電子メールの位置づけは移り変わり続け...今や個人を表す「鍵」となり

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  Windows8時代になりまして。電子メールの概念も使い方も大きく変わってきているなぁ...という印象が深まっています。
 むしろ電子メールという言い方がもうされていない。ただのメール。郵便物ではなく...今やメールといえば電子メールを指すようになりつつある時代。
 最初は相手に言葉を届けるのが主たる役目で。元をたどればパソコン通信時代からあった機能。
 けれど今ではさまざまなデバイスから...様々な経路で様々なところに届くデータに様変わり。

 その使われ方も大きく変わってきています。

 メールの基本はテキストデータを送って相手に意思を伝えることです。
 というと「は?」とか言われちゃう世の中なんですが...ベースはまぁ文章だったわけで。そこに付加価値としてデータも添付出来るようになって。


 テキストを装飾したい...なんて欲求も組み込まれて。
 あれよあれよと肥大化し。気づけばお化けみたいなシステムになってしまっています。 

 そもそもの起源はwikiなど見ていただければいいのですが、日本で普及の起爆剤となったのはやはりパソコン通信の普及だったでしょうか。

 アスキーNETやPC-VAN。ニフティサーブが世の中を席巻したころにみんな初めて電子メールの良さを知ったんじゃないかなぁ...と。
 私はへそまがりだったので大手パソコン通信とは無縁の個人BBSやらなんやらにのめり込んで行ったんですが、そこでもやはり電子メールは重宝したものです。
 個人あて伝言のやりとりみたいなものが主だったわけですが(当時はチャットしていた方が多かったですし)、それでも便利。ちょっとしたデータを添付して送れるのは実に便利でした。
(送れる容量に限界があったりそもそも通信料の問題があるから時間短縮のためにも強烈な圧縮を求めまくったものです。自前でハフマンとか勉強して圧縮ルーチンとか組んだりした人も多数いました。Lharcやzipの普及でだいぶ廃れましたが)
 でも、あくまでも閉じた世界の中での郵便物。国内限定というか。
 BBS同士が繋がってるわけでもなく。
 大手パソコン通信同士でやりとりできるものでもなく。
 いつしか欲求は「誰とでもやりとり出来る電子メールが欲しいなぁ」というものに。

 インターネットが生まれたときに電子メールが重要な機能となったのはある意味必然だったかと。

 日本のインターネット元年は諸説あるもののWindows95の発売をもって元年だと私は思っています。そしてその年こそがまさに電子メール元年と言ってもいい年だったかと。
 どこのプロバイダーを使おうとも。どこに接続していようとも。
 インターネットに繋がってさえいればメールが届く。送れる。
 今では当 たり前のことが当時はとんでもない利便性を持って現れた新たな技術でした。パソコン通信のメールもインターネットへと一気にシフト。草の根BBS等は根強 く残っていましたが(秘密くらぶめいた雰囲気を色濃くしていましたが)、大手パソコン通信はその姿をインターネットプロバイダーへと変えていきました。

 第二次となる起爆剤は...DOCOMOのimodeとJ-Phone(現ソフトバンク)の写メールの登場。これにつきるでしょう。そう、携帯電話と電子メールの融合。これも大きな普及のインパクトになりました。
 なんといってもPCがいらない。これは大きかった。
 今まではメールのやりとりをするのにもパソコンが必要だった。
 携帯電話同士のやりとりは便利だけれど、インターネットのメールのやりとりのようには便利ではなかった(秘匿性は高かったけれど)。
 Windows95の発売からわずに数年(5年程度)でDOCOMOがimodeを普及させていきます。imodeコンテンツも当時としてはとてもすぐれた仕組みだったとは思うのですが、何より携帯電話でパソコンとメールのやりとりが出来るというのは素晴らしかった。
 私もすぐにパナソニックの端末を購入して...使いづらくて地面にたたきつけそうになったんですが(ジョイステックのようなポインタがともかく手に痛かった)、機能としては便利で手放せなくなりました。
 そしてその翌年だか翌々年だかにJ-Phoneから写メールが登場。実際には写メールと名前がつく前から対応機種はあった気がしますが、マーケティングがいかに大事かという説明に私が今でも使う材料のひとつがこの写メール。
 写真がメールで送れますよーと言ってもインターネットが普及する前からJ-Phoneでは実用化されていたサービスで。それをインターネットメールに対応させると共に「写メール」というサービス名を定義。
 この名前がわかりやすくて魅力的。ともかく写真をとってメールしあうのが楽しい。となれば一気にJ-Phoneのシェアが増えます。私の周りにもこの時期一気にユーザーが増えた覚えが。
 もちろんDOCOMOやauも同種のサービスを展開して追従。今となっては当たり前の機能ですが、この携帯で写真を撮って送れるというのが日本の電子メールに与えたインパクト大であったかと。

