秋葉原で職質された時のかつての営業マンの話

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 twitterを眺めていたらやけに職質、職質という言葉が見かけられて。

 ああもうそんな季節なのかと。

 今回は、かつてコンピューター業界から離れて運送屋の営業をやっていた時代に起こった話を元にしたお話です。

 

 

 

 今から8年以上前のこと。

 当時私はとある運送屋さんで営業兼システム担当というよくわからない役職で働いていました。まぁやってることは今とそう変わらない気がしますが、物流輸送の見積もりとか精密機器搬送の手伝いとか結構楽しかった覚えがあります。

 

 で。

 そんな日々の中。

 朝から事務所移転があり。足りない段ボールやら道具やらを本社から現場に届け。午後は事務所移転の見積もりがあるものの時間に余裕がある。

 そこに社長から電話がありまして。

社長 「あー仕事中悪い。パソコンが調子悪いんだけど...」

 事情を聞いてみるとどうもLANケーブルが原因くさい。というか踏んづけてコード抜けてどっか欠けたとか言ってる時点でどうにもこうにも。

みやび「あーケーブルっぽいですねー。今護国寺にいますんで秋葉原よってケーブル買って行きましょうか。会社寄っても見積もりには間に合いますし」

社長「ああ、まぁ急がないんだけど...いや...悪いね」

 笑って電話を切って営業用の軽自動車を秋葉原へ。ちょうど個人的にもDVDメディアが欲しいタイミングだったのでついでに買ってやれと。まぁおおらかな会社だったのでそのぐらいの自由は利いたんですね。

 でまぁ、駐車場に車を滑り込ませて中央通り。九十九辺りでケーブル買おうかなぁ...と歩いていたら、すっ...と近づく怪しい2人組。見れば制服警官がやけにさわやかな笑みで近づいてきている。

 この日の私の格好はといえば、下はジーンズに上はチェック柄のシャツ。典型的な「おたくファッション」というやつですね。午前中は現場作業を手伝う関係上スーツという訳にもいきませんし、見積もりも現場での見積もりですからその格好の上に会社名入りの作業着の上着を着る予定でしたし。

 実際工場なんかで働く人はスーツの上に作業着とかザラですしね。社内にスーツ1セットが用意してあったのできちんとした格好もすぐに出来るようにはしてあったんですが。

 話を戻します。

警官1「ねぇ君、身分証明書とかあるかな」

みやび「はぁ。...何の用です?私がなんかしましたか?」

警官2「いやまぁいいじゃないか。ないのかね?」

 顔はにやついてますが妙に威圧的。

 ただ、ふと思ったんですがこんな警官秋葉原にいたかな?と。長年秋葉原をうろうろしていれば、警らの警察官の顔をこちらも覚えていたりするものです。マンセーな警察にはこんな警官いなかったような?

みやび「任意ですか?私は今急いでいますので」

警官1「逃げるのか?任意じゃなくなるぞ!」

 突然声の調子が大きくなり腕を捕まれます。

 この時点でそうとうこっちもカチンと来てまして。まぁまだまだ気分だけは若かったんでしょうけれど。

 身分証明書はあるにはあったんですが出すのを拒否。

 とりあえず手にしたバッグを見せるのには同意しました。

 するとまぁ...現場仕事もする営業ですのでいろいろと道具をもっている訳です。沸き立つ警官2人。カッターナイフやクラフトテープに養生テープ。ドライバーやらなんやら。

警官2「なんでこんな凶器を持ってうろうろしてるんだ。ちょっと本署に来てもらおうか!」

 もうこの時点で相当冷めた目線で警官を見てましたし従う気もサラサラなく。どうしようかな...むしろ強制で暴力的に引っ張っててくれないかな...なんて思ってたぐらいで。

 実はこの時点でポケットではボールペン型レコーダーのスイッチがONになってまして。職業柄「言った言わない」でもめることが多かったので当時常に携帯してたんですね。この時点で警察手帳も見せない2人を私は半分偽警官かコスプレじゃないのか?と思っていたぐらいですから。

