AMDの逆襲の一手「AM3+」...ついにその姿を見せる「Bulldozer」

 AMDのプラットフォームといえば息の長いマザーボード(チップセットとかCPUソケットって言ってもいいかな)も魅力のひとつ(例外もありますが)。
 その息の長さが特に顕著なのが939ソケット(以下939)と現在も使用され続けているAM2+ソケット(以下AM2+)。
 939はまぁ通称「変態マザー」のおかげで現在も使用されていますが...さすがに古い(^^;

(とはいえ4400+辺りのCPUと組み合わせればWindows7だろうと使える「現役」環境なんですが)

 

 一方AM2+は2007年の終わり頃登場したソケットです。
 これも登場から考えるとすでに4年ほど経過していますから...かなり長く使われているプラットフォーム。チップセットもいくつか出て進化していますがソケットとしては変わっていません。


 +とついてますが、そもそものAM2ソケットは冒頭で書いた939を置き換えるものとして登場したものでした。
 主な変更点は...AM2の時はユーザーからしてみれば「CPUが今までと違うソケットでメモリがDDRからDDR2に変わった」ぐらいの認識だったかと。

 初期はCPUのスピードが大きく上がる等がなかったため本当にそんなイメージ。

 このAM2が2006年からAMDのスタンダードCPUソケットになりまして、DDR2世代を切り開いて行きます(939ソケット時代はDDR世代)


 そして2007年。AM2+ソケットと次世代CPUであるPhenomがついに発表されます。


 このAM2+はいずれくるAM3ソケット用のCPUが動くという触れ込みで登場しました。

 PhenomはそのAM3時代の幕開けを飾る記念すべきCPU。

 ...まぁいろいろあって最初こそ躓いたものの(苦笑)Phenomは「なんちゃってじゃないネイティヴQuadコア」という看板はやはり面白いものでした。
 AMDファンは...

 

「まぁ新CPUがいずれ使えるなら今はこのPhenomとAM2+でOK!」

 

と思ったかどうか。それはわかりませんが...それなりに売れていたかと。

 そして...予告から2年近くの時が過ぎ...

 

 「それ」」はようやく登場します。

 時に2009年...名器PhenomⅡを引っ提げてAM3が登場しました。これが今も現行機としてAMDを引っ張るプラットフォームです。
 PhenomⅡはPhenomの弱点を払拭し、よく高速に。より発熱が少ないCPUとして登場しました。今でも現行フラグシップ。当初から6コアのCPUの登場が予告されるなど華やかな発表がなされました。

 が、ちょっとここが面白くて。最初に出たPhenomⅡは「AM2+用」でした。メモリもDDR2に対応。先行してAM2+に投入されたんですね(^^)
 で、やや送れて(一月ちょいぐらい?)AM3対応のCPUが発表・発売されました。ここからはAM2+とAM3に両対応(メモリもDDR2とDDR3に対応している)したCPUに変更されます。

 そしてメモリの主軸がDDR2からDDR3に移ろうという時になってもAM2+はまだ現役。AM2+とDDR3の組み合わせのマザーが市場には出て来てはいましたが...

 メモリへの対応はCPUで決まるので両対応しているAM3対応CPUはAM2+とDDR2の組み合わせでも動いたからまたおもしろい。

 もちろん主軸は徐々にAM3とDDR3の組み合わせに移行して行きましたが...どうしてAM2+とDDR2の組み合わせも使えたわけで。このあたりが息の長さの秘訣かもしれません(^^)

 チップセットの違いやリビジョンの違いなどもあって完全な互換性を保持...とは行きませんでしたが、メーカー製ならその辺りは吸収出来る範囲でしたし...自作ユーザーはそもそもその程度のことは「楽しみ」のひとつと思える趣味人が多かったのか。
 率先して「あのマザーだと動く、このマザーだとダメ」など人柱に走っていた記憶があります(^^;

 

 話がそれましたがAM2+は「AMD3用に作られたCPUとAM2用に作られたCPUの両方が(ほぼ)使える」という大変息が長くて魅力的なものになりました。もちろんAM3なCPU本来の性能が全て発揮出来るわけでもないんですが、「使える」のと「使えない」のとではかなりの差があります。

 多少性能が落ちようとも最新CPUが使える!!というのは非常に魅力的な事ですから。

 中にはAM2+マザーにAM2時代のCPUを搭載して時期を引っ張って...CPUを初期Phenom2に換装し、再び引っ張るだけ引っ張って次のタイミングでマザーとメモリを変更...という段階移行を目論んだ人もいました。

