悲鳴を上げ血を流しながら続ける悲しいマラソン...通信キャリアのチキンレース

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「パケット規制なんざ過当競争で値下げし過ぎてどうにもならんし設備投資もしたくないから逃げてるだけだろ? 数%のユーザーなんてきちんと把握してないだろ?」

 ...私のこの乱暴な言葉にまともに答えてくれた営業がいたのは唯一 UQ WiMAXだけだった。


 -------今回はWiMAX導入の経緯とその理由。そして導入にあたっていろいろ調べたりインタビューした資料から記事を起こしてみました。


※今回の記事はあくまで私個人の考えとコネによる取材に基づくもので、連想される会社を誹謗中傷する意図で書いているものではありません。あくまでも個人ブログの個人的な記事ですが、読んで不快になられましたらお詫びいたします。ご了承のうえでお読みいただければ幸いです。


 先日旧型MAcBooKAir(以下MBA)を購入した後切々とモバイルルーターの必然性を痛感しました。公衆無線LANを利用していたのですがとても不便。というかだいぶ不便。なんというか...必要なものが欠けている感じ。

 以前からPHSやらイーモバイルやらと利用してきた経緯もありここは通信料金の見直しをかけてモバイルルーターを導入しようと。いろいろ検討していたのですが、そうこうしているうちにどうも不安がよぎってくる。

 どの通信ベンダーも

「パケットが増えてきついです規制します値上げします帯域制限します一部の数%のユーザーが使いすぎるのがいけないんです」

寿限無の呪文のように繰り返しはじめている最近。
 実際インフラ増強にに対して需要増の勢いが多いのは確かで事情はわかるのですけれど。

 結局のところある程度の上限を設けるのはまぁありかな? とは思うのですが、今までさんざん「使い放題だよ!早いよ!自宅に回線いれるより便利だよ!」と売っておいて「いやー、設備投資とか馬鹿になんないからやっぱやめるわ」と途中からはしごをはずような真似もインフラを商売とする会社としてどうなんだろうと。
 まだ仮定の話とはいえ各社ある程度の通信量で上限を設ける方向で検討をしているのは報道の通りで。
 アメリカあたりじゃ3G回線に関してはすでに開始。まぁAT&Tなんで向こうの人からしたら「まぁAT&Tの回線使ってる俺らがわるいよな」と冗談にされちゃったりしてますが(笑)


 きちんとそのあたりのデータも公開して

「このような状態です。設備投資もLTEなどの先の規格も含めればあまり現在はしたくないのです。当面は上限設定などして乗り切り、ユーザーによりよいサービスを提供していきます。
負担となっている数%のユーザーは把握していますので早期に解約していただき皆様にはご負担をかけません。
今後は契約時にその部分を強くうたいますのでそのようなユーザー様には把握次第警告します。
改善が見られなければサービスを停止する等して他のお客様には迷惑をおかけしません」

とでも言ってくれればユーザー側も「ああそうか」と納得も出来ようというもの。
 でもそんな言葉は聞いたことないんですよね。

 各社がよく言う「数%のヘビーな使い方をする一部のユーザー」とはなんなのか。誰なのか。その人たちを規制するなり解約するなりすれば解決するのか? 実は言い訳なんじゃないか? そもそもトラフィックが増えるの承知でスマートフォンを散々宣伝してたんじゃないのか? わずかな人がそれだけのデータ転送を行ってるのを指をくわえて見てるだけなのか? などなどずっと思っていた疑問が今回のモバイルルーターの検討中に大爆発。

 幸い昔の勤め先が勤め先だったのでしたのでD○C○M○やらA○やら通信キャリアの社員とはつながりが持てます(かつてはそういう会社に出向してプログラム組んでたわけですし)。イーモバ○ルとUQ WiMAXは知り合いもいないところですが、営業支援に来ている若い営業さんにでも意見をぶつけて聞いてみようかな...と。

 そこで冒頭のセリフを各社の営業(販売担当とか代理店の人ではない)やつてのある知り合いにぶつけて応えを引き出してみたんですが...結果は最初に書いた通り。

 d○c○m○はちょっと偉い人に聞いたのがいけなかったのか(コネがある人が出世しちゃっていた)、上から目線過ぎて会話が成立しなかった。まるでスマートホンはやっかいものだけどパケット代とかである程度の金とユーザー数が入るからやってるだけ...他社との差別化のためにやってるだけ...そんな印象。まぁもともと役人みたいな人だったのでこれは聞いた相手が悪かったかも。
 ○UはWiMAXや無線LANの活用を力説していましたが、3G回線に関しては規制は当たり前だといわんばかり(パケット使いすぎる人がいけないスマートフォンの普及は想定外の事態をもたらしたうんぬん)。
 ソ○トバ○クは...悲しい目で「わかりますよね?」と言われたのでわかるしかなかった(iPhoneユーザーでなくともユーザーならよくわかる。そもそも基盤がぜい弱なのは周知の事実。その分安さで魅力を出してるわけで)。
 イーモバ○ルは営業さんをついに捕まえることができませんでした。機会があれば聞いてみたいですが。

 そしてUQ WiMAXは...