 そしてずーっと進んで現在。
 電子メールのアドレスは様々なシステムやポータルの「鍵」にもなっています。
 電子メールアドレスをキーとしてクラウドデータにアクセスする。Googleのgmailが際立つ例ですが、Windows8もマイクロソフトのメールアドレスを取得してそれをキーとすることで複数のPCでデータの同期が取れたりします。
 使ってみるとこれらのサービスはとても便利。今まではなんとなくデータのやりとりに使ってきたメールアドレスが、今では人間と1対1、あるいは1対複数で結びつく大切な「鍵」にもなっている。
 複数のメールアカウントを駆使している私ですが、クラウドデータと結びつけて活用しているメールアカウントはほぼ1つにしぼられます。まぁGoogle用とマイクロソフト用とでわかれてはいますが...
 スマートフォンにしろなんにしろ。
 電子メールを鍵として使っているがために...必ずメールアドレスを取得しなければならない。メールなんて使わないよ!という人でもそれはほぼ必須。
 極論でいえばパソコンなりスマートデバイスなりを使って行こうとするならば個人に結びつくメールアドレスが必ず存在する。
 そのメールアドレスを誰かに奪われたとしたらどうなるか。
 セキュリティは非常に甘いのが現実で。複数のメールアドレスどころかさまざまなポータルのログインパスワードも同じパスワードを使っている人が多いわけで。
 ひとつ漏れればすべてが漏れる。
 キーとなっているメールアドレスのパスワードが漏れればその人の個人情報やプライベートデータがすべて奪われてしまう。
 なんだか映画のような話ですが、身近な現実です。
 そして奪われたデータはメールパスワードを変更されてしまうと...もう自分でアクセスすることが出来なくなる。大切な家族の写真や秘密にしておきたいやりとりもすべて他人のものになってしまう。

 身近になったクラウドですがそのアクセスキーは電子メールアドレスが使われることが多く。そしてそのパスワードはとても...とてももろい。
 「人間の怠惰」がパスワードを簡単なものにして。いくつものパスワードを共有化している。システムではなく使う側の人間が作り出す「穴」。
 たかが電子メール...またアカウントをとればいいさという人もいます。
 しかしひとつの電子メールアドレスに紐づいたデータがたくさんある時どうするか。
 簡単には切り替えられません。
 こうなると電子メールひとつが個人を表す記号のようなもの。
 もっとセキュリティに気を付けて使わないと...
 たかが電子メールではもうなくなって来ているかなと。

 パスワードの乗っ取りというとハッカー(個人的にはクラッカーと呼びたいのですが)による遠隔操作で乗っ取られ...と空想したくなりますが、実際にはもっと泥臭い。
 机のメモを盗み見られるとか、わかりやすいパスワードにしていたので簡単に推測されてしまったとか。実際にはそんなものです。
 ソーシャルハッキングなどと言いますが、簡単に言えば「騙して本人の口からパスワードを言わせてしまう」のが最も確実で簡単なハッキング方法です。
 パスワードを覚えられない人ほどメモを残す。手帳に書いてあったり方法はいろいろですが。下手すると入力する時に口に出して入力していたりする。
 そこを盗み見れれば。
 1つのパスワードが得られればその人が利用しているサービスすべてにそのパスワードでアタックするだけ。結構な確率で同じパスワードを使用しているもの。
 そしてクラウドデータにアクセス出来るだけでなく本人に成りすますことも可能。相手に知られずにメールのやりとりを勝手にすることだって出来る(履歴だって消せる)わけです。
 AndroidデバイスもiOSデバイスも。Windows8時代のPCも。
 全てが驚くほど簡単に奪い取れる電子メールを鍵にしている現在。

 いまや電子メールアドレスは貴重な...とても大事な個人と結びついた鍵なのです。せめてそのパスワードはある程度複雑なものにして...定期的な変更をしてほしいと思います。
 別に専門家でなくたって。盗み聞きした情報から推測してアタックすることは出来るのですから...ご用心、ご用心。

※先日某カレー屋で食事をしていたところ、どうも帰宅途中のSEさんが自社と電話でやりとりしている現場に遭遇しまして。
 電話相手がどうにもIT音痴らしくすべて説明しないと操作ができない。
 でまぁ何かサーバーの操作をしてほしかったようなんですが...
 社名。サーバー名。IPアドレス。IDやパスワード。すべて一文字単位で説明していくわけです。これをメモするとどうなるか。
 イントラ内からしかアクセス出来ない仕組みなんだろうな...と思っていたら「そこにあるノートPCで出来るから。アダプタつないだらイーモバイルの回線出るから、社外ポータルに今からいうIDとパスワードで入って...」なんてセリフが飛び出して。
 もしかしてこれ外からアクセスするための危険なルートを口頭で暴露してないだろーかなどと。また相手の耳が遠いらしくでかい声で何度も何度も繰り返すものですから...いやはや。
 電話を切った後はSE同士でやれDMZの設定がどうのとまぁ機密暴露大会みたいになってまして。愚痴をこぼせばすべてがセキュリティに纏わる設定がらみの話。嬉しそうに自社の穴について話し合う若者を見つつ。
 どこで何を聞かれているかわからないよ君たちと。笑えない苦い顔をする出来事がありました。まぁある意味どこにでもある風景ですが...聞いてる人がそれなりに知識を持ち。悪気はなくても好奇心を優先してしまう性質の人だったら。
 ご用心、ご用心ですよ。