オレオレ詐欺の顛末は

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 7/19日のこと。
 仕事中に突然の焦燥感というか「嫌な感じ」に襲われた。
 これは昨年母が脳梗塞で倒れた時にも感じたもので、何か身内に起きているのではないか...あるいは友人に不幸でも...といった感覚。
 第六感とか虫の知らせとか超常的なものとは思ってなくて、たんなる気のせいだろうけれど、いい機会だから家族に連絡した方がいいんじゃない?と思えというきっかけかなんかだと思ってるんたけど、背筋に冷たいものは走るしこれはもうなんかおかしいなと。
 離席して母に電話をいれる。
 ...出ない。
 2回目をかける。
 出たが、どうも様子がおかしい。
「あんなXXXX(私の本名)かい?あれ?今かけた?」
 当然さっきかけたのだからかけたと答えると、突然電話の声が遠くなりぼそぼそ言ったかと思うと、電話が切られた。
 そう。
 まさにこの時。
 母は私の携帯の背後で「オレオレ詐欺」の電話を受けていたのである。

 この時のことをTwitterにメモっていた。


 こんな次第である。
 どうも電話の裏で、別の誰かと通話しているし、何度もこちらの名前を確認してくる。
 そこで、
「こんな愉快な馬鹿息子は一人しかいないが、誰と話してるんだ?」
 と聞いたところ
「あんたから今電話が入ってる」
 などと言う。
「お袋、それはオレオレ詐欺だ。あんたの愉快でどうしようもない馬鹿息子はここに一人だけだ」
 そう言ったところ母親が携帯から離れて
「あんたいい加減にしなさいよ!」
 と怒鳴って、固定電話を切ったことがわかった。

 嫌な予感は当たっていたのである。
 
 母に詳しく聞いてみたところ。

1.固定電話に電話があった。
2.鞄に財布と携帯と書類をいれていたんだが、それを無くしてしまった。
3.重要な書類で大変まずい。
4.とりあえず動けないし来てくれないか

 というようなやりとりをしていたらしい。ちょうどそのメモを取っている時に私から電話があった次第。
 携帯を無くしたはずの息子から携帯にかかってきているのだから母も混乱する。
 それと、声がまるで違うことに相当の違和感があったが、ともかく早口であせるようにまくし立ててくるので、メモだけとって私の携帯に確認の電話を取ろう...と考えていたらしい。

 以前までの母だったら瞬時に判断して息子ではないと思った時点でからかいまくって電話を叩っ切っていたのだが、昨年の脳梗塞以来...覇気もないしそこまでの元気もない。
 自分の判断や考えに自信が持てない(あやふや)と言っていたので、そこもあってつけ込まれていたものと思われる。
 以前の母ならば、メモすら取らなかったろうに...ちょっと悲しかった。

 そもそも私は鞄の中に財布を入れない(スーツのズボンのポケットにいれている)し、携帯を無くしたところで別の携帯を持ち歩いている(常時スマホ2台持ち)。
 その上、リアルにあった人は知っているが成人男性にしては「やや高いトーン」で特徴のあるイントネーションで話す人なので、親しい人ならば「まず間違えない」声としゃべり方をしている。
 母もそれがあったので「おかしい」と思ったようだった。
 そして何よりも、金を借りるのであれば、振込などの手段は絶対に用いず、「自分で取りに行く」のをずっと貫いている。
 だから母は私の口座も知らないし、今までも振り込もうか?と言われても断固拒否してきた。一度でも振込の手順を踏めば、そこが隙になるし、何より「金を借りる」側が頭を下げに行かなくて(例え家族といえど)どうする」と思っているのが大きい。
 ちょうど週末に少しお金を貸して欲しいという話をこの数日前に電話していたため、余計混乱したらしい。

 何にしろ何事もなくてよかったと思う。
 まぁその直後に風邪引いて高熱出したりしていたが、週末には無事に回復してくれてほっとしたりもした。70代も中盤になるとだいぶガタがきているようだ。
 今回のことでわかったのは、オレオレ詐欺の手口と、母の致命ミス。この2つである。

 母の致命ミスはツイートにも書いたが、「私の名前を出して確認してしまった」ことである。
 これはオレオレ詐欺の電話に対してもやっていたようで「あなたXXXXかい?」なんて聞いてしまったら息子の名前はバレバレである。当然「そうだよ」と答えるに決まっている。
(以前はこれを利用して別の友達の名前などを出し、ひっかけて遊ぶぐらいの余力のある母だったのだが...)
 わりと親の世代はやってしまうミスで、相手に名前を聞く時に名前自体を言ってしまう癖のようなものがある。
 もし高齢の親を持っているなら、これはやらないように言い聞かせておいた方がいいだろう。

