ある時のこと。仕事中にコーヒーが飲みたくなり、給湯室へと向かいました。福利厚生の一環なのか、私の職場にはインスタントながらコーヒーやお茶のティーパックが充実しているため、冬はお金をかけたくない(缶コーヒーなどを買いたくない)人が結構な頻度で訪れるみたいです。
と、今年新卒で入ってきた若い子(といっても女の子ではなく男性ですよ?)がかなり困った様子で電気ポットの前をうろうろと。
「よぉ、どうしたよ?」
春に転職したこともあり、彼とは互いに親近感があったりするので、何気ない会話が結構多いのです。今回もそんな感じで声をかけました。まぁ、そうでなくても挨拶したり声をかけたりはいつものことですけれど(知り合いを見て挨拶をしないとダメだと幼い頃から母親にしつけられ、尊敬する爺さんにもそれはもうきつーーーーく教えられているためそこだけはしっかりするようになってしまった...)。
「いや...あの...ちょっと...あ、XXXさん(私の本名)なら聞いても笑わないかな...」
「...何をもじもじしてるんだ気色悪い(笑)」
「あの...インスタントコーヒーってどう作るんでしょう?」
「......」
「いや、あの、作り方は知ってるんですけれど、どのぐらい粉をいれたらいいのかわかんなくてですね...」
わたわたとする様はなんというか小動物。 思わずなでたくなる可愛さ。女の子だったらちょっと守ってやりたくなる感じ(でもこれで武道やってたから腕っ節には自信あるらしい)ですけれど。
「...スプーンで少しだけいれてやや薄めにしとけば、万人受けっぽい味になるだろう。ミルクと砂糖いれる前提だし...このぐらいじゃないか?」
スプーンでだいたいの量を示してあげると、彼はお礼も言わずに紙コップで6杯分のコーヒーの用意をしてわたわたと給湯室を出て行きました。どうやら上司に来客があり、そこに出すコーヒーを準備していた模様。
で、昼休みに食事に行こうとすると彼がぱたぱたとやってきてぺこりと頭を下げたんですが...
実はその頃にはすっかりコーヒーの一件のことなど頭から消え去っていて(こちらの事情として午前中上司に説教されたが、その理由が自分の責任ではなかったため反論し、激論に達してしまい午前中はヒートアップしたまま過ごしてしまったのが原因。結局言い過ぎたことを謝って、上司も私のミスでないことを認めてもらって、この件は終了となりましたが)、思わず???となってました。
ようやくああ、インスタントコーヒーの件ね...と笑いながら、なんで知らないのよ?なんて話に。
「うち、物心ついた時からコーヒーはコーヒーメーカーで作ってたんですよ」
とのことで。どうやら両親共にコーヒーがそれなりに好きな人達らしく、彼の家ではコーヒーというのはコーヒーメーカーで作るもの...という認識だったようです。
普段使っている人はわかりますが、コーヒーメーカーというのは大変に便利なもので、使用済みの紙フィルターとコーヒー粉を捨てる手間とコーヒーメーカーの掃除の手間を除けば誰でもおいしいコーヒーを平均的な味で作ることが出来る優れものです。
濃さ等も気にせず、(洗ってある前提ですが)コーヒーメーカーにフィルターをセット。粉を指定の量いれて、水をセット。後はスイッチをいれるだけ。しばし待てばおいしいコーヒーが自動的にできあがる。
彼はこれを子供の頃からずーっとやってたと。で、大学時代に一人暮らしを始めるにあたっても当然のように両親からコーヒーメーカーがプレゼントされ。遊びに行く友人宅等では缶コーヒーは飲んでもインスタントは作ったことはなく。(出されることはあったようですが)
まともに作ったこともなく今日にいたってしまったと。
本人的に非常に恥ずかしかったようなんですが、私からしてみれば特に不思議ではなく。むしろよいご両親ではないかな...なんてぼんやり思いつつも、まぁ貴重な存在だよな...今時...とかいろいろ思ったり思わなかったり。
私自身若い時はコーヒーに凝りまくって、それこそ生豆を買いに行き、焙煎も指定し、挽き立てを丁寧にいれて飲む...とかやってたんですが(今でもアンティークなコーヒーミルやその他道具がしまってある)、そのうち視野が広がった...というか、ふと思いまして。
「コーヒーメーカーも悪くないじゃないか」