みやび「とりあえず警察手帳を提示してください」

 せいぜい憎たらしくふてぶてしくそう言ってみました。近くにあるパトカーをさっと確認。○○士警察かな...とだいたい当たりをつけていたり。

 警官がむっとした顔で出したものを確認。名前と階級もその時点で脳内にインプット。

みやび「すいませんもう一方もお願いします。偽物じゃないんですか?あなた?」

 もうノリノリでした。まぁなんでこんなにノリノリだったかというと後で社長との会話が出てくるところでわかると思います。

 2人目の方の方も確認。ほむほむ。これも脳内に深く刻み込みます。

みやび「これのどこが凶器なんですか?必要なものじゃないですか」

警官1「ナイフが必要ってどういうことなんだい?」

 急に猫なで声。あー典型的な根暗おたくに対する態度だなーと思いつつ。

 仕事に必要だと説いた訳ですが、信用してくれませんで。仕事なんてしてないだろうとかまぁ勝手な決めつけとストーリーでっちあげていろいろ言ってくる。この会話もすべて録音中。

みやび「わかりました。では会社に電話させてください」

 手にした携帯から会社に電話。というか社長の携帯に電話。

社長 「ほいよー。ケーブル買ってるの?」

みやび「そのつもりだったんですが...あ、社長。長さって5mぐらいでしたっけそのケーブル」

社長 「そうじゃないかな?」

みやび「そうですか。それは買って行きます。ところで困ったことになりまして」

社長「どうした? 駐禁切られた?罰金は自腹だって言ったろう。駐車場にいれないから...」

みやび「いえ。警察がらみではあるんですが。実は今職質されてまして」

社長「なにお前職質なんてされてんの?馬鹿だなぁ」

みやび「はぁ。んでXXXX巡査って人が言うんですよ。こんなものは仕事に使うものじゃないと。レベルゲージまで入ってるバッグ見てなんでこんなもの持ってるんだって」

社長 「あっそう。そんなこと言ってるんだ」

みやび「というわけで本署に来いって言われてます。午後の見積もり行けそうもないんですが」

社長 「その口ぶりだと相当怒ってるねみやびちゃんも。まぁやるなら徹底的にね。どこの所轄?」

みやび「○○士警察署のXXXX巡査と○○○○巡査長さんです。メモれますか?漢字で書くと...」

 このやりとりで警察官の顔色が変わりました。まぁ、社長の声も大きいんでこっちの携帯から声まる聞こえ状態でしたから二人にもばっちり伝わったのでしょう。

 電話中にもかかわらず「もういいぞ行っていい」とか言い出しまして。

みやび「行っていいとはどういうことですか!」

 通りに響くほどの大声で叫んでみました。平日の秋葉といえど人通りが多いわけで。場所は中央通り...当時絶好調で肌色のポスター貼りまくりのメッセ○ンオー近くですから注目集まる集まる。

社長 「部長が替わって見積もり行ってくれるってさ。お前はそのまま気の済むまでやってていいぞ。なめきってんなぁ。運送屋とか引っ越し屋とかなめてるんだろうなぁ」

みやび「我々の仕事にはこうした道具が必要ないと言われました。録音もしてあります。最悪弁護士使っていいですか」

社長 「おー、まぁ自腹ならなー。いや警察から金もぎとれるんだったら経費でもいいよー」

みやび「それだとたぶん自腹ですね。あとでまたかけます」

 当日の勤め先の社長はまぁなんというか...面白い人でして。こうしたことで会社にダメージがないならむしろ煽ってくるぐらい。

警官1「録音なんてしてたのか!すぐに切りなさい」

警官2「きみ、もう行っていいから」

みやび「いえ、本署まで行きますよ。来いと行ったじゃないですか。任意なんでしょう?任意で同行します。あと、車が駐車場にありますので置き引きにあったり中のものを取られたら請求出来ますかね」

 ふてぶてしいというか。まぁむかっ腹がたちまくりだったというのもあるんですけれど。

 そこでまぁ数分あーでもないこーでもないとやってたら今度は倉庫の番人こと会社で一番の長老格から電話。

みやび「もしもし」

長老 「なんだお前、警官ともめてるってよ?どこよ」

みやび「はい。○○士です」

長老 「なんだそんなことばっかりやってんだなあそこはよ。あそこはお前キャリアが腰掛けに署長やっとこだから小遣い稼ぎばーかりやってるんで有名なんだよ。そこで点数稼いで上行こうってやつしかこねーってな。有名だ」

みやび「はぁ」

会長 「おーどうしたよみやびちゃん」

みやび「会長!?」

 ここで突然電話の相手が会社の会長に代わりまして。こっちがびっくり。

みやび「あ、あれ?なんで会長が」

会長 「息子に聞いたらなんか警察と遊んでるって話だし、目の前通ったらなんかそんな電話しとるからさ。なんだ今晩は留置場泊まりか!」

 この会長もまた声が大きい方で。創業者だけあって貫禄たっぷりのドスが効いた実にいい声なんですが...でかい。ともかくボリュームが(苦笑)当然まる聞こえ。

みやび「留置場かはわかりませんが。われわれの商売を馬鹿にされましたんでちょっと引けません」

会長 「そうか。じゃあ夜差し入れもってってやるよ。いやー、一度やってみたかったんだよ。お前はほんと面白いな。すぐそうして面白いことに巻き込まれてる。こんな機会はめったにないから最後まで気の済むようにしなよ」

