市販ソフトを活用して構築されたシステムは...小さな政府ならぬ小さなシステム

 今回は市販ソフト(マイクロソフトOffice)を活用した業務システムの話です。

 先日、某中堅企業のシステム部長(といっても社員80人ですからどっちかっていうと中小の小ですかね...部長も27歳と若いですし。年商はいいみたいですけれど)から相談を受けまして。
 数年前にも相談に乗っていたんですが、要約すれば「NAS」の強化とサーバーの入れ替えに関する話でした。

 NASってなーに? とい聞かれれば「ネットワークにつながった機器(パソコン)からアクセス出来るストレージ」と答えています。正式名称「Network Attached Storage」。
 ものすっごく単純化して答えれば「ファイルサーバーに特化した小さなパソコン」と思うとわかりやすいかと思います。ファイルサーバーを本格的に運用しようとすると、それだけで大量のHDDを搭載したPCを用意しなければならなくなりますが(RAIDカード等も買わないとスピードも厳しい)、安価なNASであればそれほど難しい知識がなくてもファイルサーバーが構築出来ます。
 実際、一般的なPCとは違うもののちゃんとCPUもOSも搭載されているわけですから、ひとつのPCと言ってもいいでしょう。
 私のブログでも結構人気がある記事に「LS-GLのHDDの換装」に関するシリーズがありますが、あれもNASといえばNAS。ただ、データの保全等を考えると複数のHDDを搭載して保全する方が安全です。逆に利便性だけ追及すると1台しかHDDがなくても十分活用出来ます。プライベートで使用するならUSB外付けのHDD等にデータをバックアップすればいいかと。

 大規模なファイルサーバーまでいかなくても、ある程度の容量があってHDDクラッシュ等が起きた時は大切なデータを保全したい...そんな要望に応える製品で人気があるのがバッファローのterastationシリーズ。私の仲間の間での通称は「テラステ」。なんだかSE○Aのゲーム機とPCが合体した某ハードを思い出しますがまるで違います。まぁこの通称も通じるところでしか通じないローカルなものでしょうけれど(苦笑)

 普及しているタイプは4台のHDDを搭載し、そのHDDを各種のRAID設定をして使うことが出来るものかと。小さな企業であればこのテラステにデータを保全してアクセス等で作った業務システムがあれば十分に業務運用が出来てしまえるほど。
 RAIDの構成によりますが、ミラーリングやRAID5(最新製品では6も可)等のモードにすれば複数台のHDDの同時クラッシュにもある程度は耐えられる構成も可能ですから、実力は大したものだと思います。

 法人向けなんて言われてますが、データ量の多い個人で導入するケースもそれこそたくさん。様々なシーンで活躍するNASの中では比較的安価ですし。

 

 さて、今回の相談は...というと以前導入したテラステーションに関するものでした。

 以前相談を受けた時は...実はシステム構築の会社の人と共にこの企業の電算化に取り組ませていただきました。

 今までのエクセル管理の帳簿等をアクセスに集約する。使い勝手は今までのものをある程度踏襲しつつ...それでいてデータ保全はきっちりとしたい。それが私の提案したやり方でした。

 それまでは単一ドライブのNASにブック共有をかけたエクセルファイルを置いて多人数でそのファイルを書き換えていたようなんですが...商売がうまくいくにしたがってそれではきつくなってきました。データの信頼性。ファイルの破損...そんなものに悩んでいては業務に支障が出るというものです。

 当時、IBMやNECといった大手企業に(それこそ大塚商会のような商社にも)見積もりを出していただいたようなんですが...企業規模に見合わない見積もりに社内が騒然となったようです。後々になってから実際その見積書等を見ましたが...要件定義の段階で希望を聞くだけ聞いて設定すれば、まぁ確かにそのぐらいの金額になるかな...というものでIT系の人間であれば「まぁ妥当っちゃ打倒かな」という値段ではありました。IBMだけちょっととびぬけてましたけどね(^^;

 とはいえ、小さな会社には小さな会社なりのシステム構築というのが私の心情。身の丈に合わない経費をかけてシステム化しても効果より経費の方が上回ってしまいます。それでは意味がない。

 当時たまたま知人の紹介でこの会社のシステム課長(彼は当時課長だった)の相談を受けた際になんとかお力になろうと力を注ぐことになりました。

 身の丈にあった安価なシステムでまず社内運用を確立してからの方がいいだろうという私の提案は非常に好意的に受け入れていただけたようです。
 幸い当時から仲の良かったシステム開発会社の社長さんもこのプロジェクトに興味を示してくれて、スムーズに話が進んだのが幸いでした。ほぼ自分のコネだけでこの案件を処理したのを思い出します。まぁ、それは今でもあまり変わってないか...仕事ではなくプライベートで相談に乗るときはだいたいこんな感じですし...

