秋葉原の店員百景(2)...いろいろな店員、いろいろな客

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 先日はちょっと毛色の違う話として、私見全開の記事を書いたわけですが...

 店名をぼかして書いたところ「うちの店ですか?」と現職の店員さんからメールをいただく事態になってしまったので、今回は具体的に店名を書いてしまいます。

 かなり過去の話ですし、悪い話でもないですし。

 昔見た一風変わったお客さんと、それに(困難に立ち向かいながら)対応していた店員さん達を記憶にある限り書いてみました。
 前回と違って、それほど不快になることはないと思いますが、やはり文句を言われても困りますので、読む方はそれをご了承の上で読んでいただけると。やっぱりちょっと毒入りなので。

 

ご了承いただけた方だけ続きをどうぞ


 

 

 まずは看板の色が今の色でなかった頃のクレバリー2号店での話。

 ある平日。ちょうど仕事が休みでぶらぶらと秋葉原に出ていた私は、ちょっと面白い光景に出くわしました。
 どうやらノート用のメモリーを買いに来たらしいお客様なのですが、どうもPCの型番もわからないらしく店員さんも困惑気味。
「せめて型番がわからないと...」
『ダイナブックなんだけど...このぐらいの!』
「ああ、A4なんですね。うーん、裏返すとこの辺り(指で空間にノートPCっぽいものを描きながら)に型番とかいろいろ書いてあるんですよ。どれかわからなかったら仕方ないので、全部メモってきていただけると。写真でもいいですから」

 とにっこり。

 お客様も「ああ、じゃあすぐに帰って調べて来ますね!」とばたたたたたたたっといい勢いで走って行きました。

 確かこれが昼過ぎ。私は特売ものを探しつつ秋葉原を徘徊し、キッチンジローで3点盛り(当時は2点盛りではなかった)をがっつりと食し、再びいろいろと探しまわることにして...そうこうしているうちに夕方になり、ああそうだ頼まれていたトラックボールを買いに行かなきゃ...とクレバリー2号店に立ち寄ったら...カウンターには昼頃来ていたあのお客様。

 満面の笑みを浮かべて「どやっ!」といいだけに紙袋から出したのは...ダイナブック。


 どうやらメモするのが面倒だったので現物持って来ちゃったようで(^^;

『ああ、これならばっちりわかりますよ...今メーカーサイト(たぶんグリーンハウスのホームページ。当時対応表がきっちりしてたのはあそこだけだったので)で見ましたけど、これと...これが使えますよ(^^)』
「おお、そうか。で、どっちがいいんだ?」
『こちらの方が容量が大きいですが...』
「んじゃそっちください。つけてくんない?」
『ああ...すいません、取り付けになるとちょっと受けかねるんですよ(別料金とは言ってなかったので、当時はそういうことはしてなかったのかも)...ほんと、すいません」


(しょぼーんとした顔で)
「そ、そうかぁ...そうだよなぁ。こんな安いんだもんなぁ。さっきソフ○ップ言ったら、当店オリジナルがどうたら言われてえらい高くて...やっぱり、最初に親切してくれたこっちかなぁって」※1
『そうでしたか...まぁ、それほど難しい作業ではないので、ご説明だけします。あとはご自分でやってみていただけますか?』
 と店員さんはダイナブックの裏蓋の開け方を教えてあげて、お客様も熱心にそれを聞いて...納得して帰宅されました。...少なくともその時はそう見えたんですが。
 なんとなく見てて微笑ましかったので、なんか満足しちゃってその場を後にして、駅前まで行ってから「あ、やばいトラックボール買ってない」と気づきまして(^^;なんとなくゆったりと店に戻ると...なぜかさっきのお客様が。


「途中でドライバー買って、自分でやってみたよ!ありがとう!」

 ...なんだかとても満足そうなキラキラした笑みに(中年の方だったと思うのですが)、釣られてほっこり。
 店員さんは苦笑い。まぁ、そうですよね(^^; またしても「どやっ」という顔で誇らしげ。バッテリー動作でメモリが増えてるのを店員さんも確認し、「よかったですね」とにっこり。


 なんか見てて気持ちいいしおもしろかったので私は大変よい気分でトラックボールを買って帰りました。...欲しい漫画買い忘れてるのに気づいたのは、帰宅してからですけれど(苦笑)

 現物もってきちゃうのもなんですが、本当にわからないならとても有効な手段です。デスクトップだとそうは行きませんが...
 わからない人には「DDRとDDR2どっちです?」と言われても「知らんがな」となりますからねぇ...今だとDDR3も混じりますが。

 店員さんも、ターゲットのPC(特にメーカー製)の型番がわからないとアドバイスしようがないですしね。

 今時なら、ショップによってはメモリを購入して、正規の料金を払えば増設もしてくれますので、自信がない人にはいいでしょう。

 慣れてる人には「こんな作業に金払うなんて!」と言われますが、慣れてない人には「パソコンの蓋を開けるだけでも怖い」わけで、その辺りは対価をどう思うかなんですけれどね。


 次は、いにしえのツクモ電機本店2の話。
 さっきのクレバリーの話からさらにさかのぼって本店2が出来た頃に戻るんですが...