 その目論みのターゲットはAM3+と新型CPU。

 

 その現行AM3の次...AM3+がついにお目見えしましたのです(^^)

 このAM3+の特徴はずばり「既存CPUと新CPUへの両対応」です。そう、AM2+と同じですね(^^)
 このCPUが噂の「Bulldozer」になります。(アーキテクチャ名にしてコードネームで実際のCPUの名前はまだ未定です)

 今回はメモリ規格の変更はなく現行のDDR3のまま。これもAM2+と一緒。

 AM3環境で現行Phenomシリーズを使っている人はマザーとCPUの交換で最新環境にいけます。この辺りはINTELの1155や1156(ちょっと前のi7やi5と今絶賛発売再開中のSandybridgeのソケットのことです)と同じですかね。
 次のソケットがAM4になるかどうかわからないけれど。予想ではDDR4という新規格のメモリとの組み合わせになるだろうと言われています。


 ここまで書いてきたように...このAM3+はまさにAM2+の再来です。
 既存チップセットを活用して安定した環境を用意。メーカーはスムーズに新CPU搭載のPCを作ることが出来て、自作ユーザーはタイミング次第ですが買い換えタイミングを引っ張ったり、現行CPUと新型チップセットの組み合わせでしばらく運用してから様子を見る...なんてことも出来なくはない。


 CPUソケットが変わったとはいえAM3のCPUが使えるのは確定なので(最近のものなら問題ないでしょう)、先を見てマザーだけ新しいのにしとこうかな?というのもアリなわけです。
 中途半端っちゃ中途半端なんですが、考え方ひとつで「おいしい」ものになったりします。AM3だって6コアのPhenomⅡが安価でとてもお買い得なわけで。この辺りはAMDファンの楽しみな部分かと(^^)

 プラットフォームの変更の時期というのはメーカーを超えることも可能なわけで、AMDからINTELにする人もいれば(SandyやIvyに魅力を感じる人はそうでしょう)、PhenomⅡや今回の「Bulldozer」に魅力を感じる人(少しまてば最強CPUがINTELのミドルレンジの価格帯まで落ちてしまうこともあるので価格に敏感なファンも多い)はINTELからAMDへと移行することが出来ます。


 ようやく両社のDDR3時代の最終段階に来た感じなのである意味一番選択肢が多くて楽しい時期なんじゃないでしょうか(自作ユーザーのみかもしれませんが)。

 

 で、最後に肝心の「Bulldozer」の話。

 今までのPhenomシリーズはK10コアと呼ばれる心臓部を持ったCPUでした。

 これはこれでなかなかに面白いCPUコア(CPUの中核にあたるもの。CPUが頭だとすればコアは脳みそだとでも思えばわかりやすいかと。計算等してくれる重要な部分です)でしたが、今回はそのCPUコアアーキテクチャも変わります。
 

 INTELのCore2シリーズとi7などのシリーズも中身はいろいろ変わっていますがCPUアーキテクチヤ的にはCoreアーキテクチャ。AMDでいえばPhenomやPhenom2、現行のAthlonX4などはK10コアで一貫していたりします。

 939からAM2になる頃にK8からK10にアーキテクチャの変更がありましたが、AMDはそれ以来ずっとK10コアでした。ですから...実に久しぶりのオールリニューアル。
 AMDファン的には「待ってました」という「新型」のCPUの登場となります。

 詳しくはPCWatchの記事を読むといいと思います。該当記事へのリンクはこちら。

 

後藤弘茂のWeekly海外ニュース(ここまで見えたAMDの次期CPU「Bulldozer」)

 

 わからない人にはとても難しい記事かもしれませんが、わかりやすくしつつ乱暴にまとめると...

・2コアのCPUモジュールを複数使って構成したCPUで、現在発表のデザイン以外にもモジュールの組み合わせでいろいろなCPUを作ることも出来る(まだ先の話ですが)。
・マルチスレッド(複数のCPUで効率よく仕事させる仕組みだと思ってください)で性能が強力に発揮される構成。
・その分シングルスレッドだと効率は落ちるけれどCPUの動作周波数が今までよりも上げられるのでそこでカバー出来る。
・消費電力はさらに控えめ。発熱もこのクラスのCPUとしてはかなり頑張ってる感じ。
・製造単価を下げる工夫がしてあるためCPUの価格もある程度押さえることが出来る(と言われてますが実際どうかはまだわかりませんがAMDならきっと安価にてくれるでしょう)。

 といったところですか。

 もっと乱暴に言うと...