 このプロジェクトの骨格は先ほど書いた通り。
 「マイクロソフトのOfficeを活用して業務を円滑化するシステムを構築する」でした。その中核にあったのが...最初に説明したバッファローのテラステだったんですね(笑)
 相談に乗ってくれたソフトハウスにはアクセスの作り込みに精通したプログラマーさんがいまして、以前から「スクラッチで業務システムを開発するより、安価なパッケージ商品にした方がいい職種はないかねぇ?」なんて話をしていましたので、あっさりと巻き込むことに成功しました。今でも付き合いがありますが、やはり「市販パッケージとクラウドの組み合わせで業務を支援する」ことが好きだと言ってました。会社の儲けにあまり貢献してないんじゃないか、彼は(^^;


 この会社の業務を詳しく書くことはできませんが、倉庫を持たない物流業というか、貿易業というか...必要なら取引先の倉庫等を使って商品を保存したりもしますし、客の注文に合わせて商品調達したりもしてますし...国内貿易企業みたいな、微妙に市販の業務パッケージソフトと合わない仕事をしてまして。
 かと言ってこの業務をすべて取り込んでシステム化するとなると...かなりの大規模システムになってしまいます。流通業務と商社業務を足してもまだ足りないですからね...

 そこで、今までの業務をまず見直すことを提案しました。最低限...煩雑であった帳票類や業務ルールをまずある程度すっきりしてもらいます。実はこの作業が最も時間がかかりました。まぁ、企業でシステム運用を担当してる人ならわかると思いますが、人はなかなか慣れ親しんだものから移行出来ないものでして(^^;

 そこは担当していたシステム課長に任せ、こちらは簡略化された帳票をもとに入力部分と出力部分の定義を行います。今まではエクセルに多人数で入力していたわけですが、これを入力・確認画面を設けてアクセスで再現しました。とはいえ完全再現は無理なので、入力項目とその表示位置を違和感ないように設定しただけですが、業務担当のおばちゃん達には結構評判がよかったのを覚えています。むしろわかりやすくなったと。
 簡略化されたエクセルの表の出来がよかったんでしょうね(そのエクセルの表をモデルにアクセスは設定した)。

 また、アウトプットも整理しまして。帳票だけでなく、CSVに出せた方がいいものはCSVに。メールを自動送信してくれた方がいいものはメールに...といろいろと。Windowsならではですね。

 インプットとアウトプットを整理したり拡充したりするだけでも業務は効率化されるものです。ボタン一発でoutlookが立ち上がって最低限の文章が入ったメールが出来上がるとか...それだけでも十分に実用性があがるんじゃないかと。当時からの私の考えです。なぜか本業に活かせないのは...責任者の地位についてなかったり、横やりがあったりとまぁ、よくある話なんですけれど(苦笑)

 次に業務の把握。これは私が担当しまして、業務フローとシステムフローを作成しました。...といえば恰好はいいんですが、大ざっぱに作ったものをソフトハウスに投げて、ディスカッションして精度をあげていったので最初のたたき台だけですね(苦笑)
 これがしっかりしてないと数字が合わなくなってしまいます。業務で使用する数字をきちんと出力出来ないとシステムとして非常に問題があるものになってしまいますから。

 半年程度の期間で構築したこのシステムは非常にコンパクトなものになりました。
「サーバー1台。テラステ1台」を導入するだけでハードはおしまい。
 ソフトに関しては「全員分のOffice2003をボリュームライセンス」で購入する必要があったのですが、そこはPC導入時に購入していてくれたので助かりました。(たぶん商社の言われるがままに導入したんでしょうけど(笑))

 あとはアクセス上に構築したソフトの代金なんですが、今後パッケージビジネスとして商品展開したいということで、ソフトハウス側に著作権等を持たせる契約で恐ろしく安価にすませることに成功。使う側は安価にいいものを。作る側はコストを抑えつつパッケージビジネスの足掛かりとテストをしてくれる企業を手に入れているわけで、双方にとってうまみのある話になったようです。...言ってみるもんだなぁと当時は思いましたが、実際はそうそう簡単なものではなく。いろいろとありつつ、継続してるビジネスパートナーとして今は落ち着いているようです。

 このシステム。どのぐらい価格差があったかというと、当初さまざまな会社が提案してきた費用はおよそ「5000万円」程度のもの(一社だけ1億超えてましたが、あそこはいつものことなので割愛)。今回私が提案した方式では500万円程度にこれを圧縮しています。(サーバーもWindowsサーバーで安価にしてますし。クライアント管理もアクティヴディレクトリー設定して終了)


 で、そのシステムも5年以上経過しましたから、さすがにハードウェアがきつくなってきました。また、当時はストレージとして500Gもあれば10年は持ちそうな話でしたので、500Gのミラーリング構成で1Tのテラステを導入していたんですが...どう急成長したんだか、結構容量がきつきつに。


