流転の時(1) 砕け散る持論...不景気には勝てないのか

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 システム開発に携わるものとして、私がもってる持論に「開発は大事だが、むしろその後の導入支援と運用こそ重要」というものがあります。どんなにいいシステムを作っても、使ってもらえなければ意味がないし、現場でちゃんと使ってもらうためには「さぁ今日からこれでやるぞ」では無理だからです。

 

 特に既存のシステムのリニューアル等を行う場合には顕著で「今まで出来てたことが出来ない」「(例外事項に対して)どうしたらいいのかわからない」といった不満が噴出し、結局のところ「今までの方がよかった」...となりがちです。10中9の割合でそうなっている現場ばかり見て来た身としては、やはりその部分こそが重要なのだと思うようになりました。

 そのシステムは誰のために、何のために作られるのか。そして、なぜ作る(リニューアル含む)のか。ここをしっかりと自分の意見として持ち、「だからそのシステムを使うのだ」という明確な意志を経営陣に持ってもらい...業務に携わる人達にきちんと説明し、理解してもらう。そうしてようやく導入にこぎ着けるのです。もちろん、完全なシステムがいきなり出来るわけがないので、既存システムとの平行稼働等を行う必要があるのですが、その期間をどれだけ短縮出来るかは、その間に操作や機能を理解してもらいつつ、システムのデバッグやブラッシュアップを迅速にすることにかかってきます。

 そして、新システムがきちんと業務の流れになり「日常の風景に溶け込む」ことで始めて業務システムは完成するのだと思います。業務内容を理解しないまま作られたシステムには出来ない話ではありますが、設計時からお客様の視点で、立場で...ちゃんと作っていれば、概ね上記のやり方でシステムはランディング出来ます(むろん例外はありますが...)。

 ただ、この数年...この部分がおろそかになりがちです。「出来たからいい」そう言ってチームを解散し、数人残した人間だけで巨大な会社のシステムを運用状態にもっていこうとしたり...

 あるいは、開発時に携わっている企業側の担当者が実際の業務をよく知らない人で構成されていて、システム自体が機能不全なものになってしまう...そんな現状を嫌っていうほど見て来ました。

 この数年一緒に組んで業務システム開発をしてくれている会社の社長の影響もあり、先ほどの意見や考えをさらに深めてもてるようになったのですが、その考えをなかなか経営者に理解してもらうことは出来ません。まして、これが絶対の正解だと言い切るつもりもありません。あくまで私の中での基準であり、考えですから。

 この不景気で経営者は言います...「金がない」「余裕がない」。「だから仕方ない」とつながるんですが、本当にそうでしょうか。

 システムに限らないのですが、あきらめからは何もうまれません。

 そして、自社向けにカスタマイズされた専用システムを作るというのはどういうことか。

 先日も書きましたが、汎用パッケージをうまく使う方法もあるのです。

 初期導入費用こそやや高くつきますが、その後の導入支援も得られ、業務改善することで効率が上がるので既存業種(ここでは運輸業や倉庫業など今まで長きにわたって存在してきた業種を指します)の会社であればまずそれなりに効果が得られます。ある程度の機能を持った汎用パッケージを導入し、業務自体を改革してそのシステムに合わせてしまった方が実はコスト的には安いのです。興味があるのでしたら商社に相談すれば、きっちりとコーディネートしてくれます。

 また、グループウェアなどアウトソーシング出来るものは既存のASPなどを活用することで、ぐっとコストを押さえられます。あちこちのセミナーに参加すれば、その手段やソフトはいくらでも売り込みに来ている物です。

 専用システムを開発するということはどういうことなのか。目的はなんなのか。そのシステムで何を得たいのか。

 システムありきではなく、仕事が先にあっての業務システムです。

 

 そして、コンピューターが関わらない部分も含めた業務フロー、ひいては会社の流れ自体を設計してこその業務システムなんだと思うのです。だからこそ、きちんと稼働させるためには導入と運用が重要だと思うのですが...

 経営者達には結局わかってもらえなかったようです。

 「システムが完成したから言うけど...お前を雇い続けるのはいまのうちの会社には辛い」

 そんな言葉を先月聞かされました。

 

 つまりリストラです。

 

 不景気が私の肩をぐっと押し込んで、這いつくばらせようとしているようです。

 確かにこの不景気。システムにかける予算はそれほどないのかもしれません。作っている時は好景気で、今は不景気。経営者としては仕方ない判断かもしれません。このままどう運用させるか。残った社員に迷惑がかからないように、今準備しています。手厚いサポートは無理でも、なんとか運用出来るよう最低限のことだけでも...

 リストラというなら、黙って従いましょう。経営者視点に立って考えることも大事...自分が経営者なら確かにその選択も視野にいれます。私なら選ばない選択肢。けれど今の雇用主はそれを選択しました。逆らってもいいのですが、そうはしませんでした。恩もあるし義理もある。大変かわいがってくれた人なのですから。辛そうな顔をさせるのも忍びない。

 知り合いや友達はピンチだと言いました。私も確かにピンチだとは思います。生活の基盤が音を立てて崩れようとしているのですから。

 ですが「ふざけるな。これぞまさにチャンスだ。チャンスにするんだ」という想いも強いのです。つぶれてたまるか。なんとかしないと。

 持論は砕け散りました。足は震え、銀行残高もすっからかん。むしろカードの支払いを今後どうするんだ。現実的にはまさにそんな感じ。...ですが、ですからこそ、だからこそ。

 今まで自分の仕事に自信があれば。ちゃんと人に評価される仕事をし、アピール出来ていれば。

 絶対にこれはチャンスのはずなのです。後は動くのみ。

 続きます。

 ※2/25追記

 誤字を修正しました。