アップルに踊らされる人々...簡単に出来る新製品リーク情報記事の作法

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 今年もこの時期になるとそろそろAppleの新型の話題が大きくクローズアップされリーク情報がでまわり否が応でも期待感を盛り上げてくれる。そんな時期です。
 昨年のiPhone4Sの時もiPhone5の話題で大きく盛り上がり、今年はiPhone5やiPadminiの話題で盛り上がったものですが、今回はその盛り上がる側の話になります。

 実はAppleの製品のリーク記事には大きな特徴があります。以前ほど堅牢ではなくなったとはいえやはり秘密主義のAppleですから新製品の情報はなかなか出てこない。(最近はティムが進めた低価格化と調達リスク軽減のための策のデメリットが出て情報がだいぶリークされるようになってしまいましたが)

 ところが読み手...私たちなんかがそうですが...はともかく情報を欲する。日本人もそうですが、むしろこうした好奇心全開で動くのは海外のブロガーやニュースサイト。
 そこで海外のブロガーやニュースサイト達は自らの情報源を駆使して様々な情報を手に入れようとあの手この手を使います。
 アジアで製造されるパーツ群からスペックを把握しようとしたり噂話を吟味して真実を導き出そうとしたり。

 私自身もそうして情報を探ることが多いです。私が着目するのはAppleが大型の契約をいつどこで交わしたか。一番情報が出回らない分野ですが、一度その情報が真実だと確信が持てればかなり多くの推測の裏付けが取れるため地道に情報収集を続けていたりします。(液晶パネルの調達の時もそうですが多額の投資は動きが必ずあるので掴もうと思えば結構いける。ティムが社長になった以上今まで以上に技術や設備に投資すると読んでますし)

 まぁ、人の口に戸は立たぬと申しまして。

 いかに守秘義務・契約でしばろうとも個人間のつながりの中で直接関係ない話題から情報を収集するようにすると...意外なところで情報が手に入ったりします。ソーシャルハッキングまでいかなくても地道にこつこつ集めた情報をまとめると朧に浮かぶいろいろなもの。
 ...あとはそれらの情報をいかに有機的に結び付けて推測を補完して現実に迫れるか。たぶん他のサイトなんかもそんな楽しみ方をしつついろいろ情報を集めているんじゃないかと。そしてそれを発表して「どうよ、この想像。合ってると思わない?ねぇねぇ」といった感じで賛同を集めたい。
 合ってたらなんかすごくうれしいしやり遂げた感じがするもんで。情報サイトのひとつの形だとは思うのです。

 実際多くの日本企業や台湾の企業がAppleと契約して様々なものを製造しているわけですが、経営陣の思惑以上に製造の現場からは情報が洩れています。それを拾い集めると相当な量の情報が収集出来ますし。個人で集めてもかなりのところまで迫れたりする昨今です。

 私などはおいしいとこどりで、そうして情報を集めているサイトやブログから情報をつまむことが多いです。
 私が着目する海外サイトやブログでもやはり独自の視点と情報網でいろいろと調べている人が多く...その大部分は個人間のつながりを駆使して得ている情報です。
 そうしたサイトの情報を日本語に訳してくれている日本のブログや情報サイトというのは非常にありがたく貴重な存在です。感謝しつつ読ませてもらっています。

 で、この特徴が問題で。

 Appleには信者が多くて...とかあれは宗教だから...なんて言う人もいるぐらい熱狂的なファンの多い企業であり商品もまた非常に魅力的で愛着がわきやすい(口が悪い人は忠誠心ともいう)ものだったりします。

 そうすると...「こうして欲しい」とか「こうなって欲しい」あるいは「こうなるべきだ」という考えがファンの中にもむくむくと。そしてそれは情報を集めて発信する人の中ほど強くなる。
 すると様々な人が様々な憶測に願望を交えて情報を発信します。