と。毎日とっておきのおいしいコーヒーもいいんですが、どうしても好きな味を好きなようにしか飲まない。
だったら安い豆で日頃過ごして、休日とかによいものを飲めばいいや...と考えるようになったんですね。
で、しばらくするとそこからさらに広がって「インスタントコーヒーも悪いもんじゃない。手軽さとこの味。別物として楽しめばこんなに手軽なものはない」と思うようになりまして。
そもそも友人が私のところに遊びに来た時、勝手にコーヒーメーカーを使うやつはさすがにいません...けど、インスタントコーヒーであれば「コップ貸して~、お湯もらうよ~?」と言うやつは出てきます。それだけインスタントコーヒーはみんなの生活に溶け込んでるんですね。(そしてそんなに遠慮しなくてもいいぐらいには安価)
私の母親も割とコーヒーにはうるさい人ですが、思い出して見ると普段はインスタントコーヒーでした。
小学校時代は私もインスタントコーヒーばかり(ゴールドブレンドかエクセラ。メーカーが偏ってたなぁ)でしたし。
(なんだかんだで日本の定番。やっぱり無難においしいコーヒーといえばゴールドブレンドの人気は高いです。香味焙煎もインスタントでは結構評判高いので一度試してみては。私個人はUCCの114や117が安価で売られることが多いしそれなりに好きな味なんでそっちも常備しています。...冬はいろんな人が飲むから減るの早い早い...というか一人暮らしなのにどれだけコーヒー常備してるんだ...)
それが中学にあがった頃「あんたもそろそろ本当のコーヒーを飲んだ方がいいわね」と母親が言い出し、手ずからドリップして出してくれたブラックのコーヒー...これが開眼のきっかけで。
以後小遣いや年配の人のおごりで喫茶店等でコーヒーを飲むと大人ぶってブラックのコーヒーを飲むようになり、豆の種類等を勉強し始め...
成人した頃にはほのかに説教くさい「自称コーヒー好き」となってブラックのコーヒーをガンガン飲む人になっていたという。
その後、いろいろなコーヒーを試すうちにもっと詳しい人達から様々な抽出方法や飲み方を教わるうちにブラックコーヒーが至上というわけでもないんだなぁ...などと思うようになり(最初にブラックで少し楽しんでから砂糖やミルクをいれて楽しむのを人には勧めたりしてましたね...当時は)、フレーバーコーヒーを自作するようになる頃にはもう何がなんだか(笑)
で、いろいろあって20代後半から30代前半になる頃には一周以上回って「インスタントだろうとドリップだろうとおいしければいいじゃないか。その人にとっておいしいコーヒーなら否定しないで一緒に楽しもう」という広いんだかなんだかわからないところに落ち着いたという。
とはいえ、いろいろ飲んでの結果ですから、途中の変化がなければインスタントかドリップが私の中での基準になり、他の作り方とか知らないまま育っていたのではないでしょうか。試しすぎておかしなことになっちゃった記憶もありますが、まぁそれは特殊な例としても...育った環境で飲んでたものがその人の基準となるはずで。
今回の話の彼の両親(なんだか変な日本語ですね)はずーっとコーヒーメーカーとKEYコーヒーの豆だったそうなので、彼にはずーっとそれが普通だったと。好みの味も自然とそれが基準に。
けどまぁ、社会に出ると...世の中インスタントコーヒーがこれだけ広まってるわけですから、当然飲むことにもなるし、作ることもあるでしょう。それがたまたま社会人一年生の職場で起こっただけ、ということで。
その場で...貴重な人だなぁ...おいしい奴だなぁとは思いましたけど(笑)
作ったことがないと、概念として「粉を入れてお湯で溶かす」というのは知っていても、具体的な量についてはわからないものかもしれません。まして、ほとんど見たこともないわけで。友達の家とかで作ってもらったことはあったとしても。
インスタントコーヒーは手軽さもそうですが、薄味や濃い味を手軽に作れるのも持ち味です。好みの味を作りやすいというか...まぁそういうところはもっと評価されていいと思うんですが。昔自分もそうでしたがコーヒー好きを自称するようになると「あんなもんコーヒーじゃない」とか言い出したりしてしまう人もいるんですが、どうして。
ここまで愛されて飲まれ続けているわけですし、少なくとも日本で作られているインスタントコーヒーは立派においしいコーヒーしてると思ってます。