 

「ちょいと大きめになったけど、熱はあんまりでないし電気も食わない、これから流行ると思うプログラムの仕組みだといっそう早く動くよ! 多少落ちた性能はCPUのスピードあげるから大丈夫だよ!」

 というCPUかな、と。

 ...乱暴にまとめすぎたかもしれませんが、まぁだいたいあってるでしょう(汗

 実はライバルINTELに最も警戒されたAMDの次期CPUがこの「Bulldozer」です。

 AMDは他にも比較的小さなノート用などに面白いCPUとかAPU(GPU+CPUの商品。Fusionと呼ばれていたもの)などを投入していますが、今度のCPUは利益率の高いサーバー市場と性能に敏感なPCユーザーに「お待たせしました」と投入するものになります。
 本来の性能はDDR4が出回ってからでないと出せないかもしれませんが、DDR3とて性能はそれほど低くなく。「あとでCPUだけ載せ替えて安価にアップデート出来る」保証があるのは大きい。(初期のDDR4がどれだけパフォーマンスが出るかわからないですし)

 AM3+はそのアップグレードパスを持っています。
 メモリは先日書いた記事でもいいましたが出始めたばかりの頃はやはり割高です。
 普及してからマザーごと買い換えてもいいですし、そのまま使い続けてもいい。

 ハイパワー&省電力というのは非常に「熱い」売り文句なので期待のCPUでもあります。

 とはいえマルチスレッドを活かすアプリはこれから増えるとは思うので...最新OSと最新アプリで武装する必要がありそうですけれど(笑)
 ハードと共にソフトも最新にしていかないと性能が発揮出来ないこともあるのは覚えておいたほうがいいかも。具体的には...Windows7と最新バージョンのソフトでしょうか。XPはみんな使いたいと思っていてもPC業界では「そろそろもう休ませてあげてください。XPちゃんは限界です」とでも言いたげな風情ですから...まぁ仕方ありません(苦笑)

 実際にはBulldozerコアはかなり応用が効きそうな感じですから、今後はコア数を増減させて性能を調節することても出来るでしょうし...いろいろな派生製品も出てきそう。(もともと2コアで1セットの構造ですから、それを1個とか2個とかにして別機能を搭載してみるとか)
 あるいはコアをへららしてGPUを搭載することも出来るんじゃないかと(今のままでは無理でもコアの改良とかでいろいろ企んできそう。APUのノウハウもたまってくれば次の世代にはまたいろいろと)。

 まぁ、あえてBulldozerでなくても今のAMDは複数のコアをもってますからそこから何か面白いものが出てきそうな予感もあります。でも一番強力なのは...ね。

 さっきも書きましたが真の力はDDR4が出たところで見せつけられるのかもしれませんが、逆にいえば現在のDDR3で「食べられる果実」が出るということでもあり。

 IntelのIvybridge辺りと闘うことになりそうなこのBulldozer。今年の年末あたりから慌ただしく様々な情報が出ることでしょう。

 ただAMDの初物は毎回なんかしら「やらかす」ので...今回はチップセットは安心っぽいですが、CPUがまだまだ未知数。発売されて様々な評価が出てから買うのもいいかな?と。そのトラブルも含めて楽しめるのが自作の醍醐味かもしれませんが(笑)
 INTELのIvybridgeやその次のHaswell(INTELが計画しているCoreアーキテクチャの次の世代のCPUと言われています)も大変楽しみですが、AMDもまた新しい世代の準備を始めています。

 こなれていて安心...そして値段も安価ですぐに手に入る現行世代か。
 先々出てくるものを待つか。

 それを考えると今回のAM3+はなかなか面白いと思います。真ん中の橋渡し。
 BulldozerがAMDの「逆襲の一撃」ならばAM3+はその橋頭堡。これからいろいろと明らかになるAMDの新CPU。
 ますますPC業界は騒がしくなってきそうです。
 とはいえPCの買い換えは「欲しい時が買い時」なのも事実なんですけれどね!!