 実は私はAppleの新製品に関しては自分でつかんだ情報をブログではあまり発信しないようにしています。なんでかというと情報の正しさが保証できないうえにAppleの新製品記事特有の「作法」に従ってしまうのが嫌だからです。

 私が「作法」と呼んでいるものですが、内容はすごく単純で。

「こうだったらいいな」
「こうあるべきだ」
「こんどはきっとすごいに違いない」

 ...という漠然とした願望(あるいは欲求)を交えつつある程度予測できる事実(たとえばCPUが強化されるだろうなんていうのはたぶん新製品である以上は間違いなく現実になりやすい部分です)を交えて文章を並べると...

 誰でもAppleの新製品の情報を作れてしまうんですね(^^;
 これが私が考える「Apple新製品リーク記事の作法」です。

 iPhone5の情報が過熱していた昨年私もいろいろ情報を集めました。その時のこと。

 ジョブズの死期が近かったからなのかティムやシラーに指針を見せるためだったのか...4Sとは別のiPhoneがある程度の形まで予定されていたのは恐らく事実だろうと今では思ってます。市販するつもりがあって直前でキャンセルされたという報道もありましたが、私の予想ではそうではなかったんですが、これもまぁ憶測で。

 結局のところ発売されたのはiPhone4Sであり。
 報道する側やテクノライターなんかは自分の予想と違う商品に勝手に裏切られたと騒ぎ立て。...そう、作法に従ってくれない製品が出たので「裏切られた」と勝手に思って騒いでる人のなんて多かったことか。

 けれど蓋を開けてみれば4Sは空前のヒット商品となりました。
 様々な人が予想した5よりはスペックが低かったのかもしれませんが...どうしてもそうした記事を発信する側は「ぼくのかんがえたさいきょうのあいふぉーん」を並べたくなるもので。
 でも市場が求めていた性能に合致していて、いろんなバランスを考えるととてもよく出来たものだった。

 そう、記事を書くことや情報を発信するだけなら「作法」に従えばそれっぽいことが書けてしまう。

 純然たる事実や現実ではなくリーク情報でもなく。
 いつしか願望が大部分を占める記事を作ってしまう。
 そしてそれを補完するのに都合のいいリーク情報や業界筋の情報を並べ立ててしまう。
 気づけば様々な情報から新製品の情報を組立るのではなく、自分の望んだ商品に相応しい情報だけを集めてしまう。

 これが嫌なので書くのやめちゃったんですよね。
 なんせわかっていてもついやってしまう行為なんで...

 簡単な例として今年発売されたnew iPadを上記の作法に従って当ブログ風ではなくIT系の記事のように書いてみましょうか。これは昨年末に冗談で書いたものが元になっています。

「iPadは1月末から2月の早い段階で発表になり3月に発売されるようだ。様々な情報筋がそれについて言及している。
今回のiPadに関しては昨年のiPad2で見送られた高解像度液晶を搭載すると言われており期待感が強い。内臓のCPUに関しては新型のA6チップを搭載するだろうがその性能はある程度予測が出来るものだろう。ARMのどのコアを使ってくるかはわからないが、iPad2より高速なのは間違いない。

バッテリーの改良については間違いなくされていると言われている。ライバルとなったAndroidとの戦いを有利にするためにも高性能化を図ったうえでiPad2と同様の稼働時間を確保するだろう。ジョブズが存命の時から変わらぬ理念のひとつだ。

 採用される高解像度液晶はiPhone4で搭載されたretinaディスプレイの大型版と言われているがその製造メーカーは限られる。おそらくはLGとサムスン、そしてシャープと東芝といったところだろう。どの企業もAppleと取引があり大口の投資を受け入れている。
 守秘義務のベールに包まれて詳しいところはわからないが数社へのオファーは間違いないところだろう。サムスンのと訴訟問題はあるもののAppleのCEOティム・クックはまだサムスンと決別する気にはなっていない。A6チップもサムスンの製造といわれている。