また、職場でコーヒーメーカーがあるところだと煮詰まったコーヒーにげんなり...なんて人もいるようですが、インスタントコーヒーだとそれはありませんからね(^^;
今の家に引っ越した頃はコーヒーメーカーやドリップの道具を使っていたんですが、最近ではちゃんとコーヒーを作ろうと思った時はもっと手軽な「プッシュ式プレス・ポット」というのを使っています。フレンチ・プレスなんて言われることもありますね(^^)
手入れが簡単ですし、お湯があればすぐ出来る。ペーパーフィルターを使わないのでちょっとだけ経済的(ゴミも減ります)
そしてペーパーフィルターでは出ない「雑味(私はそう呼んでます)」が味わえるのがまたたまらない。澄んだコーヒーもいいですが、多少雑味があった方がコーヒー本来の味なんじゃないかな...なんて思うときも。個人的にはエチオピア辺りの豆をこの方法で飲んだ時の独特の酸味が病みつきです(豆によりますが)。
でも、それよりも手軽で...長期保存が効いて、様々な種類が販売されていて、安価でそれなりにおいしいインスタントコーヒーはやはり今の食卓には欠かせないものだと思います。
今回の彼も初めてインスタントコーヒー(職場のはマキシム)を自分で飲んだんですが...粉の量が冒険しすぎで。
「苦いです...」
とのことで。だから最初は薄くいれろと言ったのに(笑)
コーヒーメーカーに粉をいれるイメージが強かったんでしょうかね。次はうまくやりますと笑ってました。薄く入れて後からちょっと足せるのもインスタントならではのやり方だとは思うので(^^;
ただ、手軽さではインスタントコーヒーに勝てませんが、お手入れがちゃんと出来るならコーヒーメーカーもいいものです。安い豆でもちゃんといれればそれなりにおいしい。
毎日量を飲む家庭なら、それこそMJBのグリーンの缶(結構量がある)をあっという間に消費してしまいますから(アメリカの家庭なんかそうですね)。
MJBのコーヒーは特別おいしいってわけではないんですが、価格を考えると毎日飲む人にはありがたいもので。日々それなりにおいしいコーヒーを飲み続けたい人は結構愛用してたりします。安価な店だと輸入ものがさらにお安く売ってたりしますから(^^)
そういえば昔からコーヒー好きの人は「インスタントなんか」とか「缶コーヒーなんか」と言う人が多かった気がします。
でも、それぞれにそれぞれの良さがあって広まってるんですから、そんなことを言わずにそれぞれの味わいを楽しんでみるとおもしろいんじゃないかな?と思ってます。納得出来ないならそれはそれで別物として味わえばいいわけで。
だいたいどれが本物だとか最高のうまいもんを...なんてやってるとどっかの料理漫画ではないですが究極だと至高だのと(笑)おいしければそれでいいじゃあないですか、と。
人それぞれの趣味があるわけで、他人の好きなものを否定しても何もいいことはないので...それも認めつつ、じゃあこっちも試してみないか?と互いにおいしいものを試しあう。
肩肘貼らず。おいしいと思うものをおいしいと思う方法で。
で、たまには他人がおいしいと言っているものを試したりして、いろいろ楽しむ。いろいろ知って驚く。
そんなことでも、人生ってちょっと豊かになるんじゃないかな?なんて。新たなおいしさにいつだって出会える気がするのです。
ただ、カフェインが入ってるのは苦手...という人もいるので、そういう人はインタントですがカフェインレスをうたっているものを試してみてはいかがでしょう。アマゾンで売れているものを調べたら、
これがかなり売れているようで。ゴールドブレンドにもカフェインレスとかあるんですが、有機栽培等日本人が好む宣伝文句がこれだけついてるのもおもしろい。足場は結構しっかりしてると聞いてますので今回いい機会なのでひとつ注文してみることに。他にもいくつかご紹介しときます。
インスタントは...という人も、豆で売ってるやつがあるのでそっちを試してみては。私はカフェイン中毒気味なのであまり好んでは飲みませんが、試さないのももったいないのでいくつか試してみました。以前に比べたら格段においしくなってきてますね(^^)もう遜色ないなぁ...というコーヒーも多いかと。ちょっと高めになるのが難点ですが...