 それで冒頭の相談と相成りました(^^)


 基本システムはその後も順調にバージョンアップを重ね(ちゃんとパッケージにもなってるようです。とはいっても店頭に置いてあるようなソフトではありませんが。今回紹介している会社でモデルデータを取って改良を続けたため、バージョンアップ費用は保守費用だけでよいということになっていたという。そりゃ安価だわ...こういう形の開発形態もありだろうと私も思います。まだまだあまり見かけない形ですけれど。

 なので、今回はサーバーの入れ替えとテラステの入れ替えを...とすぐに話がまとまりまして。サーバーはHPのものを、テラステは最新のもので最大容量のものを導入することにしました。

 サーバーはどのモデルか確認するのを忘れてきましたが(なんせWEBでカスタマイズして注文しちゃったもので。価格的に安価だったので...うろ覚えながらたぶんHP ProLiant ML330 G6かな...)、導入したテラステはTS-XH8.0TL/R6というモデル。これを4TのミラーリングにするかRAID5で運用するか、という話だったのですが...どこでどう間違ったのかそのうえでもう一台購入して夜間バッチでミラーリングすることに(^^; まぁ、ハードの代金も20万以下で購入出来る店がありますから、今のあの会社にとっては投資として悪くない判断なのでしょう。

 先日そのハードの入れ替えに立ち会ってきましたが、もともと女性社員用のロッカールームがあった場所が手狭になったとかで空いてまして、専用の場所まで設けられてました。システム化が業績を押し上げた...わけでもないんでしょうが、この不況でよくがんばってるな...と私はそんなことばかり考えていました。

 ハード入れ替えたら...これがまた早い(^^; テラステのスピードも段違いです。

 実は来年度に備えてサーバーだけ一足早くWindows server2008R2へと移行するのも兼ねてました(最初に導入したDELLのサーバーの延長保守が切れたのもありますが)。来年度はクライアントPCのリースも終わるため、そのタイミングで全社員のPCのWindows7への移行も控えています。
 なので業務ソフトだけでも今のうちにバージョンアップしておきたかったようです。段階移行のひとつ...なんて側面もあったんですね。まぁ、いつまでもWindowsXPってわけにもいかなくなってきたんでしょう。

 なので今回はハードの入れ替えとともに「システムを最新Windows server上で動くものにする」「Office2010への対応」の準備も兼ねています。幸い業務システムはパッケージソフトとして順調に進歩してたのでOffice2010はそもそも対応してくれてました。

 まぁ、この会社の現場ではまだOffice2003なんですけれど。来年のPC移行とともに一斉にクライアントPCをWindows7+Office2010へと切り替えるそうです。土日を利用して講習会を行うとかで、自宅でパソコンを買ってまごついてる人もぜひどうぞ!なんて張り紙がしてありました。うん。なんか見ててなごんだな...あれは(^^)

 実際、新しいPCを買ってまごついてる人もいるので、会社内でそういった教室というか、教えるシーンがあってもいいのかなと思います。後々導入することになるのなら、なおさら。

 そんなわけで私としては「小さなシステム」の活用で会社の業績が伸びてから「スクラッチでの開発」に移行してもいいと思うのです。
 最初から気合いれてシステム作るとたいてい失敗しますので...大規模であればあるほど余計に(苦笑)
 今回はそんな実例のひとつをご紹介しました。ただし、毎回うまくいくものではないので、このケースは「たまたま結果的にうまくいっただけ」だと思ってる側面もあります。なかなか理想通りにはいかず、紆余曲折あってこの結果なので...

 200名ぐらいまでの会社ならば、きちんとした業務管理システムを作成するより、業務効率補助システムとして作ってあげた方が業務が回る...そんな実例でもあったかな...と思います。
 システム部長の話では来年のバージョンアップから、支援の文字がとれて晴れて基幹業務ソフトと名乗るようですけれど。どうなることやら(^^;

 

 


余談

 で、今回私は大した働きをしてないんですが...

 古いテラステーションをもらえることになりまして。
 HDDの調子が悪いとは聞いてたんですが、もらってからわかったのが...
 フロントのカギが閉まったままカギをなくしてる(T_T)

 テラステーションには防犯のためフロントカバーにカギがかかるようになっているのですが、そのカギをなくしてしまったようなんですね。

 新しいテラステのカギを借りようかとも思ったんですが...今後の運用を考えるとちょっと面倒。

 変人窟さんからはTwitterで「もう一個買えばカギは同じだからまったく問題はない」などと言われる始末。日本で一番買っている個人なんじゃないだろうか、あの方は...(お会いしたことないんですよね。いつもいつも馴れ馴れしくてすいません(汗))

 とはいえそこはAmazonの悪魔。悪魔らしいやり方でこれを突破することにします。


「テラステの鍵を破壊せよ...2T HDDへの換装と鍵の解除」へ続きます(^^;