 そして、手口の方であるが、これはもうなんていうか「悪のナレッジの集合による対応マニュアルの整備が尋常なものではない」ということだろうか。
 母の対応に対してどのように言えばいいか、どのように応対すればいいかが素早く対応出来るようになっていた。
 まず、焦らせるような口調。トーン。そして内容。
 金を持ってこいとか振り込めではなく、ともかく「外に出す」ことを目的としている。出して接触してしまえば、後は銀行の窓口などに行っても銀行員には「仲の良い親子がお金を下ろしにきただけ」なのである。
 ATMなど使わせない。一緒に行動して下ろさせる。これを目的としていたようだ。
 足は付きやすいが、そもそもそんな役目を担っているのは「息子の友人」を名乗って来ている「出し子」であり、以前某所で確認した限りは成功報酬数万円で雇われたそこらの小僧に過ぎない。足がつかないよう接触はネット越しなので、使い捨ての小僧ならそんな足の付きやすい方法でもいいのだろう。
 また、途中で息子本人から連絡があった場面(今回の私がそうだ)でも、「お袋それは拾った怪しいやつだ、すぐ携帯を切って警察に通報してくれ」ぐらいのことを言ってくるようだ。
 今回はそれでもしつこくかけたことと、私の特徴ある対応と声(もしもしお袋か?馬鹿息子のXXXXだけどなど、わりと愉快な電話を日常的にしているし、必ず名前を名乗るようにしている)で、本物はこっちだとすぐにわかってもらえたのが大きい。
そうでなければ、本物の息子の電話の方を切ってしまって、以後でなくなることすらあるだろう。

 また、昨年の母の病気以来まめに電話を(最低でも一週間に一回は電話を入れる)ようにしていたため、声が確実に頭に入っていた。これも大きかったと思う。
 それと母が機械音痴でATMなどによる振込がまったく出来ないことも功を奏した。
 下手にスマホで振込など出来るスキルがあると、その場で振り込まれて話が終わってしまっていたかもしれない。
(よりスキルがあればマイパターン登録などで息子の口座が登録されていたりするので、むしろ安全ではあるのだが。

 そして、あいつらが狙ってくるのはこちらが仕事中で親からの問い合わせを受けづらい時間帯であることもわかった。
 例えば会議やミーティング中に家族から電話があった場合。どうするだろうか。
 すぐに受け答えする人は少ないと思う。会議が終わってからかけ直すなりするだろう。
 そうした時間帯を熟知し、かけているようである。
 まさに、悪のナレッジから生み出される嫌らしい知恵のひとつだ。
 成功率の高い時間帯というのを持っているようで、以前からかかってくる時間は午前中、それも10:15分など半端な時間だと母が言っていた。狙われる時間には傾向があるらしい。

 まさかに嫌な予感に襲われて息子が親に電話をする。それが詐欺の電話の最中なんてことは普通ない。
 ないが、今回はそうなった。
 危ないところだったなと思う。
 土曜日に母の見舞いも兼ねて情けない約束通り金を借りに言ったのだが、その時も母に言った言葉がある。

「そもそも脳梗塞の後遺症で足が不自由な母親を呼び出す息子がいるものか。俺がお袋を呼び出すとしたら、たぶんそれは病院で入院中だし、友人知人から電話があって来てくれというなら、理由はふたつ。死んでるか重傷で連絡が取れない時だけだ。今後も必ず用事がある時は自分から顔を出す。電話では必ず名乗る。だからああした電話には引っかからないようにしてくれ」

 これである。
 長時間電話をして離席したため職場の上司に詫びをいれるハメにもなったが、母の残りの人生のための金を変なやつらに取られずに済んでよかったと思う。
 この手の老人相手の詐欺は相手の人生を確実に粉砕する(よほどの余力が無い限り、数年で詰むことが多い)犯罪であり、許してはいけないと思う。
 個人的には過激かもしれないが、罰は死刑以外いらないとすら思っている。でなきゃ人権剥奪の上で海にでも放り込んで欲しいぐらいである。
 高齢の親がいる家庭は多いと思うが、仕事中に確認の電話があった時。その一本の電話を仕事を優先して取らなかったがために。親の財産が悪党達に奪われることもあるのかもしれない。
 仕事は大事だが。昼間に家族が電話をしてくるというのは、やはりよほどのこと。
 今回母も確認の電話をしようとしていたというし、もしそこで私が電話に出なかったら。そう思うとぞっとする。
 たまたま...本当にたまたま自分の感覚に従うフリーダムな息子であったために、絶妙なタイミングで難を逃れたが...結構胆を冷やした次第。

 PS
 このちょっと前には食器用洗剤による食中毒事件などもあり、わりと「いらないイベントほど連続する人生っていったい」とか思っていたりもするのだが、それはまた別のブログ記事を後日起こします。