私もIT家業のはしくれですので様々なシステムに携わってきました。その中では実にたくさんの業者の方から新システムの提案や業務改善のためのツールの売り込みをかけられてきた経験があります。
ところがそうして持ち込まれる案件に共通していることがありまして...
それは「なんでもかんでもシステム内でやらせようとする」ということ。 もちろん売り込む側は「便利だ」と思ってその機能を組み込んでいるのですが、使う側は「なんでそんな面倒なことをしなきゃならんのだ」と思う使い勝手や機能だったりします。
どうしてそうなるのかというと...いろいろな理由があるんですが...
たとえば他社システムを考慮にいれていないのが一点。どうしたって自社ソフトだけを使って欲しい開発側の願望がネックになる場合もあります。
あるいはそのシステム内である程度の業務を完結させようとすると起こりがち。
または単純にターゲットとなる業務について知識がない人が作ったということも。え?と思うかもしれませんが仕様を切ったSE等ならともかく末端のプログラマーが業務のことについて熟知している...なんてことは結構少ないと私は思ってます。コード書く時は依頼された要件を満たしていればいいわけで。仕様に書かれていない部分はその人が「親切」で機能を追加してしまったり。ところがその親切があだになってることも。
私が今まで見てきた限りですが...原因の最たるものは「データは必ずシステム内に保存しなければならない」という思い込み。そして入力する側の技量を考えてない作り込み。この辺りにあるような気がします(^^;
使う側からしたら重要ではない数値や文字列でもともかく入力させようとする。DB同士のキーに設定しちゃったりなんかすると後で改修も効かない。(ユニークコードになるような数字だと思っているものが顧客からするといつも適当につけてる数字でした...なんてこともありますし。現場がシステム運用ルールを守っているとは限らなかったりもしますし)。
コンピューターやITに携わる人はどうも「それはコンピューターでやった方が便利だ」と思い込む傾向があります。しかし現場では帳票にメモ出来る欄があった方が使い勝手がよかったりするわけで。
そのギャップがシステムの評判を落とすことも多かったりします。
あるいはエクセルのデータに出力出来る機能を...と求められるとまずCSVで...となってしまうのも常。
慣れてる人ならいいですが使うのが素人集団だったりすればそもそもCSVってなんだよエクセルのファイルじゃないのかよ(エクセルがインストールされているとアイコンがエクセルのものになっているので拡張子を見えないようにしていると判別出来ない人もいます。実際にはアイコンの種類が若干違うので見た目で判別出来なくはないんですが...そもそもの概念をもっていなければ混乱の度合いはかなりひどいことに)なんてことにも。
そんなことで評判落とさなくてもいいのにもったいないなぁ...なんてこともありました。
使う側がそれなりに用語等を知っている前提になりがちなのはまぁわかるんですが...パートのおばちゃんとかが現場にはごろごろいるわけですから。マニュアルを読めと言われても難しいと思われたらそもそも読まれない(笑)
また...帳票についても変に作り込んでしまって顧客の要望に応える改修が大変だったり。
実際のところそうして作られたシステムは一部基幹機能だけ使われて帳票の部分等は使われてなかったりと「使われない機能」がどんどん増えてしまったりして顧客満足度は高くないのが実情です。
売り込まれる側もバカではないのでその辺りを見切る人材が育っていったりして面白いのですがそれはまぁ割愛。
使いやすいシステムとは?というと割と永遠の命題だったりするのですが(笑)
顧客が慣れているものに合わせられるシステムが割と喜ばれるな...というのが私の実感。
今は開発会社にいませんが...かつて私が業務システムを作っている時一番喜ばれたのはマイクロソフトOFFICEとの強力な連携機能でした。といってもなにかすごいライブラリや新機能があるわけでなく。
ただの差し込み印刷を活用した帳票システムだったりします(笑)
元となる文章をフォルダにいれておいて...その中に数字や文字が出力されて最終的には帳票になる。