 問題はiOSのバージョンだ。昨年発表されたiOS5は非常に優れたOSだがバッテリーの消費が早まる問題を抱えている。早期にiOS6ないしは5のマイナーアップデート版がリリースされ新しいiPadに搭載されるだろう。

 そしてひと月をまたずして既存のiOSデバイスにもリリースされユーザーを喜ばせることになるだろう。

 Appleの秘密主義は強固なものだが少しずつその全貌が明らかになりつつあり今後も目を離せない。気になるところでは発表のプレゼンを誰がやるかというのもちょっとしたトピックになっている。
 ティムはCEOになってからも大きな発表は最初だけ登場して新商品についてはシラーが引き継ぐ形を取っている。だが今回に限ってはティム自身が新製品のプレゼンをするのではないか...そんな憶測が飛び交っているのだ。
 強いリーダーシップを見せつけなければならない立場としては注目される新商品の発表は恰好のアピール舞台だ。前回はジョブズの死後すぐということで混乱もあったようだが、新たなCEOのもと結束していることを株主に見せるためにも今回の発表が注目されている。
 そして恒例の「そしてもうひとつ...」をやるかどうかだ。やるとして何が出てくるのか。MacBookAirの新型が出るのではないか?との憶測があるがまだわからない。
 強力な商品を持つAppleだがそれゆえに自社の商品同士がぶつかってしまうことも多い。iPhoneの影で徐々に弱体化しているiPodの強化も急務だ。いまだに売上・利益ともに外せない商品であり、アジアや南米を中心に低所得者層にAppleの商品を浸透させるに最適な商品だからだ。
 高価な商品が多い中でiPodだけが学生でも気軽に購入できるAppleの商品であり...Appleの世界への入り口でもある。ジョブズはそうして様々な入口から{Appleの世界}へとユーザーを誘ってきた。今やiOSもMacも全てがアップルの世界を構成する要素でしかない。Appleの製品をそろえていけば快適で楽しい...そして比較的安全な...世界が広がるのだ。
 そのためにもiPodは重要だろう。
 今後のAppleの姿を占う今回のiPad3の発売・発表から目が離せない。新たな情報が入ったらまた書くことになるだろう」

 これ、実はわざと「作法」に従って当時書いたもので、結果はまぁ...遠からずと言ったところでしたか。だいぶ外れてる部分もありますが、当時としては「ああ、ありそうだなー」と思われたかもしれません。

 ところがこれ...どこにも「事実」や「公式な発表に基づいた」ものはなかったりします。全てが憶測と予想。せいぜいがA6に関する部分だけが事実っぽいところ。(報道ベースではありますが)
 これ、ニュースソースをどんどんおっかけて分析すると基本的には北米と台湾のブロガーやテクノライターの「願望混じり」の記事が一番最初だったりします(笑)

 それが広がって肉付けされて今の過熱記事になっていく。このうねりというか動きだけでもかなり面白いのですが、それをわざと模して作ったねつ造記事でした。エイプリルフールまで新製品が出なかったら掲載しようかなーと思ってたんですが。

 作法に従って書けば実は誰でもAppleの新商品の記事が作れてしまう。そして予想が外れたらこういえばいいのです。「直前になって仕様が変更された。本来とは違った形のものが発売された。今回予想されていたのは来年発表になるだろう。ジョブズがいればこんなことはなかった」と。
 そんな記事が多くないかな?と(苦笑)

 どうにもそれが嫌で書いてなかったという。
 お金をもらって書く記事ならばあるいはそうした夢を見せるのはアリなんですが趣味でやってるブログですんで...書きたくないもんは書かないことにしてます。

 AMDやINTELのことなら割と書けるんですが(情報に自信があるのも理由のひとつだったり。...Appleの場合は予想が外れやすいのとそれに突っ込んでくる熱心なファンが怖いので(苦笑)避けてる部分もあります。

