滅びを待つだけの会社...解散へのカウントダウン

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 古いシステムを仮想環境で!というのはこのところのキーワード。今度の転職先でもすでにいくつかのシステムをVM上に構築済みだそうで。今後のバージョンアップもVM上で行うことで、ハードウェアの減少と古いシステムの延命の両建てで仮想化を活用しているみたいです。早く動作してるところが見てみたい。

 既存の延命だけでなく、仮想環境と連携したクラスターサーバーなんてものもあるわけで。活用いろいろ。最新ソフトを、一台のハード上に仮想化して複数サーバーを用意して運用する。これもトレンドのひとつ。

 でも、やっぱり身近にあるのは「死にかけたシステムの延命としての仮想環境」だったりします。

 ...けれど。

 ブログでも何度か書きましたが、たとえばwindowsNT4.0を延命するとして、障害になるのは「特殊なハードやドングルを使っている場合」のパターンが一番きつい。

 たとえ話ならともかく、現実としてその状態にぶち当たると、予想以上の困難となります。

 ただ、それでも予算があれば新規リニューアル等も出来ますし、あるいは開発会社と連携して低予算でASPサービスなどに移行出来るかもしれません。もしかしたら、新しいOSへの移植だって出来るかもしれない。

 しかし。

 特殊ハードを活用していて。そして、もともとの開発を行っていた会社はすでに精算されなくなっている

 そして、昨年の赤字で今年はもはや投資なんて出来ない。銀行は「社長の自宅を担保にいれるなら」という条件でしか貸してくれない。けれど、その自宅もすでに抵当に入っていて。

 まさに八方ふさがり。そんな会社もあります。

 業務が縮小され、会社の規模も一気に縮小。人数は大幅に減り、みんな連日サービス残業。ブラック企業もかくや...そんな状態で、ひたすらあえぎつつ、それでも死にたくない、まだなんとかしたい、そう思って踏ん張っている会社もあります。

 そんな会社のひとつに、友人がアルバイトで入りました。小さな製造業の会社。転職までのつなぎの短期アルバイトだしな...そんなつもりで。けれど、入った会社は...なぜか老人ばかり。

 コンピューターの担当なんてもちろんいない。たまたま短期アルバイトで入ったばかりの私の友人が、ちょっとパソコンに詳しい(といっても、自作を少しやる程度でプログラムなんてかけらもわからない)からと、いろいろ見てくれと言われ、まぁそれなら...と社内のパソコン等の見直しをして。愕然としてしまいます。

 OSのバージョンはおろかオフィスのバージョンもそろってない。パソコンを購入した時のバージョンをそのまま使ってる。

 しかも、相互にデータをやりとりするのではなく「Aさんが作った書類はあのパソコンにあるから」とパソコンを移動して書類を作成する。個人のパソコンという概念もなく。なんというか、どうしたらいいのか...そんな状態。パソコンの電源は電源ボタンの長押しで切ってる。だから起動時には必ずエラー表示が出るけれど、誰も気にしない。意味もわかっていない。

 会社の中央にあるパソコンをよく見れば、特殊なボードで直接ハードウェアを制御している様子。その会社のメイン業務を担う大切なパソコンだと見ただけでわかる代物(ちょっとした小物を製作する会社だと思ってください)。

 さらに驚愕したのはその扱われ方。

 ときたまハングアップするようなのですが、その度に

 叩いてます

 ばしばし叩いてます

 それから電源を強制切断してもう一度入れ直してます

 よくわからないけど、これで動いてんだ!と老いた社員に言われて、そのまま脱力。本当にどうしたらいいのか。彼は脱力し、戸惑いました。

 先日...たまたまその彼と二人で飲んだ時にこのブログの話をしており、その後「よくわからない、なんとかしてくれ」の記事を読んでいた彼はすぐさま私に電話してきました。似た話だと思ったようですが...私は別に便利屋でもなければ、トラブルシューターでもない。ただのサラリーマンです。ありがた迷惑ですが、まぁ事情が事情。ともかく話だけでも聞くことに。

 けれど、事情をちょっと聞いただけでも、困難さが伝わってきます。

 ともかく、日曜日でよければ一緒に行くよ。

 そう約束して、その会社を訪ねてみました。

 会社は休みだというのに、優しげなおじいちゃん...実はその会社の社長さんもいらっしゃっていて。

 いろいろとお話を伺いました。

 昔、バブルの余韻が残る頃に高いお金を出してシステムを開発してもらったこと。(話しぶりから、おそらく1997~8年頃と推察しています。バブル崩壊から10年ぐらいは、バブルで稼いだ金でまだ裕福にやれていたのでしょう)

 その会社もいつしか連絡がつかなくなったこと。

 その後、パソコンに詳しい社員もいつしか減っていって。つい先日会社の規模を縮小してからは年寄りだけでなんとか会社をやってきたこと。

 見ればその会社の最新PCはWindowsXP+OfiiceXP。古いモノはWindows95やMe。最新CPUは...ペンティアム3。

 2002年か2003年を最後にまったく手が入ってないのがわかります。インターネットに繋がってないし、社内LANもないから、データのやりとりは...MOを使用。しかも概念としてバージョンが違うOfficeは「違うソフト」として認識してるので、データはそれぞれのPCごとに管理。