ゆえに帳票のレイアウト変更や項目追加も結構たやすく。弱点といえばOFFICEのバージョン依存があるのですが...これは入れ替え時に対応プログラムを組めばいいだけのことで。長いつきあいが出来ていれば保守の予算と期間の範囲で作れたりします(^^;
あとは業務帳票と管理帳票を明確にわけて業務帳票...現場で使う帳票には徹底的に「メモや書き込みが出来るスペース等」を用意したりとか。現場で入力するものが少なくてもとりあえずデータエントリーが出来るようにしておくとか。そうした作りは非常に好評だったのを憶えています。
今導入する企業側に立ってみると...その辺りを考慮したシステムが売り込まれることは少なく。見た目は派手な...それでいて「そんなの使うんかいな」という機能がてんこもり。実際に導入テストをしてみると最初に膨大な入力作業が発生するため事務所の人間が使いずらかったり。
売り込まれるシステムには「実際の運用」が想定されていないものが多かったりしてなかなか進歩しないなぁ...と思うことも結構あります。作る側は表面的な業務の流れを見て作っているのですが実際の現場ではそうそう流れ通りに業務は進まない。業務とは生き物ですから毎日がイレギュラー処理の連続です。そんなものシステムでいちいち対応していたらきりがありません。
運用ルールの策定でとう切り抜けるか。そういった事例とQ&A集が添付している低機能システムを低価格で購入した方が業務改善が進んだ...なんてことはよくある話。
あくまでも私個人の実感としてですが。
分業化が進みパッケージ化が進み...そうこうしているうちに今度は作り手と売り手と使い手の意識のズレがどんどん大きくなっていったのではないかと。
最近商社がもってくる業務パッケージは自社パッケージ同士の強力な機能の連携をうたっていたりします。
ですが欲しいのはたったひとつのパッケージのちょっとした機能だけだったりするわけで。
こんなご時世ですから高いお金を出して導入にはなかなか踏み切れなかったりします。
現場は工夫して既存システムを使っています。考欄などを超絶テクニックで活用して古いシステムで乗り切っていたりしますからシステム側ではそれをどうくみ取っていくのか。あるいは通常業務で使っているOFFICEとどう連携させるのか。
その辺りに気を配って小さな機能のパッケージを作っていったら...なんて思うことも。
結局のところ使う側はそうした部分をいろいろ考慮して「専用システムを開発してもらおう」ということになりがちなので...体力があるところならともかくそうそう専用システムを開発しまくるご時世でもなく。
出来る業務なるべく市販パッケージですませたいのが経営側の本音でしょうし。
あくまでも私個人の経験からくる考えでしかありませんけれど(^^;
PCのパッケージも同じで。他社との差別化のために「それ使うんかいな」という機能がてんこもりで価格も高い。
それならちょっと不便でも安いパッケージでいいや...なんてことが売り場ではよく起こっていて。
そういうところに目をつけて商売をしているソースネクスト等の会社もありますから(いろいろいわれますが商売としてはとても正しいところに目をつけているなぁと思ってます。ソフトの機能に関しては千差万別過ぎてちょっと一言では言えませんが...)。
とりとめのない話になってしまいましたが、結局のところあらゆる会社でどんな業務ソフトよりも高い頻度で使われているシステムとかパッケージは...エクセルだっりしますので(笑)システムを作る時はそのあたりを考慮にいれたいものです。
ベンチャーなどではそうした思想を持っている人もいるようなので、私だけの独善的な考えでもないんだなぁ...と思ったりしたんですが...こんな意見もあるよということで。
※余談ですがこの話をゲーム会社に勤めてる友人にしたところ「うちのディレクターにみっちりそれ教えてやってくれ」と腕を捕まれてしまいました。ユーザーインターフェイスやゲーム内のシステムも作り手が「よかれ」と思う部分が裏目になることが多いようで...他社のソフトを研究もせずに独りよがりに仕様を決める人がディレクターでは確かに大変なんでしょうけれど。
自分でやれい!と突き放してしまいました(^^; ゲームへの応用なんて考えてもみなかったのでちょっとびっくり。まぁ余談ということで。