INTELのGPUは言うほど貧弱だったろうか(1)...i810の衝撃



 内蔵GPUの話をすると、雑誌でもWEBでも「intelの内蔵GPUは貧弱で」という文章ばかりに出会うことになります。曰く「重いゲームをやらなければ」。この言葉もよく見るものです。

 ...本当に言うほど貧弱かな? とふと思います。

 パソコン=3Dゲームだとでもいうのならともかく、大多数の人は3Dのゲームなんてやってないのが日本の現状です。少なくとも私の周りでその手のゲームをやる人は最初から内蔵GPUなんてターゲットにしてませんし。(そもそもメーカー製PCすら買ってなかったりもしますが)

 INTELのGPUが貧弱か...それは何と比べてのことなのか。ちょっと考えちゃったりします。もちろん、ものすごく性能がいいか?と言われれば「いや、そんなことはない」と答えます。質問に対する答えとしては。

 私個人としては「ごくごく普通。ただしちょっと世代が進むと足りなくなる」のがINTELのGPUなんじゃないかな?と思ってたりします。

 そもそもINTELの内蔵GPUが登場した時、市場は大いに盛り上がり、大歓迎ムード一色になった記憶があります。確か世紀末になる前だったから1999年かな?

 その時登場したのはi810チップセット。wikiを見てもわかるとおり、当時のビデオカードと比べてもやや貧弱だった感はあったのですが、俗に言う「一般的な用途」においてはまったく遜色がなく、コストも大幅に下げられるとあってメーカーはこぞってこれを採用。
 まして、当時INTELが「次の主流メモリはこれだ!」とRDRAMを推進していたのですが、これがまた高コストなメモリで。出来れば安価にしたいメーカーとしてはSDRAMメモリが使えてそこそこの性能が出る810はまさに福音。低価格パソコンはもうこれで作るしかない!という状態に。

 内蔵GPUの一時代がここに訪れた...と言っては過言かもしれませんが、右を見ても左を見てもどのメーカーのデスクトップもセレロン(あるいはペンティアム3)+810という状態で、あっという間に「パソコンの標準的なGPUはこれ」という事実上のディファクトスタンダードになってしまった感がありました。自作市場は違いましたが、企業や一般家庭ではそんな感じだったかと。WindowsXPを搭載して99800円のパソコンが一世を風靡するのはこの数年後。内蔵GPUあってのことでした。(もちろんそれだけが理由ではないんですが、一因ではあるかと)

 自作ユーザーこそ当時から3Dlabだ!とかいやいやATiでしょう。とかVoodooなめんな!とかあったわけですが、大多数の人は「NECと富士通どっちがいい?」な人達だったわけで...メーカー製パソコンが一気に810に舵を切ってしまったため世の中は810ばかりという状態。
 貧弱とか言ってる場合ではなく、これが最低基準にしてスタンダードという状態でした。まして国内で「パソコンのゲーム」といえば今も昔も「肌色過多にして男の夢とロマンの詰まった大きな箱に入った高額なもの」でしたから、それらが遊べればそもそもOKといえたという。
 当時の日本でパソコンに求められていたのは「ワードやエクセルなんかがそこそこ動いて、肌色なゲームが動けばOK」だったというのが当時の私の見解です。まぁ、「出来れば動画が見たいかな」ぐらいはあったわけですが...
 実際、池袋に一瞬だけ登場し...きらめきながら消えていったパソコン用ゲームショップの店長と「この性能なら十分だな」「ああ」とやってた記憶がありますので、当時のその手のゲームの大多数(もちろん全部ではなく。DirectXをそれほどフル活用しない当時のゲームとして)が動いたのも事実。
 ゲームメーカーもとりあえず810で動かないと言われれば対応せざるを得ない状態(つまり初期は動かないゲームもあったんですけれど)だった記憶があります。古い話ですけれど。

 当時を振り返れば「i810の衝撃」は結構大きなものだったかな、と。
 もちろん私的な考えで結構な暴論なんですけれど、当時から私の考えは変わりません。810はパソコンの価格を下げるために一役買った(あとAC97も)かな、と。

 この後INTELがやらかしてRDRAMの普及に失敗して、急遽i815チップセットを投入することになります。
 2000年...そう、Windows2000の時代の幕開けなわけですが当時は810が切り開いた市場に新たにVIAが切り込んでいました。

 INTELのCPUはFSB133Mhzが最新鋭なのに、それに対応するのは820チップセット+RDRAM。

 安価なVIAのチップセット+INTELの最新CPU+PC133 SDRAMというのがひとつのトレンドになりかけていました。で、低価格機は相変わらず810+廉価CPU。メーカーもViAのチップセットを搭載して他社との差別化を考えます。


 これに対抗すべく急ごしらえで投入されたのが815。810をベースにPC133 SDRAMへ対応を図ったものと思えばわかりやすいかと。つまり最新CPUを安価に使えるプラットフォームとして810の系譜がさらに拡充されたわけです。(AGPも特徴的ですが、AGPなしの815も後に登場したため815の特徴とは言えないそうです)

 INTELが意固地になって政治的戦略から820を上位、815を下位としたため性能は前世代の440BXチップセットには及ばない部分もありましたが、それでも安価に最新CPUが使え、内蔵GPUを搭載し、PC133 SDRAMに対応している。
 これは結構魅力的だったわけで、一気に815はブレイク。810の系譜が再びメインへと躍り出ます。これはDDRRAMの時代まで続くことになります。
 815という中途半端な型番からわかる通り、急遽投入された815は810と共通の弱点をもっていました。それが搭載出来るメモリが512Mが最大だということ(440BXは1Gまでいけた記憶が)。デュアルCPU用には使えないこと。結構弱点だらけですが(笑)
 それでもPC133 SDRAMに対応しているのは大きかった。(そしてWindows2000だとメモリ512Mは十分に使える容量でした)

 で、長々とチップセットの歴史が書かれたわけですが、この間GPUとしてはほとんど進歩してません。コアクロックが上がったので、性能としては上がっていますが、GPUとしての進歩は停滞したまま。

 実際、Windows2000やWindows98(ME含む)で使う分には十分な性能を保持していたと思います。

 ちょっとした動画の再生や、WEB閲覧、オフィスソフトを使用する...今でも日常的なPCの使い方としてあげられるものですが、動画以外では特に不満は起きなかったかと。
 動画再生はCPUパワーもいりますし、まだまだ黎明期かな。動画再生にGPUが問題になるのはもう少し先の時代。

 810の系譜...ペンティアム4の登場と845Gの普及までこのGPUは主流であり続けました。

 ひるがえって...今の時代。

 PCに詳しい人に「最も普及してるGPUメーカーは?」と聞くと「ATi(AMD)かnvidiaかなぁ」と返ってくることがあります。確かにそう言いたくはなるんですが...

 このi810の時代から今まで、「最も普及している」のはおそらくINTELなんじゃないかな...と思います。そして良くも悪くもスタンダードといえるGPUを投入し続けている。

 では、なぜそんなINTELのCPUが「十分な性能をもってない」ように言われるようになったのか。何と比べて「貧弱」と言われるようになったのか。

 それは次の記事「INTELのGPUは言うほど貧弱だったろうか(2)...動画時代と3Dの普及」で書こうと思います。

 

2010/09/02 追記

 

 ※今回のシリーズは私見の塊ですので、不快になった方をおられましたらすいません。

 わかりやすくするためにいろいろ省いてますし、結構一方的な見方をしてるのは確かなので...