 その後の会長の言動がまたすごく。某団体でながーーーく活動されている方なので、公○党の議員さん通じて抗議しようとか言い出すにいたり。なんでそこまで話を大きくするかな...状態。

 警官2人は無言。というか会長の話が長すぎて電話切れなかっただけなんですが。

 電話が終わって振り向くとすごくばつが悪そうな二人から一応の謝罪が。でもまだなんか偉そうで。

「君の態度も悪いんだよ?」

 そんな台詞がくるにいたりこっちもさらにカチンときてしまい。

みやび「XXXX巡査がおっしゃったではないですか。こんなものを使う仕事になんか君はついてないだろうと。違いますか? ○○○○巡査長はこうおっしゃられるわけですよね。私の態度が悪かったから威圧的に任意と見せかけた強制的な職務質問をしようとしたと」

警官1「いや、そんなことは言ってないよ、我々はあくまで任意で...」

みやび「今までの会話は録音してあります」

 もうここまでやれば十分で。謝っていただけるのでしたら...とその場を離れることに。見積もり予定も飛んでしまったので、当初の予定とは変わって結局ソフマップでLANケーブルだけ買って会社に帰るハメに。

 

 会社に戻ると会長にものすごーく残念そうにされました。根性ないなぁ...なんで留置場いかないかなーとか言われ。どんだけ差し入れしたかったんですか!と突っ込んだりしてました。

 録音した音声等はそのまま会社に提出しました。なんか夜に聞いて社長が爆笑していたようですが、それは余談。

 秋葉原での職務質問自体は別段否定しません。

 あんな事件もあったぐらいです。凶器を持ち歩いてないか調べるのも今はやむなしでしょう。

 ですが、職質する対象の選択がどうも偏っている気がしてなりません。おとなしくて反抗しそうにない対象ばかりを狙っているような。そう、いじめっ子がいじめられっ子を探すような視線で...

 まぁそうした人が自衛のためと称してカッターなどを保持している確率は案外たかかったりしますのでそれはそれで間違ってないといえなくもないんですが、そればっかりじゃだめだろうと。いかにもヤンキー然とした人なんかを職質してるのは秋葉原だと滅多に見ませんしねそういえば。

 

 私はこの一件以来一切この警察署を信用していません。職質されても(スーツのことが多いのでされることは少ないですが)○○橋警察の方なら素直に応対しますが、この警察署の方でしたら一切応じない姿勢を取っています。

 応対ひとつで全然違うもので。たとえば池袋で先日「がっしりしたスーツの男性」をターゲットにしてると思われる職質に引っかかったわけですが、実に丁寧な対応で。

 まず最初に声をかけ、こういう体格の人に今職務質問をしています、数分ですので応じていただけませんか?と声をかける。その上で身分証明書を見せてくれる。最初にその応対であればこっちも「ああそうですかわかりました。大変ですね」となるわけで。

 ちょっとした雑談などしながらささっと持ち物を見てもらい。さっと解放される。

 今すべての職質がそうなのかはわかりませんが、少なくとも昔...秋葉原でされた職質はエサを出された獣が食らいついてくるような...それでいて威圧感のある非常に不快なものでした。

 今でも変わっていないのか。今度秋葉原に行くときは典型的な格好に背中からビームサーベルを生やして(ポスターですね(笑))行ってみようかな?なんて思うのです。これもまたコスプレなのかもしれませんが。

 今の勤め先では絶対ありえない...面白い経営者達がそろってるからこそ出来た反抗でしたので他の方は真似されませんように。素直に応じてあげてください。警察官もお仕事でやってるわけですから。

 特定の季節に特定のターゲットを締め上げて実績作りをしている訳では決してないと思いたいので。

 

※実際にはもっと長い時間あーだこーだともめてます。さすがに古い話なんで細かいところは忘れてしまいました(^^;

※それにさすがにまんまだと細かいところで生々しい話になってしまうのである程度カットしたりはしょったりしています。

※たぶん今はこんな職質はないと思うんですが、どうなんでしょうか。最近は秋葉で職質もされなくなってしまったので。おっさんになっちゃったからですかね...