 それでも、数年前まではまだよかったそうです。けれど、数年前から業績は悪化。昨年とうとう限界がきて大幅な縮小を決行。人件費の高い若い社員を全て解雇し※1、老人達だけでほそぼそと続けることに。そりゃ、友人がバイトに来た時老人しかいないのも当たり前...力仕事兼雑務だから、中年男でも簡単にアルバイトで雇ってくれたわけです。

 聞いていて、重くて重くて言葉が出ない。人生の先人...それも、会社を構えてここまでやってきた人です。そんな人に、若造が何を言うのか...それでも言うことは言わなければなりません。

「このままでは、いつ壊れて動かなくなるかわからない」

 

 こんな状態でも、予算があるならなんとでも出来ます。けれどその金がない

 せめて開発会社が存続してくれていれば、安価で移植が出来たかもしれません。でもその会社はありません

 延命するとして、仮想PCではちょっと辛い(出来ないとはいわないけれど)。どの道お金はかかる

 言葉を選んで話したところ、社長さんは黙ってうなずいてこう言いました。

「わかった。ありがとう。...このまま壊れるまで使うよ」

 壊れたらどうするんですか? そう訪ねたら...

「会社を閉じるよ。終われって神様が言ってるんだよきっと」

 私は神仏に頼る人ではないので、その意見には賛同しません。けれどあきらめてしまうのなら...話はそこでおしまいです。

 いや、諦めざるをえないのか。当事者でない私には深い気持ちがわかりません。言葉にしてもらえれば少しはわかるのでしょうが、あの社長は...寂しくくしゃっと顔をゆがめて...笑っていました。ちょっと悲しそうに。

 それでも少しは手助けしてあげたくなり。その社長の笑顔が余りに寂しそうで。口ぶりから...本心から倒産したい様には見えず。今の従業員達が年金で暮らすためにはまだ数年...会社が延命しなければならない。その言葉が社長の口から出てきました。逆に数年もてば、社長以外の社員は全員60歳を超えます。うまくすれば65歳までもたせられるかもしれない。

...私に出来ることは...彼らがせめて年金でなんとかなるその時まで動くPCを用意してあげること。

 とりあえず、いったん帰宅。ジャンクパーツの集積所となってる知人がいるので、そこでパーツをあさります。

 廃棄PCの中から作ったペンティアム4(2.66)の自作PC。ドライバーは商品に添付されていた古いものを発掘して使用。OSは...WindowsNT4.0。足りないものは秋葉原で購入して持って行くことに。まだ昼前後ですから、どの店も開いてました。ハードディスクだけでも新品の80Gを使用することにして。

 そして私は...助っ人を呼びました。先日の「よくわからない、なんとかてしくれ」の時のひどい目にあっていたあの友人。彼に頼んで特殊ハード(正確にはISAのボード)を見てもらいました。一番壊れて困るのはそのボード。けれど私はハードにはそこまで自信がもてないので、自分が信頼するエキスパートを呼んだのです。

 交換出来るものは交換。なんとか延命出来るように。

 運用されていたアプリが、特殊なサービス等を使用していないただのEXEだったのがせめてもの幸いでした。専用ボード用のドライバーもあったし...小さな幸運が積み重なって、なんとかする道筋が見えてきます。ハードをいじっていた友人が言います。

 「簡単な構造だよ。自宅からもってきた道具で吸い出せるし、焼き芋(EPROMの書き込み機。相当古い年代物)もあるから...ちょっと材料買ってくればボードの複製も出来る。秋月でそろうかな。まぁ、それは後日な。とりあえず今日はすでにやばそうなコンデンサをなんとかしないと」

 やっぱり、ハードも限界に来ていたのか...そう思ってため息をつきました。

 最終的にはボードを新しいPCに移植して完成。そうそうハングアップしない...せめて、あと数年はもってくれそうなPC今時、秋葉原の中古ショップでも値段が付くかわからないPCで、老いた会社の命をつなぐ

 仮想化による延命ではなく、古いパーツを駆使しての...ただの場つなぎ。私としてはあまりやりたくない仕事。でもこれは仕事じゃなくて。ただのおせっかい。だったら、やってみてもいいかな、と。

 その夜。新しいPCで工作機械を動かしてみれば、ばっちり動作。月曜日から今まで通り動かせる状態にして、電源を落とす。職場の人達は何が行われたかわからない。ただ、パソコンを取り替えたんだろうな...漠然とそう思うでしょう。その難易度も、面倒くささも理解しなくていい...ともかく、安心して使えるPCが用意出来たのですから。