※缶コーヒーなんか...という人は真冬の寒さの中、ふと見つけた自販機で買った缶コーヒーのぬくもりを知ると意見ががらっと変わったりします。シチュエーションの差で魅力が変わるのも面白いですよね...外気温が大きく影響するのもコーヒーのおもしろさかと。日本独特の感覚でしょうけれど。
バイク乗りの人は、冬のツーリング後の缶コーヒーをグローブにごしに握った時のあの暖かさ。一口目の口の中に広がる暖かさと甘さ。その魅力をよく知ってるんじゃないでしょうか(笑)
インスタントコーヒーも、朝のけだるさの中、恋人が作ってくれたものであったらそれはそれはおいしく感じるものです。たとえクリープやマリームをどっさりといれてあって、砂糖がどっちゃりと入っていたとしても(苦笑)
くだらない余談ですけれど。
※豆はどこのを買えば...という話がよくありますが、よほど味にうるさい人でない限りは普及品でいいかと。個人的には日本人の舌に合う味はやはりUCCやKEYコーヒーなんだろうな、と思っていますが、専門店でちょっとリッチなものを試すのもおもしろいと思いますよ。
特にこだわりがないならブレンドを買っておけばよいと思います。なんだかんだで無難な味に仕上がってるものなので。日本人の大好物といえばブルーマウンテンですが、やや高いのがちょっと難点。おいしいですけれどね(^^)
一時期は手に入りづらかったモカも最近は手に入りやすくなってきたので好きな人は喜んでたり。
あと、コーヒーメーカーもよほど味にこだわりがあるとか味覚が敏感だ...という人でもなければ最初は日本のメーカーの安価なもので十分かと。これで結構おいしいコーヒーが出来上がるもんなので(あと日本メーカー製はお手入れが簡単なものが多いのもありがたい)
いろいろ書いてますが、私なんか本当にコーヒーを愛する人達から見たらまだまだなので、興味がある方は様々な人の様々なホームページ等を見てみるのをお勧めします。どうしても偏った意見なので。
また、コーヒー豆にこだわり始めると知識がおもしろいほど得られます。コーヒー豆と一口に言っても産地、季候、輸送も含めて味は年ごとに変わるし、値段だって変わります。今年のエチオピアはどうだ、エクアドルはどうだったか?なんて調べると、ちょっと世界の動きにも目が行くかも?(そんな人は少ないかもですが、私はそれで南米等に興味が沸くきっかけになりました)
楽天等で安価なコーヒーを豆を大量に買うのもひとつの楽しみですし、海外の安いコーヒーで満足ならそれもそれであり。おいしくて笑顔になれればそれでいいな...と思います。
※さらに追記
ドリップパックもおいしいですよ(^^) ドリップパックのコーヒーについては後日別記事で。