「規制したくないですね。うちは対策も含めてWiMAX2とかやりますが加入者の増加ペース次第です。ギリギリまで踏みとどまりたい。たぶんうちの社長はやってくれます。だめならほんと謝って...価格とか他の部分含めていいものを提供します」(原文ママ)

 なんで末端の営業社員が力を込めてここまで言い切れるのかというほど丁寧で真摯。そして真剣。
 この時点でかなり好感度が高くなったのは事実。昨年も似たような質問をしているんですが(別の方です)おおむね似たような返事が返ってきています。(当時の社長は現在のKDDIの社長なのでなかなか面白い未来に進んでいるようですが)

 自社商品への知識と提供するサービスへの自信、そして長所と短所を把握しているというのは営業としてとてもうれしい相手です。実際エリアの狭さや建物内での弱さ等もきちんと説明してくれましたし。

 というかその他の会社の人の説明は「うちの回線で大量に通信するのは想定外。スマホ使うなら金もっと払ってもらいたい。モバイルルーターも便利なんだからもっと金を出せ」と言ってるようにも聞こえてちょっとなんだかなぁという気分にもなりましたが。記事に書いてない各社の本音の言葉もあったわけで...今回は書きませんが。
 正直インフラやってる会社の人間の言葉として聞きたくはなかった...

「WiMAXは携帯とかスマートフォンを売ってるんじゃないんですよ。インフラービスを提供しているんです。そういう意味ではライバルはDOCOMOではなくNTT。AUではなくKDDI(まぁブランドはAUですが)なんですよ」
...と笑って言っていたのが印象的でした。
 まだ勝負になってないかもしれませんが、まぁ見ててくださいと。イーモバイルさんもそうでしょうが、これからぐわっと行きますよと言われるとそれはそれでうまいこと言う口だなぁさすが営業...と変な関心をしたりも。
 営業トークだとしても他社との差が大きく耳に気持ちいい。伸びていく会社の営業さんとはこういうものなのかもしれませんが。実際はかなり苦しいのが本音っぽいですがそこはうまく隠されてしまいました。


 今回モバイルルーターを検討するにあたっていろいろ調べましたが...そこにあるのはわかってても引けないチキンレースに参加している通信キャリアの姿でした。
 過当競争の果てにスマートフォンなら契約が取れる。むしろスマートフォンブームをみんなで作り上げてしまったから売れるのはどうしてもスマートフォン主体。
 他社に負けるわけにはいかないからどんどん通信量が多くて通信も高速な機種を投入する。
 そして売りまくる。ますます自社の通信基盤は逼迫していく。でもやめられない。
 ついには増えるトラフィックに悲鳴を上げる。
 今更値上げもままならず...某かの理由をみつけてそこにすがる。
 結局はわかっていた結末に向かって走り続ける。最終的には言い訳をして逃げ口上の後ユーザーに環境の変化を受け入れさせる。

 なんとなく日本人らしいやり方ですがインフラに関わる企業にはやってほしくはないものです。
 実際は違うというのなら...そうでないときちんと説明しなければユーザーには伝わりません。
 一応、そうじゃないんだよ? という話は個人的には聞いていますが、企業としてきちんと発信している情報ではありません。先に書いた彼らの本音の言葉と共にあくまで私個人への言葉でしかないものですから。


 そんな訳で私は好感をもったWiMAXの導入を検討して...最終的に導入に踏み切りました。
 購入した時の話やその使用感などはまた別の記事で。

 それにしても今のこの事態。北米でiPhoneが出たときからいろんな人が予測していたし警告していたのに...どうしてこうなってしまったのか。
 通信インフラもインフラ。そこを担う会社があまりに営利主義に走り過ぎたり...逆に役人化してしまったりするのもよくはない気がするのです。ITの末端に携わるものとしては少しばかり悲しい時代になってしまったかな...そんな気がしています。