 せめて、出来たのはそこまで。結局私は...パーツを漁ってきて提供しただけ。今回の主役は...雇用主の社長に滅多打ちにされ、泣いていた...けれどなんとか立ち直ったあの友人。話をもってきたそもそもの友人と私は、PCを組んでOSをインストールして...後は見守っていただけ。しかもその友人二人、この日までまったく面識もなく。それでも笑って半田ごてを握ってくれました。

 全てが終わったあと、おじいちゃん...社長さんがお礼だと言って少しばかりのお金を包んでくれました。

 私が報酬を受け取るわけにいかないので、改造してくれた友人に受け取ってもらい(彼は規定上大丈夫)、何かあったら彼が今後相談に乗ることにして。まぁ、そうは言っても出来ることなどたかがしれてますが...せめて言葉だけでも。まぁそのお金も、そもそものパーツ購入費用と、もってきたジャンクパーツの持ち主への支払いでほとんど消えちゃいましたけれど。

 もう終電がなくなって、日も変わろうという時間になった頃...私たちはその場を後にしました。

 私の見立てでは、それでも延命出来て数年。かならず寿命が...それも近いうちに来ます。

 使い方がそもそも間違っています。運用どころかそもそもの電源の投入・遮断からして。けれど、それを指導して改善することにどれだけの価値があるのか...望まれてないおせっかいになりますし...私にもどうしたらいいのか。せめてハードに負担のかかる部分だけでも改めてもらって...その先は...

 けれど、せめて。あの老人達が働けている間は。働きたい間だけでも。新たな知識を学ばなくても、なんとかなるように。会社が解散するまでは...壊れずにいてくれ...そう願っています。

 解散するしかない、先のない未来。ITの意味すらわからない末端企業。けれど、そこには老人達の生活があり。仕事があり。少なくなったと言っても需要があり。

 そして、よくわからないまま使われるPCがあります

 滅びを待つだけ...そう経営者が判断し、確かにいずれ...必ず滅びる会社が、そこにはあったのです。

 ...解散へのカウントダウンはすでに始まっています。PCはもってあと5年...そのぐらいでしょうか。なんとか7年もてば、全員が65歳になるそうです。逆算すると最低でも2年もてば、今回の目的は果たせます。全員が60歳になるまで、仕事が続けられれば。...需要がなくならなければ、という希望的未来も願わねばなりませんが...

 コンピューターが高速化し、アプリケーションが複雑化すればするほど...もしかしたら、近い未来の日本の姿はこんな形になっていくのかも。そう思うと、ちょっと気分がブルーです。今はそんな馬鹿なと言っていますが、高機能化は操作の複雑化を生みますどこの職場にもパソコンや機械に対応出来ない人間はすでにいるわけで。それがどんどん増えていけば。作る側ではなく、使用する側にも技術や知識が求められる。専門ソフト(フォトショップとかもそうですが)のように。

 業務ソフトも複雑化すれば...使う人間に格差はどうしても生じてしまう。

 一応、「もうパソコンは叩かないでね、頼むから」という所だけは念を押しまくりましたが...

 ...ちょっと古いマザーに不安を感じてはいるのですが、まぁその時は別のマザーを用意すればなんとかなる。データを蓄積するデータベース等がないのですから、ISAバスを搭載してWindowsNT4.0が動く環境であればまだなんとかなる。アプリも単独起動なのでフォルダごとバックアップを取ればOK。独自ハードウェア用のドライバー類はフロッピーで保管されていたので、それもバックアップして。今後は何があってもパソコンの入れ替えだけで(ボードが死なない限り)なんとかなるようにして。...製造の一部を担当するPCだったからこそ、まだ...なんとか。

 けれど、そこまでやっても...先がない。景気がよくなったとしても、あの会社は新しい社員を増やして、大きくすることはないでしょう。それは社長さんと話していてよくわかりました。今回の延命で、出来たことは...解散を先延ばししただけ。いや、先延ばし出来るように環境を整えただけ。

 生き残る意志があっても、どうにもならない。物語のようにはうまくいかない、現実。高年齢の人達が最後に見せる意地。諦めと不安。それでも、毎日出社して...小さな商品をこつこつ作って出荷する。どこにでもある、町工場のような会社。

 社長さんから話を聞いて、パソコンパーツをもってくるのに3時間。組み立てとインストールでさらに3時間。その間、私に呼ばれた友人がハードの改造をして。その後いろいろテストをして...

 合計で9時間ちょっと。それが私たちが使った時間。サービス過剰と言われるでしょうけれど。あのおじいちゃんの寂しそうな笑顔を見ちゃったら。短期アルバイト先に、友人が選んだだけの会社だったとしても。やっぱり、なんとかしたくなっちゃったもので。

 せめて会社が滅ぶその瞬間まで、動き続けろよと。PCに祈りを込めて。

 あのおじいちゃん...社長が笑っていてくれる間ぐらいは。なんとかなって欲しいな、と思ってます。

※3/14 アフターワーズを別記事に書きました。この文章をクリックでジャンプします。

※1 3/15

 若い人たちがなぜ解雇になってるのか、私の文章では誤解を招いているようですので、別記事内で捕捉してあります。併せて読んでいただければ幸いです。