 その名の通りブルドーザーのパワフルさを見せつけて、今のPC環境をガーーーーーッと一気にいいものにしてくれるといいな...なんて思ってます。

 

 

余談


 趣味の問題もありますが私はK10コアがどうも好きになれませんで。K8コアは大好きだというのに。なんでなんですかね...アーキテクチャも悪くないのに。
 そんな私ですが...ついにいろいろ発表されて情報がそろってくると...今回のBulldozerには「おお!?そうくるのか」という部分が非常に多くて、わくわく感がたまりません。
 順当に成熟するIvybridgeも欲しいのですが、このBulldozerを搭載したCPUも検討材料としたいと思ってたり。

 

 

こっからはさらに余談の上古い世代の人向け


 日頃SandybridgeやIvybridgeの記事を載せているし公表しているPCの構成を見てもINTELばかりなので「おまえはINTELの回し者か」と言われたりもするんですが...
 私はずっとAMDのファンだったりします。焼き鳥も何個か作りましたし何個Duronのコアを割ったか。ビデオカードはRadeonばかり買いますし、わりと以前からずーっとファンなのは間違いないのです。
 以前はメインPCはINTEL、サブPCはAMDとCPUすら使い分けていましたし(AMDの方がゲームを遊ぶのに適していた時期も長かったですし)。初期は両方AMDだったことも。
 もっと前に戻るとサイリックスの大ファンだったこともありますし、MediaGXのPCで未来を感じたりしてたりもしましたし。(今ではAMDの組み込みにその血脈は生きてます)
 チップセットといえばみんながINTEL鉄板。でもAMDならVIAとかnvidiaとか言ってる中「なにいってんだSISが最強だろうよ。シングルチップなめんな」とか言ってたりとか。そう、私はどうもマニアックな方向に突っ走っていたようで...
 ビデオカードも「サブレなめんなよ(Xabre...本来の名前はセイバー。SISが意地の一発として出したビデオチップで、当時としては性能は言うほど低くない。低価格製品の一角としてそれなりに市場に出ました。いましばらくSISがGPU市場にいたらと悔し涙を...DirectX9前夜の話ですけれど。私の仲間内ではサブレと呼んでいたんです(笑))」とかですね。まぁスピンアウトしたXGIは再びSISに買収されたので、サーバー向きには血脈が残りそうなんですけれど...自作市場ではもう見れないのかなぁ...SIS315とか一時代を作っていたのに...昨年まではPCI用のSavage4とか2000とかVIRDEシリーズとかもあったんですがサーバー機のパーツして旅立っていってしまったので(PCIで使えるビデオカードの需要があって)、今はマイナーパーツほとんどないんですけれど。寂しい限りです。YAMAHA724とか744ならまだ数枚あるけれど(なんでとってあるのかは謎)。
 青年時代かららむしろ互換チップセットや互換CPU大好きな血が濃くて、それらの商品を買って自分の道を突き進んできたんですが...一時期よりどうしても仕事の関係と使用ソフトの関係でメインPCはINTELのCPUを使わざるを得なくなり...ゲームには最後に残った互換CPUの大御所AMDを使用していました。(その前はAthlonがメインでサブがDuronとかでしたし...Athlon2500+なバートンさんとか苺皿でファンレスとか...今でも使えるCPUだよな...ソケットAなのに)
 その後パーツのスライドを行うようになり、メインPCのリニューアルの際にそっくり中身をセカンドPCに移植するようになったためINTELだらけとなってしまいましたが(苦笑)、他人のPCを組んだりしてAMDの環境も歴代ほぼ全て触っていたりします。最近もX6なPhenomⅡで他人のPCをリニューアルしたりしてますし...880Gとか内蔵GPUなのにやるな~とかいろいろ思ってたりしたんです。実は。こっそり690Gの頃とかAMD環境作ったりしてますし。作ってある程度遊んだらそのPCをまるごと売っちゃったりしてるので手元にないんですけれど(苦笑)790GXとか大好きなんですけどねー。
 根底はあれだろうな...PC-9801RXシリーズにサイリックスのCPU突っ込んだ辺りからだよな...あれで開眼したんだ。たぶん。で、EPSONの互換機触ってセカンドソースのCPU設計のPCとかも触って...ずいぶん古い話だな(汗
 そもそもZ80だってセカンドソース品しか触ってないもんなぁ...ま、まぁいいか。

 どんだけマイナー好きだよと人には突っ込まれますが、だからこそ笑えない苦労と余計なサポートスキルがあがってきた歴史も...電源もマイナーメーカーばかり好んできたのでだいたいの傾向がわかってしまうとか悲しい部分も...あれ、なんだろう涙が(泣)

 まぁその辺りのスキルが根底にあってこそ他人のPCもある程度事前準備なしで修理したり修復したり出来るわけで。無駄な経験ではなかったと思いたいんですけれど...

 まぁ最後の余談は本当に余談なので無視していただければ。