はデーモン族を裏切っちゃいないと力説しているが、その後もどう見たって惚れた女のためだけに戦って行くのである。
主題歌を思い出して見ると、本当に本編とリンクしたOP、EDとなっていて、歌の良さもあって作品の魅力を一層押し上げてるなぁと思う。
「裏切り者の名を受けて全てを捨てて戦う男」
ようは牧村美樹のためだけにデーモン族を裏切り、全てを捨てた。
二番の歌詞では
「初めて知った人の愛。その優しさに目覚めた男」
となっていて、やっぱり美希への愛を歌っている。
ある意味では人のためではなく、一人の女のために戦うヒーローであり、単純であるがゆえにその純粋さがたまらない。
EDも同じで、
「人の世に夢がある。人の世に愛がある。その美しいものを守りたいだけ」
で、やっぱり美希がいる世界、美希がいる夢、それらを守りたいだけなのである。
そしてEDの2番では、
「もうこれで帰れない、さすらいの旅路だけ。この安らぎの心知った今では」
と歌っていて、これもやっぱり美希といる安らぎ、美希がいる安らぎを知ってしまってはもう戻れないという純粋でひたむきさがたまらなく胸を打つ。
毎週デーモン族と戦ってはいるが、その理由も裏切り者のデビルマンを倒すために刺客を送ってくるから迎撃してる訳であり、デーモン族が「美希とデビルマン、そして美希の家族は保全する。好きに生きるがいい」と宣言してほっといてくれれば、たぶんデビルマンはあそこまで戦わないだろう。美希以外ではせいぜい美希の家族ぐらいしか守る対象になっていないみたいだし。
漫画版では守れない牧村美樹という存在を、アニメ版ではずっと守り続けているのである。
何もかも守れず、何もかも失っていく人間不動明を描く漫画版。
ただひたすらに牧村美樹を守ろうとするデビルマン(アモン)を描くアニメ版。
ヒーローとしては圧倒的にアニメ版だなぁと思っている。
アニメ版も永井豪のテイストをちりばめているので、勧善懲悪ともいいずらい毒の混じった話も多いし、後味がいいかというとそうでもない。その辺りも含めてアニメ版は漫画版のテイストもある程度盛り込んでいると思う。
インタビューで脚本の辻さんが言っていたが(wikiにも書かれているが)、そもそもの根底にあるのが「中国大陸で脱走した日本兵が、娘を守って日本軍をやっつける話」らしく、そう言われてみるとそうなのかもなぁと。
敵は同じ日本兵。脱走した兵士がただ一人の惚れた娘(その場合は中国の娘)を守って日本軍と戦う。脱走した日本兵を日本軍は許さないからひたすら追っ手がかかる。
脱走兵の末路は哀れであると辻さんは言ってるので、アニメがもし長期になっていたら、あるいは辻さんが完結脚本を書いていたら、漫画版と同じくダークで救いのない展開になっていたのかもしれない。
ただ、それらの結末は書かれず、アニメ版のデビルマンは牧村美樹を守り続けながら「今日もどこかで」戦い続けていることになっている。
終わりのない戦いの中、守り切れたのか。その結末が描かれることはないと思うけれど。
ハッピーエンドで終わらないかもしれないけれど、愛だけは貫いて終わるんだろうなと思っている。
子供向けの枠の中で、きちんと一話完結のスタイルで最後まで放送されたデビルマン。
今公式チャンネルで改めて第一話を見ても。
面白いアニメだと思うし、胸を張っていえる。
アニメ版デビルマンが好きだ。大好きだと。
子供の頃に見たヒーローは、今もまだやっぱりヒーローで。戦う理由も小難しい理由を必要とせず。ただ好きになった女の子を守りたいだけ。
異能の力も何もかもがそのためだけに。
悪魔の力を身につけた、正義のヒーローデビルマン。
漫画版を原作とした劇場版やらOVAなりあったけれど。
TOEIにはこのアニメ版をきちんとしたモチーフを維持したままで、また作って欲しいなと思う。
難しいことはなく。
ただ一人の女のために戦う孤独なヒーローとして。
それまでは公式配信やBD-BOX、あるいは再放送で。アニメのデビルマンを楽しみ続けたいと思う。
たぶん歳に関係なく。親子で見ても面白いモチーフだし、ごてごてしたものを必要としないヒーローだと思うから。
最後に昨年ツイッターでつぶやいたデビルマンのツイートを貼っておきます。
この先もずっと、ツイッターやこのブログ、飲み屋でのだべりでも。
デビルマンが好きだと言い続けるんだろうな。
やっぱり神曲だわ。物語が全て曲に入ってるし、演奏も素晴らしい。
-- みやび(Amazonの悪魔よろしく) (@hmiyabi) 2015年8月31日
原作ファンが多いが俺はあえてアニメのデビルマンを押す。
不動明の心が生き残ったのが原作なら、アニメは明らかにアモンの心が主になってる大きな違いがあるが、それがまたいい。
辻さんの脚本が冴える。
-- みやび(Amazonの悪魔よろしく) (@hmiyabi) 2015年8月31日
ヒーローではあるが人類のヒーローではない。
ただただ一人の女のためだけに、故郷も仲間も捨てた男。
しびれるじゃあないか。
原作は家族を守れず女も守れず仲間を求めてもまだ足りずアーマゲドンに進むしかなかったデビルマンが、アニメでは別の道へと進む。
同じ設定をベースにした作品なのにどちらも面白い。
-- みやび(Amazonの悪魔よろしく) (@hmiyabi) 2015年8月31日
原作ではアモンに引きずられて凶暴になっていくのに対してアニメでは不動明の記憶と美樹との触れ合いからむしろ理性を身につけていく。
きちんと描いたらかなりのダークヒーローだよなあアニメのデビルマン
初めて知った人の愛
-- みやび(Amazonの悪魔よろしく) (@hmiyabi) 2015年8月31日
その優しさに目覚めた男
が二番だが、ここから1番に繋ぐと
裏切り者の名をうけて
全てを捨てて戦う男
となり
悪魔の力身につけた
正義のヒーロー
と考えると、
一人の女のため、不動明の記憶と思いをベースにアモンの力を身につけた誰でもないデビルマンなんだよな
だから
-- みやび(Amazonの悪魔よろしく) (@hmiyabi) 2015年8月31日
あれは誰だ、誰だだし、エンディング曲で
誰も知らない知られちゃいけない
なんだよな。
惚れた女のため、あくまでも不動明として生きるたった一人のための正義のヒーロー。
悪魔でも人でもなくなった、デビルマン。
かっこよすぎる