 Appleはジョブズの強力なリーダーシップと彼自身が描いた夢を形にすることで、その夢の結晶をユーザーが共有していく...そうして生まれた商品たちによって強力に復活しました。
 それはジョブズが描いた夢ではあったけれど...誰もが「こうだったらいいな」とか「こんなことが出来たらいいな」と思っていたけれど「でも無理だろうな」と思っていること。それをあたかも簡単に実現してみせて(実際は簡単でもなんでもないんでしょうが)商品化する。
 そうして現在のAppleのイメージが完成したのだろうと。ジョブズ亡き後のティムはまた違った形の夢を見せてくれていますが、ファンがまだそれについていけないのかも。ティムが見せる夢はもっと現実的で...無理のないものですから。

 でも願望をかなえる部分は変わらない。
 だとするならば。
 誰かの願望がそのまま反映されることもあるわけで。
 そうした願望混じりの作法に従った記事を書いても結構な確立で当たってしまうというかなんというか。
 そして書く側も読む側もそうした情報や記事に踊らされる。踊りたがる。

 この循環の輪こそがジョブズが作り上げたApple神話の根幹にあるんだろうな...とも思います。踊らされる側も喜んで踊らされているわけで。

 そうして出てきた様々な情報が。記事が。言葉が。
 いやでもAppleの商品に注目を集めさせ...商品を成功させるための足がかりとなっていく。嫌でも目を離せなくなる。アナリストの目を常にひきつける。ファンの目をくぎ付けにする。

 恐るべしというか...本当に恐ろしいのは熱心なファンというか(笑)

 今回の作法を頭に置いて溢れかえる次期iPhoneの記事を読みふけってみると...いろいろと面白いかもしれません。

 最後に次期iPhoneの記事を国内向けに「作法」に従って書いて終わりにしてみます。


「iPhone5の発売から間もないがもう次期iPhoneについての情報が入り始めている。
海外の情報サイトによればまだそれは試作段階で、実際の商品とは違ったものだという。
プロセッサはiPhone5のA6に改良を加えたA7で、再びApple自らが設計したチップとなる。GPUの強化がさらに進められており低消費電力部分も進化しているようだ。製造はサムスンではないとも言われるが、現在製造技術でサムスン以上の会社がないのでどうなるかは不明だ。INTELが作るなどの奇妙な情報も出ていて面白い。
サウンド面での進化は面白い話が出てきている。台湾の情報筋によると液晶面自身が振動して音を出す仕組みにAppleが強い興味を抱いているのだという。
次期iPhoneには間に合わないかもしれないが、ステレオスピーカー搭載よりはインパクトのある話だ。
ただiPadminiでステレオスピーカーを搭載する方向に向かっているので、これはあくまでも興味があるというレベルだろう。
デザインは大幅には変わらないと言われている。型番もおそらくは5Sとなり5のマイナーチェンジ版となるだろう。
カメラ部分はソニーの新型パーツによりより鮮明で高解像度のカメラになると思われる。ソニー幹部が採用についてコメントを控えている辺りからもうかがえる。
 国内向けで興味深いのはDOCOMOの参入だろう。DOCOMOの幹部の話によれば交渉は続いているとのことで、問題となっているのはXi(クロッシィ)のロゴを本体にいれられるかどうかというどうもつまらない部分のこだわりがひっかかっているようだ。
販売台数のノルマについてはauとSOFTBANKが扱っている以上国内主要キャリアから全てiPhoneが発売されることになり、Apple側としても譲歩の余地があるようで、そう問題にはしていないようだ。
 日経の情報が主ではあるが、このところのDOCOMOの凋落ぶりを見るとあながち間違いとも思えない。
 今後も注意深く見守っていく必要があるだろう」

※上記の文章は記事中に書いた「作法」に従ったまったく根拠のない妄言であることを明記しておきます。が、ありそうに見えるでしよ?(笑)