 昔から別のショップで馴染みだった店員さんが、転職してツクモに入社されまして。ちょうどその時本店2にいたんですね。で、それを聞きつけてなんか買ってあげよう!とばかりに店に行ったんです。
 中に入ると、まさしくあれは知ってる店員さん。話しかけると、結構喜んでくれて、冗談などいいつつ商品を教えてもらいます。
 さて、それじゃなんか買おうかな...という段になって、ふとTVでやってるCMの話になりまして。


「あの...私、パソコン買うの初めてなんですけど...」

 というフレーズで始まるCMを当時やってたんですね。で、店員さんが

「私、パソコン売るの初めてなんです」

と返して、「ちゃんとパソコンしたい人の...つーくーもー♪」と終わるCM。うろ覚えですけど、そんなCM。

 で、私も悪のりしまして。

「あの~パソコン買うの初めてなんですけど...なんか売ってください」

 とちょっとアレンジして言ったところ。店員から帰ってきた言葉は。

『てめえに売るパソコンはねぇ。帰んな』

 一瞬にして店内が静かに...しんっとなりまして。それでも私達は...

「そんなこと言わないで、売ってくださいよぉぉ」
『...仕方ないな、とっておきのを売ってやるよ。特別だぜ?』

 なんて会話をしてまして。それを聞いた店内の空気が一気に「ほぉぉぉぉ」と。

 何やってるんでしょうね、私もその人も(^^;

 後で聞いた話によると、別の店員さんに結構きつく怒られたそうですが、逆に他のお客さんに「いつもああなんですか?」なんて話しかけられて、いやまさか...という会話から引き込んで、その日はなんだかんだで結構売り上げたよーなんて笑ってました。


 今だと絶対まずい話なんですが、まぁ、当時のことですし。時効ってことで。見た人はびっくりしたでしょうけれど。私もかなり本気で涙目作ってみましたし(笑)


 そして最後に...今は無き、コムサテライト1号店での話。
 一番時代の古い話になるんですが。
「すいません、自作パーツが欲しいんですけど」

『うちは自作パーツしかないよ? 何しに来たの? 買わないなら帰りなよ』

 今だと間違いなく喧嘩ですよね、これ(笑)
 私が初めてT2P4とか買いに行ってた頃の話です。


 今では絶対聞けないようで...実際今の秋葉原にもまばらにこんなこと言う店員さんがいたりするから不思議不思議。

 ヨドバシカメラも出来て、いろんなお客さんが雑多にくるようになったところで、昔の感覚を引きずってる中堅タイプの古い店員さんにたまに見られる言動だったりします。
 まぁ、オチっちゃオチってことで。


 客層が大きく変わり続ける秋葉原。かつては青果市場があり(私が子供の頃にはまだその片鱗があった)、電気街が出来、都営駐車場がなくなってUDXビルなどが立ち並び...それでも変わらないもの。

 

 売る側の元気な声とサービス精神。

 

 買う側として、この文化は無くなって欲しくないな...と思います。大変気持ちがいいものですし、秋葉原ならではの風景のひとつだと思ってますし。強要するわけではないですが、自然とやっておられる店員さんも多いわけで。接客のプロは...かつてザ・コンことLAOXコンピューター館にいたんですけれど...あそこもなくなっちゃったんだよな。

 

 最後に...今は無き、「ぷらっとホーム」の店舗に...本田社長が店頭におられた時に、私が言われた言葉を書いて終わりにしたいと思います。


(linuxがいまいちわからないが、これからPCを購入して勉強しても大丈夫かな?と問いかけて)

「勉強しなきゃダメだよ。お金出して買うんだから、ちゃんと勉強しなきゃ。難しいとか、簡単とかじゃなくて。自分のために。そういう人のためなら、みんな教えてくれるよ。ここのお客さん達に聞いたら、すぐに教えてくれる。いろいろ言う前にやってみるといいよ」

 未だに心に刻んでます。やってみて、それから聞く。やる前にいろいろ言ったって触っておもしろければ覚えてしまうし。覚えるともっと楽しくなる。
 昔のパソコンって確かにそうだった気がします。いつからそう感じなくなったのか...あの時の社長の言葉を今も胸に。わからないことはまずやってみて、それから聞いて覚えていく。なんとか、まだがんばってます。

(たまたま店等に行った時、お客さんがあまりいない中、暇そうな店長が近寄ってきて)

「これ、本当におもしろいんだよ。触ってみるといいよ(画面にはおなじみペンギンマーク)」


 私がその後、Vineやubuntuに触ろうと思ったのは、あの時うれしそうにlinuxの説明をしてくれた社長のおかげだと思ってます。
 本当にありがとうございました。今でもまだ、あなたの顔を思い出せます。それほどお会いしたわけでもないのに、強烈な印象があって。
 お店には実はそれほど回数は行ってません。
 が、強烈な会話とやりとりは鮮烈な記憶として今でも頭に残っています。

 

 ぷらっとホーム自体はまだ存在しています。サーバーの分野できらりと光る会社だと思います。

 でも、もうあの社長の似顔絵も(店の看板に書いてあった)、ちょっとした時に見せるしかめっ面も...うれしそうに笑う顔も見られないかと思うと、寂しさを感じます。

 常連客との会話を離れて見てるだけでも楽しかった。

 そんな人はもう...なかなか現れないかもしれません。
 秋葉原で一番記憶に残る店員だったのは...あなただったと、私は思います。

 

 古い時代の話で恐縮なんですけれど。

 今の秋葉原にもおもしろい店員さんや、とても好感のもてる店員さんはたくさんいます(一部例外の人もいるにはいますが...)。

 値段だけを追いかけて買い物をしていると、そういった良さを見逃すもの。

「あーっ、向こうの方がちょっと安かったけど...まぁいいや、あの店員さんの話おもしろかったし」

 そんな風に思いながら、いろいろ勉強して買い物するのも、楽しいものだと思うので。

 今回は古い時代の秋葉原の店員さんと、それを彩ったちょっと変わったお客さんの話を書いてみました。

 

 

※1

 たぶん、愛のメモリーとか一時期ありましたが、独自保証のついてるメモリーのこと。保証が充実してる分高い。まぁ、普通にあることなんですが、あのお客さんには伝わらなかったようで。